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ブラジル コロナ感染者・死者が大幅減

 新型コロナウイルスにより世界2位(約54万人)の死者を出しているブラジルで、新規感染者と死者の減少が顕著になっている。ワクチン接種が加速していることが大きな理由だ。ただ、より感染力の強いインド由来のデルタ株の市中感染も確認されており、予断を許さない状況だ。(サンパウロ・綾村 悟)

加速するワクチン接種
懸念はデルタ株の拡大

 ブラジルの世論調査会社ダッタ・フォーリャ社が15日に発表した世論調査で、有権者の半数以上が「感染を制御できている」との認識を示した。昨年6月にブラジルでパンデミックが発生して以来、初めてのことだ。

ブラジルで2回目の英アストラゼネカ製ワクチンを接種する高齢者=5月1日、ミナスジェライス州ベロオリゾンテ(AFP時事)

ブラジルで2回目の英アストラゼネカ製ワクチンを接種する高齢者=5月1日、ミナスジェライス州ベロオリゾンテ(AFP時事)

 調査結果は、現在の感染状況を反映している。新規感染者と死者は3週連続で大きく減少、1日で10万人を超える感染者が出ていた6月中旬の半分以下になっている。特に重症患者の減少が顕著で、集中治療室の満床状態も解消された。

 感染者の減少を受けて、地方自治体も商業・社会活動の制限緩和に動き始めており、市中に活気が出ている。「老齢者や家族連れが増えるなど、来店客から安心が感じられる」(サンパウロの飲食店経営者)との声も。

 状況の改善には、ワクチン接種が進んでいることがある。ブラジルでは政府対応が出遅れたこともあり、先進諸国に比べて接種は低迷していた。しかし、6月以降は急ピッチで接種が進んでおり、地方自治体の多くで40歳以上希望者の1回目接種が完了している。

 18日までに全成人の54・8%が少なくとも1回の接種を受けており、接種完了率も19・5%だ。

 ブラジルのワクチン接種完了率は高くないが、同国内で実施された社会実験では、ワクチンの1回接種でも感染抑制に大きな効果があることが実証されている。

 この社会実験は、サンパウロ州ポトゥカトゥ市(人口約14万8000人)で行われたもの。パンデミック下の5月17日に市内の全成人に英アストラゼネカ製ワクチンを1回接種した。6週間後、同市での新規感染者は71・3%も減少したのだ。

 これを受け、サンパウロ州政府は11日、ワクチンの接種スピードをさらに上げる方針を打ち出した。8月20日までに州内の18歳以上の全成人に1回目接種を終える予定だ。他の地方自治体も同様のプログラムを進めている。

 ようやく苦境を脱しつつあるブラジルだが、課題もある。

 ボルソナロ大統領がもともと、ワクチンやマスク着用に否定的だったこともあり、大統領支持派を中心にワクチンへの懐疑論が根強い。

 中国製ワクチンへの不信感もある。ブラジルでこれまでに使用されたワクチンの約40%が中国シノバック社の「コロナバック」だ。一部の国では、中国製ワクチンを2回接種したにもかかわらず、発症・死亡した例が多数報告されている。

 南米のウルグアイは8日、コロナバックの2回接種を受けた全国民に対し、米ファイザー製ワクチンのブースター接種を行うことを決定したばかりだ。ブラジルでも、中国製ワクチンの接種を拒否する人が増えている。

 こうした中、政府系ブラジル通信は18日、国内で使用されている全ワクチンの詳細な情報を公開した。記事では、中国製ワクチンの有効性にも触れられており、2回接種での発症抑止率は50%強にすぎない。ただし、「重症化を防ぐ効果は高い」との医療関係者の見解を掲載するなど、ワクチンの信頼性を強調している。サンパウロ州では、重症化している患者の多くがワクチン未接種だったという。

 また、今後懸念されるのは、アジア各国で医療崩壊を引き起こしているデルタ株の流行だ。デルタ株はワクチンの有効性を下げる恐れが指摘されている。

 ブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)は18日、新たな変異株に対応するため、ブラジルで最も多く使用されている英アストラゼネカのワクチンに関して、ブースター接種の安全性に関する治験開始を認可した。さらに、ブラジルの国産ワクチンも最終治験の段階に入っており、経済・社会活動の本格的な復帰に向けた動きが活性化している。

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