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これからは「中共ウイルス」と呼ぼう

 米国内で広がっている抗議デモは「人種差別に抗議するデモ」か、それとも「黒人への差別を抗議するデモ」かと問われれば、厳密にいえば、後者だろう。抗議デモの直接のきっかけは、米ミネソタ州のミネアポリス近郊で5月25日、取締りの過程で警察官に拘束され窒息死させられたアフリカ系米人、ジョージ・フロイドさん(46)の事件だ。その後、全米各地で黒人差別に抗議するデモが行われ、一部のデモは暴動化し、新たに黒人が犠牲となる事件が起きている。だから、それ以降発生した抗議デモは人種差別に抗議したというものではなく、黒人差別に抗議したデモといわざるを得ない。

「中国ウイルス」と呼ばれる「COVID-19」の正体(世界保健機関の公式サイトから)

「中国ウイルス」と呼ばれる「COVID-19」の正体(世界保健機関の公式サイトから)

 米国の黒人差別抗議デモは欧州にも波及している。抗議デモに参加する人は人種差別に抗議するというより、フロイドさんの死を追悼する「黒人差別抗議デモ」というべきだろう。

 なぜ、そんなことに拘るのかといわれれば、「人種差別」と「黒人差別」ではその意味と対象が違ってくるからだ。人種差別の場合、黒人差別だけではなく、ヒスパニック系差別、白色人差別、黄色人差別が含まれる。そして黄色人差別といってもアジア系だけではない。アジア系差別といっても中国人差別から日本人、韓国人差別などが考えられる、といった具合だ。一方、黒人差別の場合、日本人や中国人などアジア系への差別は含まれない。あくまでも黒人の差別だけを対象としている。欧米社会で繰り広げられている抗議デモは「黒人差別への抗議デモ」というべきだろう。

 当方は40年余り欧州に住んでいるが、外貌がアジア系だから、そのために差別されたことはある。だから、人種差別の抗議デモとなれば、当方も犠牲者の一人として参加する資格があるし、演台に立って日本人への差別に抗議する檄を飛ばしても文句はいわれないだろう。

 そのようなことを考えていた時、ワシントン発の時事通信から興味深いニュースが流れてきた。「米下院は17日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うアジア系米国人への差別に反対する決議案を採決し、賛成243、反対164の賛成多数で可決した。下院は野党民主党が多数派を占める。採決では民主党の全出席議員が賛成。共和党は大半が反対に回ったが、14人が賛成票を投じた。決議はトランプ大統領が使う『中国ウイルス』『武漢ウイルス』などの呼称について、『反アジア系の烙印を定着させるものだ』と非難した」という。

 米下院でアジア系米国人の差別に抗議する決議が可決されたが、その直接の契機は中国武漢発の新型コロナの感染の広がりで、アジア系米国人が他の米国人から叱責や差別を受ける機会が増えてきたからだ。

 アジア系の人間の一人として言わせていただければ、「なぜ今頃そのようなことを決議案で採決するのか。中国ウイルスがまだ存在しなかった時もアジア系米国人への差別はあった。米下院議員が本当にアジア系米国人への差別が深刻な問題と考えていたのならば、なぜ今まで静観していたのか」といった憤りすら出てくる。

 それに対し、米下院議員は、「新型コロナの感染問題でアジア系米国人が差別を受ける機会が増えたからだ」と弁明しているが、より正確に言えば、「新型コロナ感染と中国人が結び付いてチャイナフォビアが生まれてきている」と説明すべきだろう。すなわち、アジア系米国人というより、中国人への差別をなくすため、というわけだ。だから「決議はトランプ大統領の『中国ウイルス』『武漢ウイルス』も含まれる」と釘を刺しているわけだ。

 ここまでくれば「なーんだ。米民主党のトランプ批判が目的で、ひょっとしたら民主党内の親中派(Panda Hugger)の呼びかけがあったのかもしれないな」と直ぐにその舞台裏が想像できる。換言すれば、「アジア系米国人云々」と綺麗ごとを言って決議案を可決したものの、中国側の強い要請があったからだろう、と勘繰らざるを得ない。

 黒人差別抗議デモを恣意的に人種差別抗議デモに格上げし、アジア系米国人を差別から守るという建前で中国を擁護する決議案が採決されたわけだ。米民主党の常套手段だ。常に立派な名目を掲げながら、本当の目的を巧みにカムフラージュする。今回の決議案の狙いはアジア系米国人の人権を守るというより、「中国ウイルス」「武漢ウィルス」という呼び方を阻止することにあったわけだ。

 中国武漢から発生した新型コロナウイルスは日本時間18日現在、世界で3000万人以上が感染し、94万人以上が犠牲となっている。「戦後最大の人類への挑戦」といわれる感染病の発生地がどこかを調査することは緊急課題だ。中国側が新型コロナウイルスの調査で国際社会との連帯を拒否している現在、中国ウイルスという呼称は理想的な呼び方ではないが、その責任は中国側にある。

 ただし、トランプ氏も「中国ウイルス」というのは止めたほうがいいかもしれない。実際は「中国共産党ウイルス」だからだ。呼ぶとすれば「中共ウイルス」とすべきだろう。「中共ウイルス」ならばアジア系米国人への差別ではなく、チャイナフォビアと非難されることもないからだ。

 トランプ大統領は大統領選が終わるまで「中国ウイルス」ではなく、「中共ウイルス」で通していただきたい。なぜならば、「中国共産党政権」と「中国国民」は全く別だからだ(「習近平氏が恐れる『党と人民は別』論」2020年9月8日参考)。

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