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    米コラムニスト

    映画『デトロイト』とマイケル・ブラウン(事件から3年を迎え)~「ハート・ロッカー」キャスリーン・ビグロウ監督最新作

    デトロイト暴動とマイケル・ブラウン(事件から3年を迎え)
    映画『デトロイト』~暴動の夜、密室のモーテルで何が起こったか
    ~「ハート・ロッカー」キャスリーン・ビグロウ監督最新作

    『デトロイト』トレイラー

     今から50年前の1967年7月23日。あからさまな黒人差別がまかり通っていた時代のミシガン州デトロイトで暴動が起こった。長年にわたって黒人側に積もりに積もったフラストレーションが警察の手際の悪い酒場捜査によって一気に爆発。暴動は5日間続き、死者43人、負傷者1,189人、逮捕者7,231人を出した。2,509軒の店舗が焼かれるか、略奪され、後日412棟のビルが取り壊された。経済損失は総額で4,000万~4,500万ドルと見積もられている。

     アメリカでは8月4日に公開された本作『デトロイト』は、アメリカで起こった数ある黒人暴動の中でも特に規模が大きく、犠牲者数も多かったデトロイト暴動を描いた作品だ。監督は『ハート・ロッカー』(2008)により女性初のアカデミー賞監督賞受賞者となったキャスリーン・ビグロウ。オサマ・ビン・ラディン掃討作戦を描いた次作『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)も大ヒットとしたビグロウの、満を持しての作品だ。

    ■ ■ ■

     冒頭、暴動がそもそもどのように始まったかがよく分かる描写となっている。警察の過ちが発火点となり、炎がたちまちに燃え広がってしまったのだ。(当時を知る黒人の中には、暴動以前の下地が描かれていないことを指摘する声もある)

     映画はしかし暴動全体ではなく、あるモーテルで実際に起こった密室劇を執拗に追う。暴動の最中、アルジー・モーテルに10代の黒人の若者数人と、若い白人女性2人が居合わせていた。暴動とはまったく関係なく、または暴動を避けてモーテルに避難した者たちだった。そこへ警官狙撃犯を追う警官が踏み込み、宿泊客たちを容疑者として精神的に、肉体的に執拗に拷問し、うち3人を殺害する。

     黒人の若者たちを追い詰める警官は、若い白人だ。極度の人種差別主義者であり、黒人を殺すことに罪悪感を持ち合わせていないことが見て取れる。また、白人女性が黒人男性と共にいたことを絶対的に許せず、女性にも憎しみをぶつける。しかし奴隷制時代の南部ではなく、公民権法成立から3年後の都市部の警官であり、黒人殺害は自身の立場を危うくすることを知っている。

     だが暴動の最中の密室という、上官の目も、市民の目も届かない状況に置かれるや、異常なまでの抑圧精神を発揮する。権力と、物理的な力(銃)を持った者が抗う術を持たない者たちをひたすらに蹂躙する様は背筋が凍るほどに恐ろしい。

    ■ ■ ■

     実は全く同じことが、現代も続いている。昔との違いは映像が残ることだ。街中の監視カメラ、居合わせた目撃者のスマホによる撮影、または警官自身が身につけている小型ボディカメラによる映像が公開され、凄惨な暴行・殺害シーンを私たちは見てしまう。警官たちは目撃、撮影されていると知りながら、過激な暴行を特に黒人に加えることが止められない。子供の頃から叩き込まれた差別意識、白人であることの優越性、警官であることの優越性、黒人への恐怖がないまぜになってのことだと思えるが、それでも到底説明はできないレベルの加虐だ。

     とはいえSNSや大手メディアによって公開される映像は市民にショックを与え、警官による暴行・殺人の密室性を破り、警察暴力を緩和すると期待された。だが、今のところ実行犯の警官を逮捕・有罪に持ち込むことは、ほとんどのケースでできずにいる。アメリカの司法制度が深刻な問題を抱えている証拠だ。

     3年前の今日、8月9日はミズーリ州ファーガソンで18歳の黒人青年マイケル・ブラウンが白人警官に射殺された日だ。マイケル追悼の自然発生的な集まりに対し、警察は当初から警察犬、果ては装甲車まで出動させ、「まるで1960年代ではないか!」と文字通り全米を驚かせた。警察の過剰反応に一定の黒人市民が過剰反応し、追悼集会は暴動となった。翌日から昼間は平和的な集会、夜は暴動のパターンを繰り返した。その中からSNSを駆使した新たな黒人運動、ブラック・ライブス・マターが誕生したのだった。

     つまり本作『デトロイト』は単に50年前の歴史を振り返る作品ではなく、アメリカの人種問題の膠着状態を知るための作品と言えるのである。

    マーティン・ルーサー・キングJr. 牧師
    「暴動は、耳を傾けてもらえない者たちの言葉である」
    A riot is the language of the unheard

    ■映画を楽しむためのトリヴィア

    モーテルに缶詰となった黒人の若者たちの中に、後に大ヒットを飛ばすR&Bグループ、ザ・ドラマティックスのメンバー、ラリー・リードがいた。

    本作でラリー・リードを演じたアルジー・スミスと、本物のラリー・リードのコラボレーション・ソング『Grow』が本作のサントラに収録されている。

    Algee Smith & Larry Reed – Grow (from DETROIT)

    夜間警備員としてモーテル近辺で働き、モーテル事件にかかわってしまう生真面目な黒人男性を演じるのは、『スターウォーズ/フォースの覚醒』のジョン・ボイエガ。

    黒人差別主義者の警官クラウスを演じるのは『ナルニア国物語/第3章: アスラン王と魔法の島』の子役、『レヴェナント: 蘇えりし者』のウィル・ポールター。ちなみにジョン・ボイエガもウィル・ポールターもイギリス人俳優。アメリカ英語のアクセントは完璧。

    モーテルに宿泊していたベトナム戦争退役兵を演じるのは、アンソニー・マッキー。

    本作の評価は全般的に高いが、一部の黒人批評家/聴視者からは非常に辛辣なコメントが出ている。いわく「リベラル白人の視点」。黒人男性と白人女性がフィーチャーされ、黒人女性が登場しないことも強く批判されている。一方、当時の実際の映像も挟まれ、史実を学ぶにはよい作品といえる。


    「ハーレム・ジャーナル」より転載
    http://nybct.jugem.jp/

    ハーレムウォーキングツアー

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