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アメリカを動物園にしろ!

 6月21、22日の週末はシアトルの「自治区」やニューヨーク、シカゴ等で暴力的抗議者によるものと思われる銃撃が相次ぎ「血塗れの週末」になった。シアトルのダーガン市長も6月21、22日の週末の発砲事件以来、「自治区」解放の方向で動き出しているようだ。

 そもそもシアトルの「自治区」とは、ミネアポリスに始まった全米の黒人問題暴動がワシントン州シアトルで最悪の事態に陥利、余りに暴動が荒れ狂ったため6月8日、シアトル市は一部の警察署を封鎖した。そうしたところ、その周辺を暴徒が占領し「自治区」を名乗り始めた。

 トランプ大統領は10日、それを「国内テロリストは、過激派左派民主党が率いるシアトルを占領した。」とワシントン州インスリー知事やシアトル市長ダーガン等も非難。「お前が街を取り返さないなら俺がやる」と連邦政府の介入まで示唆した。しかしダーガン氏は平和的な解決を目指す構えを崩さなかった。

 しかしシアトルの「自治区」では警察、裁判所、刑務所の廃止が要求されている。そもそも警察はシアトルの『自治区』で発生した「レイプ、強盗、およびあらゆる種類の暴力行為」に対応できなかったので8日に警察署を放棄し、自分たちのエリアを警察なしの「キャピトルヒル」を設置した活動家の手に委ねたのである。その後は、もっと悪い状態になっただろうことは容易に想像付く。

 実際、シアトル近郊の女性が5台の警察車両を発砲した疑いで逮捕されている。ワシントン州西地区の米連邦検事局は木曜日のプレスリリースで、ワシントン州タコマ出身の25歳のエイスリン・シャノンが、ジョージ・フロイド抗議行動中にパトカーに対する放火罪で逮捕されたと発表した。

 だがシアトル警察と協力して市内の警察を改善する黒人コミュニティ諮問委員会のメンバーが11日に「これはこれをハイジャックだ!」と発言。闘おうとするまともな市民もいるのである。

トランプ大統領、三島由紀夫の会見時の写真(日本外国特派員協会にて著者撮影)

トランプ大統領、三島由紀夫の会見時の写真(日本外国特派員協会にて著者撮影)

 これと同じ状況が1968年11月、東京大学で起こった。学校の自治を主張する左翼学生により学校が半ば「自治区」にされたのだった。

 それと闘おうとしたのは文学部長だった林健太郎氏だけだった。30人くらいの良心的な教授が平和的に解決しようとしたが、学生たちの暴力に蹴散らされてしまった。その林氏に差し入れを持って行ったのが三島由紀夫だった(阿川弘之氏も同行)

 この件に関して三島は「東大を動物園にしろ!」(『若きサムライのために』日本教文社、1969年刊)の中で以下のように述べている。

 そもそも人間とは「レイプ、強盗、およびあらゆる種類の暴力行為」を行うのが当たり前の存在であり、そういう人間の本質を理解することからしか平和な社会は生まれて来ない。しかし若者は、それが分からず何時の時代も権威に叛逆するものだ。

 三島という人物が奥が深いと思うのは、彼は権威への反逆には賛成している。ただ彼が反対しているのは人間としてのプライドさらには自国の文化や精神を破壊することなのだ。それを守った存在として彼は林氏を高く評価した。今のシアトルなら前述の黒人コミュニティ諮問委員会のメンバーのような人だろう。

 それでも三島が権威への反逆を支持したのは、それがなければ社会全体が硬直化するからである。だが、そうであれば尚更、若者の反逆に堂々と対応できる人生のベテランがいてこそ真の社会の発展がある。まさに今のトランプ大統領ではないか?

