«
»

習近平政権で進む〝ハリウッドの爆買い″

 近年、再びハリウッドの〝赤化″が急ピッチで進んでいる。第二次世界大戦後のアメリカにおいて、ソ連から送り込まれたスパイや共産主義者を摘発すべく、FBI(米連邦捜査局)やマッカーシー上院議員が扇動する形で〝赤狩り″をしたことは記憶に新しいが、今日、起きているのは、「中国マネーによるハリウッド侵食」である。21世紀の〝赤化″を進める中心人物・企業は、中国の富豪1位、2位を争う不動産大手の大連万達集団(ワンダ・グループ)の王健林会長と中国電子商取引大手、阿里巴巴集団(アリババ・グループ)の馬雲(ジャック・マー)会長である。

 ワンダとアリババはいわば、中国のビジネス界において目下、東西の両横綱的な存在だが、資本主義社会の自由競争のなかで頭角を現した経営者ではない。権力者と癒着し〝巨大な財布″を手に世界を動きまわる代理人といえる。代理人は権力者が欲するものを〝爆買い″したり、世界の超大物とのビジネスを通じた関係構築や改善に動いたり、権力者とその一族の私財を国外に逃がしたり様々な役目がある。

 習近平国家主席の姉夫婦との関係が深いと報じられてきた王健林会長のワンダは、2012年、アメリカで2番目の規模を誇る映画館チェーンAMGエンターテインメントホールディングスを買収した。さらにワンダ傘下のシネマ企業は昨年1月、ジュラシックパークなどを制作した米大手制作会社レジェンダリーを35億ドルで買収。その調印式で、王会長は「中国は今後、グローバルな映画産業において、発言力を勝ち取っていく」などと挑発的な演説をした。

 この勢いは止まらず、昨年7月にはAMCを通じて、アメリカ4位のシネマチェーン、カーマイクを12億ドルで買収し、イギリスでは欧州最大シネマチェーンのオデオン&UCIを6億5000万ドルで買収した。

 さらなる大物もワンダの手に落ちた。テレビ番組製作会社ディック・クラーク・プロダクション(DCP)である。ゴールデングローブ授賞式やビルボード・ミュージック・アワード授賞式、大晦日恒例のライブ番組などを製作・主管するDCPが「10億ドルで買収」されることが、昨年10月、複数のメディアに危機感と共に報じられた。アメリカの映画関係者や音楽関係者にとって、最高峰の賞の演出、番組製作に関わってきた製作会社が中国のモノになったのだ……。

 そして、パラマウント・ピクチャーズの『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』『ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影〈シャドウズ〉』『スター・トレック』などの作品へはアリババ集団が出資している。

 スティーブン・スピルバーグ監督も、自らのプロダクションカンパニーであるアンブリン・パートナーズの株式の一部を、昨年10月、アリババに売却した。スピルバーグ監督といえば、スーダン南部のダルフールの虐殺事件で中国が果たした役割に抗議し、2008年8月開催の北京オリンピックの開・閉会式の海外芸術顧問の任務を辞退した映画界のレジェンドだ。その際、「現在進行している人権侵害の責任は、その大部分がスーダン政府にある。しかし、国際社会、特に中国は、この悲惨な状況を終わらせるためにもっと手を打つべきだ」「私の良心は、私がこのままこのビジネスを続けることを許さない」といった声明文を発表したことも報じられている。

 ところが近年のスピルバーグ監督は、中国マネーと人民への依存度を高めている。製作総指揮の大ヒットシリーズで、2014年に公開した、『トランスフォーマー/ロストエイジ』について、業界誌は「中国での興行収入はアメリカ本土を上回る300億円超を記録し、全世界の興行収入約1000億円の3分の1を中国で稼いだ計算」と報じている。

 中国での映画製作においては、脚本審査や映画完成後の最終試写など様々な検閲プロセスがある。それなのに、米中合作企画すら増えている。ハリウッド俳優もスポンサー営業を兼ねた中国詣でをすることで、さらなる発展や生き残りを賭けている。

 習政権の政策の1つに、「文化と芸術産業のコントロールと振興」がある。国内外の報道分野のみならず、文化芸術の中国優位化をめざし、とりわけ映画の影響力、洗脳力に注視してきた。その手っ取り早い方策が〝ハリウッドの爆買い″なのだ。ワンダやアリババなどはつまり、「白人社会が作ったルールを変える」「偉大なる中華民族を世界にプロパガンダする」など、現政権のミッションに沿ったビジネスを戦略的に進めているわけだ。

 こういったハリウッドの〝赤化″は、日本にとって「南京」「重慶」「慰安婦」「強制連行」「労働奴隷制」「偽満州国」などをキーワードに、史実を歪めた物語が世界中にまき散らされることにつながる。アメリカではすでに複数の政治家が「ハリウッドの異変」に懸念を表明し警鐘を鳴らしているが、CNNやニュヨークタイムズなどの左派メディアを「フェイクメディア」と呼び、対決姿勢を露わにするドナルド・トランプ大統領がこの流れにもメスを入れることを期待したい。

13

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。