ワシントン・タイムズ・ジャパン

バイデン政権が急ピッチで推進するサプライチェーンの見直し

 2021年2月24日大統領令14017「Executive Order on America’s Supply Chains」で、バイデン大統領は米国の将来を左右するサプライチェーンの見直しを命じた。

早稲田大学招聘研究員 渡瀬裕哉氏

早稲田大学招聘研究員 渡瀬裕哉氏

 バイデン政権のサプライチェーンの見直し方針は、トランプ政権からの流れを引き継いだものであるが、同大統領令では更に具体的に品目・セクターを特定する形で計画の提出を求める内容となっている。
 
 特に100日以内に計画の提出が求められている重要品目は「半導体」「医薬品」「レアアース」「電気自動車用バッテリー」の4つである。
 
 トランプ政権時代から半導体については、台湾TSMCに対するアプローチも含めて、米国側がかなり力を入れて生産力確保に向けて取り組んでいる。医薬品に関してもトランプ大統領は、コロナ発生後に大幅な見直しを断行することを命じている。
 
 米国はレアアースの対中依存度が極めて高く、脱中国化は極めて大きな問題である。トランプ政権も内務省に命じて35種類のレアアースの安定的な確保を進めている途中であった。
 
 バイデン政権が進める気候変動対策のための再生可能エネルギー産業は、大量のレアアースを必要とする。バイデン政権が気候変動対策を推進する際、中国によるレアアースの寡占状態は重大な障害となるだろう。
 
 また、電気自動車用バッテリーも、Tier2またはTier3レベルでは中国企業のシェアが非常に大きく、テスラ社が最終製品を供給したとしても中国との関係は切っても切れない。次世代の交通手段である電気自動車のデファクト作りは既にサプライチェーンの各段階のシェア争いにまで発展している。
 
 これ以外にもセクター別に、国防、医療・バイオ、ICT・データ、エネルギー、運輸(インフラ)、農産物・食品のサプライチェーンの見直し計画を提出する予定となっている。
 
 まるで戦争でも始めるかのようなサプライチェーンの見直し計画であるが、国家安全保障問題担当大統領補佐官と経済政策担当大統領補佐官が関係閣僚と調整して報告書をまとめることになっており、その意図については十分に注意が必要だろう。
 
 バイデン政権の腹積もりとして、同大統領令の内容からは、中国に対していつでも全面対決できる体制を整備しつつ、じっくりと腰を据えて中国と向き合って交渉していくという狙いが透けて見える。
 
 一方、3月中旬に行われた日米2+2会談でもサプライチェーンに関する課題は議論されたが、これは日本にとって極めて大きなビジネスチャンスだ。
 
 米国はサプライチェーンの見直しを通じて、同盟国を中心に上記の品目及びセクターの購入を優先的に進めることになる。その際、日本企業が中国依存を代替することができれば、米国市場を中国から奪うことが可能である。
 
 既に、レアアースについては、JOGMECと日本商社の双日が出資する豪州鉱山会社ライナス社がテキサス州における開発権を確保しており、同分野では実際に同盟国間の協力関係が進展している。他分野についても日本側から米国に積極的に提案し、市場シェアを一気に中国から奪う取り組みを進めることが望ましい。
 
 日本企業にとっては千載一遇の機会が訪れており、日本政府による対米交渉の腕の見せ所と言えるだろう。

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