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米中はデカップリングに向かっている

~台湾の「建国」が見えてきた~

●領事館の追放合戦と米国大使の退任

 米中対立の激化が止まらない。スパイの拘束や追放の他、メディアの追放合戦、さらに7月には米中領事館の追放合戦も始まった。米政府が突如、テキサス州ヒューストンにある中国総領事館の閉鎖を命令。

 それに対し「政治的挑発だ」と反発した中共政府は、四川省成都にある米国領事館の閉鎖を命じたのだ。共和党のマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州選出)は、「ヒューストンの中国総領事館は巨大なスパイセンター。ようやくシャットダウンする時が来た」とツイートし、同じく共和党のテッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)は、CBSニュースの番組インタビュー(7月26日)で、「中国大使館・領事館をさらに閉鎖させる可能性は高い」と語った。
 8月10日からは、在中国米大使館の微博(Weibo)が新しいロゴを使用しているが、これまで入っていた文字「北京・中国」から「中国」が消え、「北京」だけになった。「米国政府は『北京』『台北』と並列に位置付けた」「デカップリング(=分離、切り離し)の前兆」などの声が漏れ伝わるが、私自身もそのように解析している。

テリー・ブランスタッド元中国大使 (ウィキペディアより引用)

テリー・ブランスタッド元中国大使
(ウィキペディアより引用)


 
 米中関係の緊張感がますます高まるなか、9月14日、在中国米大使館が「トランプ大統領とテリー・ブランスタッド大使の電話会談で『退任の決定』を確認した」との声明を発表した。
すると、識者からは「ブランスタッド大使の突然の退任は、米中関係の底が抜けた証拠だ」「米国と中国のカップリング政策が、確実に死んだ兆候の1つ」といった声が次々と漏れてきた。

 米国務省高官は匿名を条件に、国営ラジオ放送「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」に、「中国政府は多くの点で道をふさいだ」「対中外交は事実上すでに制限が多く、大使が現地にいるかいないかは基本的に問題ではなかった」「ニクソン政権以来、中国が採用してきた『求同存異(=双方の共通点を追求し、異なる点は棚上げする)』政策を打破する必要がある」と述べた。

 別の高官は「米中がデカップリングへと向かっているかは、中国が両国間の制度的・イデオロギー的な相違に立ち向かえるかどうかが鍵であり、米国はもはや利益のために価値を犠牲にはしない」と語った。中国が新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)や、知的財産の収奪、ウイグルや香港での人権侵害を引き起こしながら、軍事的覇権を強めていることへの米国の怒りは、「大使引き上げ」という次元に発展しつつある。
 
 マイク・ポンペオ米国務長官は、ブランスタッド大使を自身のツイッターでねぎらったうえで、「中共はプロパガンダ(宣伝)機関の偽善者であり、『思想の自由』を恐れた」と非難した。というのも、中国の崔天凱駐米大使は、米国のニュース番組や出版物に定期的に登場して自国の宣伝を続けているが、ブランスタッド大使が中国のSNS(微博やWeChatなど)に投稿した、「無修正の議論と無制限の相互作用を通じて2国間関係を構築していく」といっ
た文章は、中共が検閲して削除されたのだ。これでは、対等な2国間関係は築けない。

 米中関係の専門家である、アジア協会米中関係センターのオービル・シェル所長は「米中関係の悪化の、主な責任は習主席にある。過去8人の米大統領に支持されてきたカップリング政策は、2国間関係を安定させてきたが、南シナ海や台湾海峡、香港、新疆ウイグル自治区、東シナ海における中共軍の積極的な行動が本質的に窒息させた」「習主席は『中国を大きな危険にさらした支配者』として歴史に残る可能性がある」と、前出のVOAに語った。
 
 習政権が、西側社会の「自由と民主」「法の支配」「人権」という価値観を受け入れ、行動を変える意思がない限り、もう妥協も譲歩もしないという米国の決意がうかがえる。
 
 さて、菅義偉首相は習主席と9月25日に電話会談し、「(前略)主席とは今後も首脳間を含むハイレベルの中で、2国間及び、地域、国際社会の諸課題について緊密に連携をしていこうということで一致した」と語った。 
 
 日本はいい加減、米国に限らず欧州連合(EU)の新潮流を理解し抜本的に頭を切り替える時ではないのか?

 

●「日米台の関係強化」へ動く流れ

 対照的に、米台関係は「国と国」の関係へと向かっている。李登輝元総統の弔問外交に乗じて、アレックス・アザー米厚生長官は8月に台湾を訪問し、米国務省のキース・クラック国務次官(経済成
長・エネルギー・環境担当)は9月19日、台北郊外で開催された告別式に出席した。台湾国防部(国防省)によると、中国軍機19機が同日の朝、中台の中間線を越えて台湾側に侵入した。

 クラック氏は告別式に先立つ17日、米台自由貿易協定(FTA)の交渉に関する「米国と台湾のハイレベル経済・ビジネス対話」を主催。蔡英文総統は18日、台湾総統府で開いた歓迎夕食会で、「台湾は重要な一歩を踏み出す決意を固めた」と述べた。
 
 米台の識者は少なからず、蔡総統の発言を「米国と台湾が外交関係を樹立する前奏曲」と受け止めており、「米国が台湾を公式に認め、自由で民主的な価値を共有する台湾と、再び国と国になることは絵空事ではない」と分析している。
 
 9月には、英語で大きくTAIWANと表記された新デザインのパスポートがお披露目された。また、台湾(中華民国)の駐米代表である蕭美琴氏の個人ツイッターのアカウントがTaiwan Ambassador to theUS(駐米台湾大使)に変わったことも最近、話題になった。台湾は着々と「脱・中華民国」すなわち「台湾」としての建国に向かっているようだ。
 
 共和党のトム・ティファニー米下院議員は9月18日、「米国が台湾との正式な外交関係を再開させ、FTAの交渉、台湾が国際機関の加盟を支持する議会意見の共同決議案を提出した」と発表した。

 米国務省のデービッド・スティルウェル国務次官補(東アジア・太平洋担当)も「国務省と上下院議員の立場は一致し、台湾を支持する」と述べ、台湾の蘇貞昌行政委員長は「台湾は国際的な責任を担い、より多くの貢献をする用意がある」と語っている。
そして、菅内閣の防衛大臣には、台湾との関係強化を目指す超党派議員連盟「日華議員懇談会」(日華懇)の幹事長を務める岸信夫衆議院議員が就任した。安倍晋三前首相の弟である岸議員は、蔡英文総統が総統に就任する以前から交流を持つ。何より祖父は言わずと知れた岸信介元首相。首相時代に中華民国(台湾)を訪問しており関係が深かった。

 中国外務省は菅内閣の発足初日に「日本が公式レベルで台湾と関係強化しないことを希望」と発表したが、「日米台の関係強化」へ動く流れに戦々恐々としていることは間違いない。
 
 さて、「習主席とは、アイオワ州知事時代から知己の仲」との触れ込みで就任したブランスタッド大使だが、10月初旬の帰国後はトランプ大統領再選に向けた支援活動をすると報じられている。彼の息子はすでにトランプ大統領の選挙陣営に入っている。
 
 北京で約3年半、中共の統治する〝異形の国家〟を第一線で見続けてきた氏は、一体何を語るのだろう?
 
 民主党のバイデン候補とその家族のチャイナゲート? 武漢ウイルスの隠蔽工作?  

 大統領選直前の「オクトーバー・サプライズ」の目玉になりそうだ。

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