«
»

艦艇数で中国優位拡大、バイデン米政権 疑われる対中「本気度」

NEWSクローズ・アップ

 バイデン米大統領は中国を「唯一の競争相手」と位置付けるが、その本気度が疑われている。中国の猛烈な軍拡により、米中の軍事バランスが大きく揺らいでいるにもかかわらず、バイデン政権の国防予算は実質削減で、既に中国にリードを許す海軍艦艇数はさらに差が開く見通しだ。アジア重視を掲げながらレトリックだけで行動が伴わなかったオバマ元政権の二の舞いを危惧する見方が出ている。(編集委員・早川俊行)

国防予算を実質削減

 バイデン政権が議会に要求した国防総省予算は7150億㌦(約78兆8000億円)。金額は前年度比1・6%増だが、予想インフレ率が2%以上であることから実質的には削減だ。教育省は41%、厚生省は23%、環境保護局は21%もそれぞれ予算を大幅に増額させており、バイデン政権の「内政重視・国防軽視」が鮮明になっている。

米国と中国の海軍艦艇数

米国と中国の海軍艦艇数

 対中抑止のカギを握る海軍の予算も前年度比1・8%増と実質削減で、艦艇の調達予算は3%も減らした。海軍は来年度、艦艇を15隻退役させる一方、新規調達は8隻にとどまる。

 米海軍の艦艇数は現在300隻弱だが、これを355隻まで増やすことが本来の目標だ。だが、海軍の調達責任者ジョン・ガンブルトン少将は「1年に8隻(の調達)では355隻には届かない」と明言。「300隻の海軍で(艦艇の)寿命が30年とすると、8隻では維持できない」と語り、単純計算でも300隻体制すら維持できないとの見方を示した。

 「言っていることとやっていることが一致していない」。元海軍中佐のイレイン・ルーリア下院議員(民主党)は、6日付ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙への寄稿で、中国の軍拡を警戒する発言を繰り返しながら、国防予算にその裏付けがないバイデン政権の“言行不一致”を厳しく批判した。

 ルーリア氏によると、2010年の艦艇数は米海軍が中国軍を68隻上回っていた。ところが、今は中国軍が米海軍を63隻も上回る。

 米海軍情報局の分析では、中国海軍は30年までに425隻を保有する見通し。このままでは、中国との差は広がるばかりだ。

バイデン米政権の国防予算で調達数が前年度の2隻から1隻に削減されたアーレイ・バーク級イージス駆逐艦(米海軍提供)

バイデン米政権の国防予算で調達数が前年度の2隻から1隻に削減されたアーレイ・バーク級イージス駆逐艦(米海軍提供)

 一方で、バイデン政権は先端技術の研究開発には前年度比5・1%増となる過去最大の1120億㌦を計上した。これは、旧式の艦艇や航空機を退役させて維持コストを削減し、その分を将来の兵器開発に充てる「ダイベスト・トゥ・インベスト(投資のための処分)」という考え方に基づいている。だが、研究開発が仮にうまく進んだとしても、実際に兵器として用いられるようになるのはかなり先の話だ。

 バイデン政権の国防予算は、現在の抑止力よりも将来の兵器開発を優先するものであり、台湾有事は当面先と捉えていると受け止められかねない。下院軍事委員会のマイク・ロジャース共和党筆頭理事は「中国に恐ろしいメッセージを送った」と非難している。

 米太平洋軍のフィリップ・デービッドソン前司令官は在任中の今年3月、中国は6年以内に台湾を武力侵攻する可能性があると明言。後任のジョン・アキリーノ司令官も、台湾有事の時期は「大方の予想よりずっと近い」と警告した。

 これに対し、米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は先月、台湾有事が「近い将来に起きる可能性は低い」と主張。こうした見解が国防予算に反映されたと考えられる一方、米軍内で認識が大きく食い違っていることは非常に気掛かりだ。

6

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。