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2020年大統領選挙、バイデン元副大統領の7つの死角

 2020年7月現在、各種世論調査で全米支持率及び接戦州支持率で民主党のバイデン元副大統領がトランプ大統領(共和党)に優位に立っている。実際、5月及び6月の資金調達額でもバイデンが強さを見せており、トランプは非常に苦しい立場に置かれている。

早稲田大学招聘研究員 渡瀬裕哉氏

早稲田大学招聘研究員 渡瀬裕哉氏

 では、バイデンの優位は決定的な状態となっているのだろうか。筆者が見る限り、バイデン優位は依然として砂上の楼閣であり、トランプ大統領の逆転の目は残されているように思う。

 バイデンがトランプ大統領に対し、11月の本選までに逃げ切りを達成するためには越えなければならないポイントが7つ存在している。今回は「バイデン・7つの死角」という形でそのウィークポイントを紹介したい。

 第1の死角は、バイデン自身の能力の問題である。バイデンは投票日時点で78歳の高齢であり、身体的・精神的な健康が危ぶまれる状態となっている。集会で隣に立っている妻と妹を間違えたり、突然呂律が回らなくなったこともあり、特に精神面での問題が度々指摘されている。ラスムセン社が6月29日に公表した世論調査では、バイデンが認知症を患っていることについて、有権者の38%、そして民主党員20%がそのように思っている。9月に予定されているトランプとの直接討論会において、バイデンが討論に詰まることがあれば、バイデンへの評価は急降下することになるだろう。

 第2の死角は、バイデンの親族に関するスキャンダルである。特に次男のハンター・バイデンのウクライナ問題や中国問題は喉に刺さった魚の骨のようなものだ。バイデンが事実上、次男のためにウクライナに介入したことを示唆する発言をした動画が残っており、共和党員は決してバイデンの弁明を信用しないだろう。また、中国に対してバイデンが40年間甘い対応を取り続けてきた過去、そしてハンターの中国での投資事業の存在は“対中弱腰”のレッテルを貼るには極めて好都合な材料となっている。これはバイデン一族がエスタブリッシュメントとして外交を私物化していることの証左であり、米国民からは厳しい目線が向けられることになるろう。

 第3の死角は、副大統領候補者の選定である。選挙戦の過程を通じ、バイデンは民主党内から女性・有色人種の副大統領候補者を選ばざるを得ない圧力を受けている。しかし、有力な女性・有色人種候補者には、行政手腕や経営手腕の実績を持つ人物がいない。バイデンが任期途中で欠けた場合、または2024年大統領選挙まで見据えると、上院議員や下院議員ではなく、政府の運営経験を持つ人物が本来副大統領候補者として相応しい。しかし、現状の選択肢に適任者は存在していない。共和党側が副大統領候補者のスキャンダルを含めて、当該人物の資質について攻勢をかけることはほぼ確定的である。

 第4の死角は、民主党側の著しい左傾化によるサイレントマジョリティからの反発である。現在、民主党は増大する左派系の小口献金の影響を受けて、共和党員はもちろん無党派層が受け入れがたい政策を容認しているように見える。不法移民への甘すぎる対応や、人種差別を巡る過激な抗議の容認などは必ずしも万人に受け入れられる政策ではない。また、増税政策、環境規制強化、医療保険強化などは接戦州の得票に対してマイナスの影響を及ぼすことになるだろう。

 第5の死角は、オバマゲート事件である。2016年大統領選挙期間中にオバマ政権が政府機関を用いてトランプ選対を監視していた事件は、司法省などから文書が公開されつつあり、ウォーターゲート事件並みの大きなスキャンダルに発展していく可能性がある。トランプの最初の国家安全保障担当補佐官であったマイケル・フリンに対する訴訟は取り下げられており、彼に対する偽証罪もFBIのでっち上げに近いものであったことが判明している。トランプ大統領を巡るロシアゲート疑惑もオバマ・バイデンの指示の結果として作り上げられた可能性も取りざたされており、ジョン・ダーラム検事が追加で本件に対する調査活動を展開している。トランプ大統領はワシントンタイムズ紙へのインタビューの中で、ダーラム検事がまとめつつある報告書が注目に値すると述べている。

 第6の死角は、トランプ陣営の立て直しである。トランプ陣営は好調な経済がもたらすマイノリティの低失業率を看板とし、民主党左派が推進する政策に対する社会主義批判で、2020年大統領選挙を乗り切るつもりであった。しかし、コロナウイルスは失業率上昇や財政拡大の結果をもたらし、当初のシナリオは事実上崩壊した。そのため、現在トランプ陣営は有権者に訴求するメッセージを探り当てるべく、様々な種類のCMを作成している。有効なメッセージが特定されることで、トランプ陣営は大幅に選挙キャンペーンを立て直すことができるだろう。

 また、9月には保守派の最高裁判事リストを公表することで、自らの岩盤支持層の活性化を図ることも予定されており、直近ではフロリダ州で劇的な活躍をしたスタッフを再雇用するなど人員の増強も図っている。そのため選挙の足腰の部分も徐々に再整備されていくことになるだろう。

 第7の死角は、国際問題の大きなイベントが発生することだ。たとえば、中国や北朝鮮と何らかの形で小規模な紛争に突入した場合、戦時の米国大統領を変えることは難しくなるだろう。中東からの撤退はトランプ・バイデン双方のコンセンサスであることから、今後、紛争が発生する場合は東アジアか中南米になってくるかもしれない。トランプは戦争や紛争を極力避ける傾向があるため、このケースがあり得るとしたら、偶発的なモノである可能性が高いので、具体的な事態を事前に予測することは困難である。

 以上のように、バイデン優位を揺るがす要素は多数存在しており、まだ勝負は完全に決まったわけではない。共和党側の攻め手は残されているため、今後の展開は益々注目に値するだろう。

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