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バイデンのアメリカ  異論を封殺「まるで中国」

リベラルな政策前面に

 今月3日に招集された第117米連邦議会。開会の祈祷(きとう)を捧(ささ)げた民主党のクリーバー下院議員が最後に唱えた言葉が波紋を広げた。

 「アーメン、そしてアーウーメン」――。

ホワイトハウスで演説するバイデン米 大 統 領=22日(EPA時事)

ホワイトハウスで演説するバイデン米 大 統 領=22日(EPA時事)

 性差別を無くす意図で「アーウーメン」という造語を加えたわけだが、「アーメン」はヘブライ語で「そうなりますように」を意味し、男性を指す言葉ではない。キリスト教メソジスト派の牧師でもあるクリーバー氏がそれを知らないはずはないが、聖職者の立場にある人物がキリスト教の祈祷の伝統をちゃかし、「ポリティカル・コレクトネス」(政治的正当性)を押し出したことは、多くの人を唖然(あぜん)とさせた。

 民主党統治時代の幕開けを告げたこの祈祷は、同党がリベラルな政策を強力に推し進めることを予感させるものだった。下院で多数派の座を握る民主党はその翌日、「父」「母」「息子」「娘」「彼」「彼女」など性別を特定した言葉は「不適切」だとして、下院での使用を禁止した。

 「米国を結束させることに全霊を捧げる」。バイデン氏は20日の就任演説でこう訴えた。だが、そのわずか数時間後、政治対立を助長する行動を取っている。

 バイデン氏は就任初日に17件の大統領令などを出したが、その中の一つがLGBT(性的少数者)の差別禁止だ。職場、学校、医療、住居など幅広い分野で差別禁止を徹底させる方針で、生物学的には男であるトランスジェンダーの生徒に女子トイレ・更衣室の使用や女子スポーツ競技への参加を強制的に認めさせることを示唆する内容も含まれている。

 保守派・宗教界からは、結束を呼び掛けながらいきなり過激な政策を打ち出したバイデン氏への批判が噴出。ツイッターの検索目印となるハッシュタグで「#バイデンが女性を消去」がトレンド入りした。

 バイデン氏はまた、トランプ前大統領が教育現場で蔓延(まんえん)する反米自虐歴史教育を是正するために設置した「1776委員会」を大統領令で廃止した。トランプ氏は建国の歴史や理念を次世代に正しく伝えることで国民の結束を取り戻すことを目指したが、バイデン氏はこの取り組みをあっさり切り捨てた。

 6日に起きた連邦議会議事堂乱入事件は全米を震撼(しんかん)させたが、リベラル勢力は逆に保守派を追い詰める好機と捉えている。トランプ氏と同氏の支持者に対して危険な過激主義者のレッテルを貼り、社会から「パージ(追放)」する動きを強めているのだ。

 ツイッターやフェイスブックなど大手インターネット交流サイト(SNS)は、トランプ氏のアカウントを次々に停止。アマゾン・ドット・コムは、同氏支持層に人気の新興SNS「パーラー」へのサービス提供を打ち切るなど、大手IT企業による保守派の言論封殺はあまりに露骨だ。

 反トランプ派団体はトランプ政権元高官のデータベース作成を進めているが、これはトランプ氏の政権運営に加担した者をブラックリストに載せて、社会的に抹殺する試みにほかならない。経済誌フォーブスの幹部は、トランプ氏の元スタッフらを雇った企業は「嘘(うそ)つき企業」と見なすと警告。経済界でもトランプ派パージに同調する動きが広がっている。

 バイデン民主党政権に異論を唱えた者は、トランプ派と見なされ、社会的に抹殺されかねない状況を、米小説家のロジャー・サイモン氏は次のように評した。

 「米国が中国のコピーになりつつある」

 共産党一党独裁体制に異論を唱えた者は、危険分子と見なされて徹底弾圧される中国と酷似している、との懸念である。自由の国・米国で信じ難い状況が生まれている。

(編集委員・早川俊行)

     ◇

 新たな米大統領に就任したバイデン氏の下で、米国はどう変わっていくのかを探った。

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