 実際、彼は騒動の発端になった警察を巡る諸問題を解決するための具体案を発表したりしている。このような建設的な発想があって初めて破壊されるべき悪しき権威ではない真の権威が生まれて来る。トランプ氏本人が常に権威というか既成概念に反逆している「永遠の少年」だからこそ出来ることかも知れない。それは三島由紀夫も同じだったと思う。

 そして三島は未来を志向することこそ、このような破壊主義を生むのであると述べている。より良い未来を築こうとするというのは非常に良いことのように思われるかも知れない。だが、この思想は「今を生きる」ことを否定する。そこから破壊主義が生まれる。

 トランプ氏が出した具体的な警察改革案のようなものは、シアトルを占領している反権威主義者からは生まれないようなことを言っているのであろう。

 未来を志向することは現在だけではなく過去も否定する。米国だけではなく全世界で今回の米国の黒人暴動を契機として人種差別に関わったと考えられる歴史上の人物の銅像が破壊される出来事が起きている。過去を大事にしないで、どのような未来が築けると言うのか?その銅像の人物が現在の感覚で人種差別主義者の一面があったとしたら、そのようなことが分かる看板のようなものを銅像の近くに設置し、皆で過去と現在を考えてこそ、より良い未来が自動的に来るのではないか?

 このような未来志向という名の破壊主義は毛沢東の文化大革命に淵源を遡ることができるだろう。ちょうど東大紛争で三島が今まで述べたようなことを言っていた時である。

 もちろん三島は、それに言及している。そして東大「自治区」とは中国による日本侵攻を呼び込むことが目的ではないかと喝破している。

 何も変わっていない。シアトルの「自治区」も米国内を混乱させて力を弱めようとする中国の力が陰で動いているのではないだろうか?黒人暴動自体に関しても言うまでもない。

 首相官邸の前で「安倍やめろ!」と叫んでいる輩も同様である。これから米中関係が緊迫するに連れて、アメリカと日本が共同歩調を取ろうとし始めた時、彼らが今の米国の黒人暴動と同じような暴力行為を行い、皇居や首相官邸の前に「自治区」を作ろうとしたら、どうするのか?それと死を賭けて闘う覚悟が今の日本国民にあるだろうか?

 騒動の少し前にトランプ政権はファーウエイ社の半導体調達が世界的に非常に難しくなる措置を発動している。その結果、台湾(の半導体メーカー)の力が強くなった。これは習近平の立場を弱めるものである。

 中国の台湾侵攻そして米中戦争という破局の実現は意外に早いかも知れない。

 三島由紀夫は人間は死と向かい合って初めて価値ある生き方が出来ると繰り返し述べている。その観点から彼は戦後平和主義を批判したのである。

 彼の死から50年。彼の予言した通り彼の言葉が理解される時が来たのかも知れない。シアトルの暴徒と同じで中国との平和的な解決は有り得ない。日本人は死と向かい合う覚悟を固めなければならない時なのかも知れない。中国軍が相手か、それとも「安倍やめろ!」と叫んでいる輩が相手かは、分からないが。

 それは米国人も同じかも知れない。中国との戦争となれば最悪の場合、米本土も大きな被害を受ける。遠い中東で一部の兵士が闘っているのとは違う。

 と言うか米国でも徴兵制が廃止されてから50年。死と向き合う覚悟のある米国人が減ったのではないか?それが人間とは法と秩序がないと「レイプ、強盗、およびあらゆる種類の暴力行為」を行うのが当たり前の存在だと言うことを何時の間にか忘れさせた。

 それが今回の混乱の原因なのかも知れない。半世紀前の黒人暴動の時とは明らかに社会全体の反応が違う。

 米国憲法の起草者で第3代大統領のジェファーソンの銅像の破壊までが、彼が奴隷農場の所有者だったという理由で全米で行われている。また6月23日、ホワイトハウス外のデモ参加者は、シアトルを模倣しているように見える「自治区」を宣言。ラファイエットパークのデモ隊はとりわけ聖ヨハネ教会ー伝統的な「大統領の教会」を冒涜するため柱にスプレーで「BHAZ」の文字を示した。ここまで来ると米国という国の「国体」および法と秩序の全否定である。

 このような混乱を解消するには、どうしたら良いか?

