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バイデン政権、分断克服のリトマス試験紙としてのコロナ対策予算

 現在、バイデン米政権は新型コロナウイルス対策のための景気対策で、共和党との間に存在する党派的な政治対立を真に克服する意思がある否かを問われている。

早稲田大学招聘研究員 渡瀬裕哉氏

早稲田大学招聘研究員 渡瀬裕哉氏

 バイデン政権の主要閣僚は比較的中道派が占める結果となっており、就任直後に大量に署名された大統領令も事前予測よりは左派色が薄いものであった。

 たしかに、共和党保守派から見れば同政権のスタートダッシュは紛れもない左派的なものであった。しかし、バイデン政権の現在までの政策はトランプ政権の保守的な政策をスタート地点までロールバックしたものでしかない。そのため、民主党に近い政策傾向を有する共和和党主流派から見た場合、やはりバイデン政権は交渉不可能なレベルで左派に一歩踏み抜けたものとしては映っていないものと思う。したがって、バイデン政権の当面の政策的なイデオロギーの程度について現段階で断定することは難しい。

 1月末、共和党上院議員ら10人はバイデン政権に対して共和党側との超党派作業を行う意思を問うアプローチを行った。それは共和党議員らが、コロナ対策予算の規模を大幅に縮小するものの、民主党が求める内容を一部含むコロナ対策の予算を提示するものであった。

 およそバイデン政権にとっては受け入れ難い内容ではあるものの、このアプローチは今後の議会運営を展望する上で、政治的に非常に重要なメッセージを政権に対して送っている。特に、共和党上院議員10人という数字が非常に曲者だと言えるだろう。

 米上院では重要法案を通過させるために必要とされる票数は過半数の50票ではなく60票とされる。これはフィリバスター(議事妨害)と呼ばれる上院規則によるルールであり、多数派政党による横暴を防止し、両党の妥協を促す仕組みとして存在している。そのため、どのような法案を通す際にも本来であれば上院50議席の事実上過半数を有する民主党も同規則の制約を受けることになる。

 ただし、予算に関する法案については更に財政調整法による特別規則によって、上院50票で法案を通過させることができるものとされている。そのため、バイデン政権と上院民主党執行部は巨額のコロナ対策を推し進めることは民主党陣営単独でも不可能ではない。(トランプ政権は巨額の減税法案を通過させる際にこの手段を行使している)。そのため、共和党上院議員10人が集まってバイデン政権側と会談を求めたところで、バイデン政権及び民主党側がパワーゲームで押し切れば、今回の新型コロナ対策予算だけに限れば無意味な行為でしかない。

 しかし、だからこそ、共和党上院10人という数字は、今後バイデン政権が共和党と何らかの対話を行いながら政権運営を行う意思を問う意味があると言えるだろう。

 つまり、本件についてバイデン政権及び民主党側が共和党と対話の余地を見せた場合、この上院共和党10人は他の法案でもバイデン政権側に常に対話の窓口として機能することを意味する。これはバイデン政権及び民主党にとっては財政問題以外の法案におけるフィリバスターを乗り越える可能性を手にすることを示唆している。

 逆に今回の共和党側の提案が無視された場合、今後はバイデン政権及び民主党に対する共和党側の協力の門は固く閉ざされることになるだろう。

 バイデン政権は分断を克服できるか否かのリトマス試験紙に早くも直面しており、新型コロナ対策予算の成立に向けてどのようなアプローチを行うのか、米国の今後数年間の政治状況を占う出来事として興味深く、注目されるものだ。

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