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バイデン政権は米国のエネルギー輸出国としての地位を奪おうとしている

 5月25日、エネルギー・商業委員会の環境と気候変動に関する下院小委員会で、クリーン・フューチャー・アクトという法律に関する公聴会が開催された。民主党が現在推進している約1000ページにもわたる法案は、米国の石油天然ガスの生産の肝となっている水圧破砕法を制限できる権限を連邦政府に与えようとしている。

 米国はトランプ時代に進んだエネルギー採掘に関する規制緩和によって、エネルギー資源の純輸入国から純輸出国への転換を実現していた。その要因となったシェールガス・シェールオイルの採掘には、水圧破砕法の技術が必要不可欠であり、同技術を禁止することは米国のエネルギー資源産業を潰すことに等しい。

 2020年大統領選挙では水圧破砕法の維持に関して、共和党・民主党の間で対立する構造が存在していたが、バイデンは水圧破砕法については事実上明言を避ける形でお茶を濁してきた。それは、ラストベルト諸州で同法を利用したエネルギー産業が盛んであるため、大統領選挙を左右する可能性があるイシューであったからだ。

 しかし、当然であるが、一度表から引っ込めたからといって、民主党側が水圧破砕法を規制することを諦めるはずはない。今回のクリーン・フューチャー・アクトは、水圧破砕法によって発生する流体に関して、連邦環境保護局によって決定された試験やデータ報告要件を満たさない限り地下放出を禁止する内容となっており、同局はシェール関連の採掘行為を恣意的に禁止することができる。また、同法では、従来まで問題視されてこなかった廃棄物処理の規制強化も盛り込まれており、それを満たすシェールの油井は極めて少数である。このような規制はオバマ時代の内容よりも厳しいものであり、同産業の企業経営に深刻な影響を与えることになるだろう。

 米国における水圧破砕法を巡る戦いは、中央集権と地方分権の対立の側面を持っている。各州は地元産業保護のため規制権限を強めることを嫌っているが、連邦政府はそれらの権限を奪って一括に規制の網をかけることを望んでいる。したがって、ラストベルトだけでなく、共和党の力が強い州からも反対の声が挙げられており、今後益々政治対立が深まっていくことになるだろう。まさに米国各州の分断を更に助長する政策であり、バイデン政権が主張する「統合」とはかけ離れた性格を持つ政策だと言える。

 この問題は、米国の安全保障を巡る問題としても重大な懸念をはらんでいる。米国のエネルギーの独立性が脅かされるということは、米軍が産油地である中東地域に再び関与せざるを得なくなることを意味する。また、バイデン政権がエネルギー供給の代替方法として模索しているグリーン産業が、その主要な原料・商品を中国に頼らざるを得ないことは明らかだ。したがって、米国の安全保障上の判断と今回の環境規制の強化は相反する要素を多分に含んでいる。

 バイデン政権が左派系勢力に押されて気候変動を重視し、安全保障面での不安定性を抱えることになることは、日本にとって憂慮すべきであることは間違いない。バイデン政権における気候変動政策・エネルギー政策は、日本にとっても安全保障上の懸念事項として継続的に注意していく必要があるだろう。

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