ワシントン・タイムズ・ジャパン

「地位」は人を作るか

 読売新聞電子版(16日)は「大統領になれば誰でも目を覚ます」という見出しのオバマ大統領の発言を報じていた。

白鵬

「横綱の責任」と「孤独」を感じさせる大横綱・白鵬(ウィキぺディアから)

 オバマ米大統領は14日の記者会見の中で、次期大統領のドナルド・トランプ氏について、選挙中の過激な主張から現実路線へ軌道修正していくとの期待感を示し、「大統領になれば誰でも目を覚ます。現実とそぐわない立場や性質は変える必要があることにすぐに気づくだろう」とも述べたという。

 「大統領になっても目を覚まさない人はいた」なんて皮肉をここで言うつもりはない。オバマ大統領の発言内容は簡単にいうと「地位が人を作る」ということだろう。大相撲で横綱になった関取が次第に最高地位の横綱に相応しい風格と人格を醸し出す姿を「横綱の地位が彼を成長させた」といって評することがある。会社社長に就任した直後、「あの人物で会社は大丈夫か」といわれた人物が立派な社長になったケースは経済界ではよく聞く。「地位が人を作る」ということは確かだ。

 世界大国の米最高指導者に選出されたならば、その地位の責任は他と比較できない。会社社長や横綱の地位どころではない。オバマ大統領は先輩の責任もあってか、後輩の次期大統領トランプ氏に対して、「ドナルドよ、ホテルや大学のオーナーどころではない。世界の指導国家の米大統領の責任は計り知れないほど大きい」と警告し、「選挙中の暴言や失言も修正されるだろう」と述べ、少し皮肉を込めて「目を覚ますだろう」という表現となったわけだ。

 米大統領の場合、「地位の責任効果」だけではない。「情報量の効果」も大きい。次期大統領に選出された直後から、米情報機関が世界から集めた機密情報のブリーフィングを受ける。シリアのアサド大統領関連情報、ロシアや中国、北朝鮮に関する機密情報は大統領に就任しない限り、聞くことができないものだ。その大量の機密情報がトランプ氏の外交政策を変えさせたとしてもある意味で当然といわざるを得ない。

 与党関係者が入手する世界情報と野党政治家が知る外交情報とでは雲泥の差がある。その差が地位の責任と関連して「目を覚ます」効果をもたらすのだろう。情報量と責任が密接な関係を持っているわけだ。

 これまで実業界一筋で生きてきたトランプ氏の世界情勢に関する理解は日々、拡大するとみて間違いない。北大西洋条約機構(NATO)に対する評価、対ロシア政策で変化が既にみられる。それが最終的に伝統的な共和党の外交路線に落ち着くか、それとも“トランプ外交”と呼ばれるような新しい外交政策となって展開されるか、それを判断するまでにはもうしばらく時間が必要だろう。

 最後に、会社社長や横綱の地位に就いた人物が異口同音に言うのは、その「責任の大きさ」と共に「指導者の孤独」だ。米大統領は米軍最高司令官でもある。その命令一つで多くの生命が左右する。米大統領はホワイトハウスにある祈祷室で祈らざるを得なくなるというのだ。「トランプ氏がホワイトハウスの祈祷室に入った」という情報がワシントンから流れてきたら、「彼も変わった」と断言できるかもしれない。

(ウィーン在住)

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