 三島由紀夫は「東大を動物園にしろ!」と言った。つまり彼らが求める究極の自治を一旦は認めてやるのである。そうすれば東大構内は強盗、強姦、殺人が横行する無法地帯になる。その様子を見て初めて多くの一般人も今まで述べてきたような人間性の本質に対する思いを新たにする。

 そうなって初めて警察力等で「自治区」を取り戻すことに広い理解が得られる。実際に銃撃事件が起きて初めて、シアトル市長も「自治区」解放の方向で動き出したではないか?

 事実、トランプ大統領は6月20日、シアトルの「自治区」を連邦政府の法執行機関等を使って開放する意図は今のところない。それは「自治区」の中が酷い状況であることを国民が見ることで、極左の悪い部分を明らかにするためであるーと発言した。それが功を奏したと言えるように思う。

 しかしトランプ大統領は6月23日に組織化された暴徒が全米の彫像や記念碑を転倒させたり改竄することに対して大統領命令を出すと宣言。「これらの破壊者、愚か者、アナキスト、扇動者に長期の懲役刑を検討している。彼らは私たちの国を愛しておらず、記念碑を破壊している。」米国の「国体」と真のプライドを守り人生のベテランとして単なる反権威主義者と対峙しようとしているのだろう。林健太郎、三島由紀夫といった人々を思わせる。

 だがジェファーソンの銅像を壊すところまで来てしまった今の米国の思想的混乱に対処するには十分でないかも知れない。それどころか前記のようにワシントンDCにまで「自治区」が出来ている。トランプ政権は400人の州兵を活性化し、彫像を転倒させてきた破壊者からワシントンの記念碑を保護した。国防総省によると軍隊はまだ配備されていないが待機している。これらは国立公園警察をサポートするために使用できる。しかし6月27日現在ワシントンDCに2つの「自治区」が出来たままであり世界的有名ホテル等も閉鎖されたままになっている。

 更に同日トランプ大統領は特にシカゴ、ボルチモア、デトロイト、オークランドの市長、全民主党員、オバマとバイデンとともに、殺人その他の暴力犯罪を高率化したと非難。「シカゴはその一例であり、アフガニスタンよりも悪い。これらの都市は、地獄に住んでいるようなものだ。」と言った。この騒ぎを黙認ないし扇動している民主党の政治家は米国教員組合の支持で当選した人々が多いという。

 まさに学歴エリートの東大生による学校と社会秩序破壊と同様である。

 トランプ大統領は6月26日に、政府に彫像や記念碑に損傷を与えた人物を起訴し、連邦政府の支援をそれらを保護していない州や法執行機関に限定するよう要求する大統領命令に署名。逆にいうと「自治区」等の強制解放には未だに慎重なのである。

 そうであれば「東大を動物園にしろ!」=「シアトルを動物園にしろ!」=「アメリカを動物園にしろ!」で良いのではないか?歴史的銅像等だけを守り一般人に対する極左暴徒の暴力には少なくとも連邦の法執行機関や正規軍の投入が必要になっても暫くは静観する。何れにしても正規軍は国民の反感を恐れて介入したくない。

 そうすればシアトルが、そうであったように、アメリカ国民も人間の本姓の恐ろしさに気付き、死と向かい合う覚悟を取り戻し、極左暴力と闘おうとするのではないか?

 黒人暴動は全米で「自治区」を作ろうとし、また白人多数の農村にまで広がっている。だがシアトル以外の街では警察と市民が協力して「自治区」を作らせないようにしている。「シアトルを動物園にした」ことの効果かも知れない。そして農村地帯では地元住民がライフルで武装し暴徒からコミュニティを守ったりしている。

 考えようによっては西部開拓時代のような米国の原点帰りかも知れない。そのような米国の原点回帰こそが、移民制限にも見られるような、トランプ政権の歴史的使命なのかも知れない。


「GII REPORT」より転載
https://ameblo.jp/gii-report

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