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バイデンの討論会発言は「民主党左派」の造反を招くのか?

 2016年の米大統領選挙、ヒラリー敗北の要因の1つは民主党左派の離反であった。大統領選挙予備選挙において、ヒラリーとサンダースは決定的に対立、その後も党内でのシコリは解消することなく、大統領選挙本選での民主党左派の棄権票や第三極への流出に繋がった。

早稲田大学招聘研究員 渡瀬裕哉氏

早稲田大学招聘研究員 渡瀬裕哉氏

 2020年、バイデンはサンダースら左派と予備選挙を再度繰り広げたものの、彼らは極端に左派的な政策を隠す形で政策協定を結ぶことによって、反トランプという目的のために妥協する道を選んだ。しかし、その関係性は信頼とは程遠い「敵の敵は味方」という程度の同盟関係に過ぎないことは明白だ。

 9月29日、大統領討論会において、トランプから激しく挑発されたバイデンは自らが左派から一線を画した存在であることに言及する失態を犯してしまった。重要であった場面は2つだ。

 1つ目はトランプがグリーン・ニューディール政策を批判した際、バイデンが「バイデン・プラン」を採用するとして同政策を批判した瞬間。そして、2つ目はやはりトランプがヘルスケアに絡めて社会主義批判をしたとき、「サンダースを倒して民主党を代表して立っているのは自分だ」と述べてしまった瞬間だ。

バイデン前副大統領(AFP時事)

バイデン前副大統領(AFP時事)

 要は、バイデンは左派が求める主要政策を否定した上に、左派の中心となっているライバルを貶める発言をしてしまったのだ。バイデンは中道派であり左派を快く思っていないことは明らかであり、その本音を吐露してしまうという痛恨のミスを犯したのだ。これは2016年にヒラリーの失態をなぞる行為であったと言えるだろう。

 これを受けて、左派の代表格であるサンダースは討論会について1日沈黙するとともに、若手左派のオカシオ・コルテスはバイデンの環境政策に自らが共同政策責任者として関わっている旨をツイートして事態を収拾する必要が発生してしまった。民主党内の脆い共闘体制に一見してヒビが入ったように見えるが、果たしてその行方はどうなってしまうのだろうか。

 筆者はバイデンの発言は大統領選挙の最中は少なくとも決定的な影響は与えないものと思う。その理由はこの第1回討論会の間にバイデンに寄せられたネット小口献金額が記録を更新するほどの多額に及んだからだ。バイデンは2時間の討論時間の間に献金プラットフォームである Act Blue から800万ドルの献金を獲得することに成功している。Act Blue を通じた小口献金者は左派系の有権者が多く、この数字は彼らにとってはバイデンの左派に対する失言はトランプに対する憤りを越えなかったことを意味する。お金は正直なものであり、民主党左派からのバイデンへの支持は継続中であると見るべきだろう。

 第1回討論会における議論では、民主党内でバイデンと左派の間に僅かな隙間風は吹いたものの、現状ではそれは決定的な亀裂にまでは発展しなかったと言える。今後、大統領討論会が2回、3回と繰り返される中、バイデンが再び左派に対する失言を述べるか、左派の堪忍袋の緒は本当に切れるか、そしてトランプは民主党内の僅かなヒビを巨大な亀裂まで拡大することができるのか、今後も注目すべきポイントとなっている。

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