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加速するブラジルの森林破壊

阻止に動く欧州金融機関
企業への投資見直しも

 地球温暖化の抑制に重大な役割を果たしているアマゾン熱帯雨林を中心としたブラジルの森林。だが、近年は記録的な森林火災により、森林破壊が加速している。こうした中、欧州の金融機関がブラジル政府と企業に対し、投資判断の見直しもあり得ると牽制(けんせい)し、違法伐採の防波堤として立ちはだかる動きも出ている。(サンパウロ・綾村 悟)

パンタナール

パンタナールに広がる森林火災(ブラジル消防当局提供)

 ブラジルで記録的な森林火災が続いている。ブラジル国立宇宙研究所によると、同国内のアマゾン熱帯雨林における今年7月の森林火災は6803件を記録し、昨年同月の5318件を28%も上回った。森林火災の主な原因となっているのは、違法伐採跡地で行われる野焼きだ。

 中西部に位置する世界自然遺産パンタナールでも、昨年の3倍の森林火災が発生し、東京都の総面積(約22万ヘクタール)を超える30万ヘクタールもの森林が失われた。1998年の観測開始以来、最悪の数字だという。中西部は大豆と牛肉の生産地で、アマゾン熱帯雨林と並び野焼きが多く行われる土地でもある。

 専門家が懸念するのが、森林火災が最も多く発生する8月と9月だ。今年の乾期は例年以上の乾燥と強い風が予想され、記録的な火災が発生する可能性がある。

 ボルソナロ大統領は、アマゾン熱帯雨林の開発を優先し、欧州諸国や環境保護団体からの強い非難にも、「アマゾンはブラジルのものだ」と反発してきた。

 しかし、最近では、海外からの批判や圧力を無視できない状況も生まれている。欧州の金融機関や企業によるブラジルの森林と共存する経済活動を重視する動きだ。

 ノルウェーのストックホルムに本社を置く金融機関ストアブランド社など、総額4・6兆㌦(約485兆円)の投資規模を持つ34の金融投資グループは6月、共同でアマゾン熱帯雨林の保護を求める声明を発表。7月にはブラジルのモウラン副大統領や下院議会の代表団と直接会談した。

 投資家らは、ブラジル政府に対し、アマゾン熱帯雨林の消失速度を抑えるために、環境法の厳格化や環境保護の担当省庁が効果的に働くことができる条件を整えるように求めた。さらに、違法伐採地に関する情報の公開を求めると同時に、欧州などに輸出される大豆の耕作地を追跡できるように要請した。

 これらの要請に対して、モウラン氏は森林消失速度の抑制を確約。下院議員代表団も「ブラジルの対外イメージを傷つける環境改正法には投票しない」と約束したという。

 ボルソナロ氏は先月、森林火災の主な原因となっている野焼きを120日間禁止する大統領令を出した。事実上、欧州の金融機関による要請が形になったものだ。

 こうした動きに、ブラジル大手企業も追随している。先月7日には、資源大手バーレ社などが共同でアマゾン熱帯雨林の保護をブラジル政府に求める共同声明を出した。海外からのイメージ悪化とそれによる経済活動へのダメージを恐れているというのだ。

 欧州の投資家らは、アマゾン熱帯雨林の消失速度の減退が実際の数字として現れることを求めている。状況によっては、投資の見直しもあり得ると警告しており、実際に違法伐採地から牛肉を輸出していた一部のブラジルの牛肉輸出業者に対し、投資や欧州市場へのアクセスを制限する動きも出ている。

 ブラジルから130万㌧近くの大豆を輸入しているスイスは、独自に大豆の生産地を特定できる手法を構築しようとしており、違法伐採地からの大豆輸入を阻止する意向だ。

 ただ、こうした動きにもかかわらず、ブラジルでは過去13年で最悪といわれる森林火災が発生している。すでに、アマゾン熱帯雨林やパンタナールには国軍が投入され、熱帯雨林内に臨時基地を敷設した上で、違法伐採の監視と森林火災の消火作業を請け負っているが、消失速度は減速していないのが現状だ。

 モウラン副大統領は「欧州の金融機関などが独自に熱帯雨林保護に関与できるシステムも構築したい」と森林消失抑制に期待を寄せるが、違法伐採とのいたちごっこが続いている。

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