ワシントン・タイムズ・ジャパン

駐米大使になったアフガン女性

米コラムニスト デービッド・イグナチウス

タリバン政権下で学校閉鎖
秘密の授業で勉強、留学

米コラムニスト デービッド・イグナチウス

米コラムニスト デービッド・イグナチウス

 米国は、感謝祭を迎え、お祭り気分だが、困難の中にいる人々のことにも思いをはせてみたい。アデラ・ラズという名のアフガニスタン人女性がいる。

 ラズ氏は、タリバンが1996年に最初にアフガンを支配した時、小学6年生だった。タリバンは、女性の教育を、イスラム的でないとして禁止、首都カブールのマクロヤンにあったラズ氏の学校を閉鎖した。その学期、ラズ氏は、学校の生物の宿題で骨格モデルを作っていたが、押し入れに隠した。

 学校は閉鎖されたが、勉強がしたいという若い女性はいた。数カ月後、そういった女性の親らが、自宅で秘密の授業を始めた。タリバンに疑われると、場所を移して続けられた。ラズ氏は、この臨時の教室を移動しながら、5年間学んだという。全身を覆うブルカの中に教科書を隠していたのだろう。

◇女性の教育を禁止

 2001年に米国によってタリバン政権が崩壊すると、ラズ氏は、通常の教室に戻り、優秀な成績を収めた。何年間もこっそりと英語を勉強していたため、卒業すると、米国で仕事に就いた。

 ラズ氏は、タリバン政権崩壊後、開かれた世界の中で活躍することを決意する。奨学金を得て、ボストンのシモンズ大学で学び、好成績を収めた。その後、タフツ大学フレッチャー法律外交大学院に進んだ。「とにかく勉強がしたかった」とラズ氏は振り返る。

 米国で活躍していたが、母国の役に立ちたいと考え、13年に帰国。カルザイ大統領の副報道官、ガニ大統領の補佐官、外務次官、国連大使を務め、駐米大使に着任した。

アデラ・ラズ氏(Wikipediaより)

アデラ・ラズ氏
(By AfghanembassyDC – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=107929679)

 タリバンは8月に権力を掌握した。ラズ氏がワシントンに着任してすぐのことだ。カブールでは、イスラム聖職者らが再び、世俗的な学校での女性の教育を禁止した。新体制の下で女性は、政府で働くことができず、テレビドラマに出演できず、頭、体を覆わなければ外出することもできない。

 感謝祭の直前、ラズ氏と話をした。まだ、名目上は大使の職に就いていたラズ氏は、同世代の女性らが、自由だった時代にそうしてきたように、その思いを語ってくれた。この20年間にアフガンが築き上げてきたことをタリバンが消し去ろうとしているが、「私には理解できない」と話した。タリバンは、ラズ氏の辞職を望んでいるかもしれないが、今も毎日大使館に通い、母国の苦難についてさまざまな人に話をしている。

 アフガンでの困難な20年間に米国は何を得たのかと考える人もいるだろうが、ラズ氏のように、タリバンの支配を逃れ、人生が変わったアフガン女性が無数にいることも考えてほしい。タリバンの支配下になった今、これらの女性に何が起きているのかも考えてみてほしい。

 ラズ氏は、アフガン国内にいる女性から毎日、悲痛なメッセージを幾つも受け取るという。私が訪問した日に受け取ったというメッセージについて話してくれた。「助けてください。息ができません」。できる限り助けようとしても、できることはあまりない。

 アフガンに夜が来た。国連は、金融機関が「混乱」し、「崩壊」の危機にあると警告した。銀行がなければ、食品を輸入するための資金を調達できない。国連の世界食糧計画(WFP)の報告によると、人口の半数以上の2300万人がこの冬、厳しい食糧不足に直面する。人口の多い11の都市のうち10都市で、飢餓に近い状況を迎えようとしている。

 金融・商業活動は、タリバンへの制裁で停滞している。タリバンが、包括的な政府を築くことを拒否し、女性の教育など、国際社会が求めている基本的人権を保障しなかったからだ。しかし、これらの懲罰的な措置の被害を受けるのは、このような人々であり、タリバンではない。

◇「腹立たしい」現状

 アフガンを訪問した赤十字国際委員会(ICRC)の運営責任者、ドミニク・スティルハート氏は22日、現状について「腹立たしい」と指摘、「経済制裁は、カブールの権力者らを罰することを意図したものだが、制裁によってアフガン全域で、生きるために必要な基本的な物資が届かなくなっている」と述べた。

 ラズ氏は、政策的助言には慎重だ。タリバンの宗教的な指導部には協力したくないと考えている。女性の権利を否定しているからだ。それは、20年前にラズ氏が生物の宿題を隠した子供の頃と変わらない。

 しかし、ラズ氏は、国際社会は食料を供給し、経済を立て直す道を見つけなければならないと言う。その通りだ。米国は、タリバンの手に渡ることなく、人道的支援をする方法を見つけなければならない。

 米国民は、感謝祭を迎え、アフガンについてさまざまな感情を持っていると思う。最も長く、恐らく最も苦しかった戦争から兵士らが帰国したことを喜び、一方では、女性の権利を尊重しないタリバンに権力が渡ったことに怒り、国民は厳しい冬をどのようにして乗り切るのかを心配していることだろう。私たちはアフガンを去ったが、この国とその痛みを忘れてはいけない。

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