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2020年秋、『世界の終末』は起こるか?―連邦検事解任の深層

 2020年6月19日、ウィリアム・バー検事総長は7月3日にニューヨーク南地区担当連邦検事バーマン氏が辞任し、米国証券取引委員会の会長であるジェイ・クレイトン氏が後任に指名されることを発表した。数時間後、バーマン氏は辞任せず、「大統領に任命された候補者が上院で承認されるまで」辞任しないと述べた。

吉川圭一氏

吉川圭一氏

 もともとバーマン氏は2018年1月、米国司法長官ジェフセッションにより法定期間120日間の暫定として任命された。2018年4月25日、ニューヨーク州南部地区の裁判官は満場一致で「空席がなくなるまで」満了した不確定な任期でバーマンを認めた。これには上院によって承認された大統領の指名候補者が含まれる場合と含まれない場合がある。バーマンは、その手続的な問題を言っただけなのである。

  しかし連邦検事の上院での承認には、その人物が連邦検事として担当する地区の州選出の上院議員による推薦が必要で、ニューヨーク州選出の上院議員は二人とも民主党の有力者なので、その推薦を得るのは非常に難しい。

そこでトランプとバーはバーマンを解任することにした。6月20日、バー氏はバーマン氏の要請によりトランプ氏に解雇され、副代理人のオードリーシュトラウスが代理人を務めることをバーマンに語った。その後、バーマン氏は直ちに辞任することに同意した。やはりバーマンは手続的な問題にこだわっていただけなのである。

 

 

 しかし、この時バーマンはトランプの個人弁護士ルディ・ジュリアーニをウクライナでの彼の活動に関連した犯罪の疑いで捜査していたと伝えられている。このジュリアーニが個人の資格でウクライナやトルコとの外交をトランプ氏から任され、色々な裏マネー等にも関係していたのではないか?—という問題は、ボルトン氏の回顧録で最も重要な問題として取り上げられており、そのためバーマン解任は、トランプ政権のスキャンダルを隠蔽するためではないかという疑いが持たれた。

  下院司法委員会委員長ナドラー氏は6月22日の夕方、バー司法長官に召喚状を提出し、元米国検察官バーマン氏の解任について証言を求める方針である。

  しかしバーマン氏の後任のシュトラウス氏は、バーマン氏と同様の方針の人物で、ジュリアーニに対する追及が止まるわけではない。さらに言うなら個人外交のようなことはトランプ政権の重要なテーマであるワシントン規制勢力打破に必要なことで、しかもバーマン氏はニューヨーク南部地区連邦検事になることにジュリアーニに反対されていた。逆に同じ会社の顧問をしていたこともあった。それで真に客観的な調査ができるだろうかシュトラウス氏による客観的な調査は、ジュリアーニに有利になるかも知れないが不利になる可能性もあるのである。

  むしろトランプ政権の真の目的は、クレイトン証券取引委員会委員長をニューヨーク南部地区担当連邦検事にすることの方にあったようだ。実はバーマン氏には、より上級の地位が用意されていた。それが前述のような手続き上の問題で混乱が起きただけのことをリベラル派メディアが大統領や司法長官の信用を落とすために大騒ぎにしたーと言うのが本当のところのようだ。

  クレイトン氏は在野からリーマン危機に対処した金融のプロである。モルガン銀行等と協力して多くの中堅銀行を破綻から救った。つまりリーマン危機とは何だったかを最も良く知る人材である。

  リーマン危機とは単に不動産担保証券が破綻しただけではない。レヴァレッジを大きくするため、それと石油の先物のような、よりリスクの高い金融取引とを結びつけた、いわゆるデリバッティブが、不動産担保証券の破綻により全体のレバレッジが逆転し、莫大な追加保証金が発生した。それが、あの超巨額な不良債権の原因なのである。

  それは半年前のベア・スターンズ社の破綻も同様だった。そのため2008年夏にはイラク戦争終結のお陰で石油の実需に余剰があったにも関わらず、石油価格の高騰が起きた。先物市場でのレバレッジの逆転が実体市場に反映されてしまったのである。

  つまりベア・スターンズ社の破綻以降もウオール街の金融機関は、リスクの高いデリバッティブの運用を止めていなかったのである。

  それをウオール街の金融機関は帳簿上の科目の付け替え等で何とかして表面化させないようにした。一種の「金融詐欺」である。

  だが米国の会計年度の終わる9月には、そのような隠蔽の限界が来た。そこでリーマン危機が起きたのである。

  そのような事情をよく知るクレイトン氏が証券取引委員会委員長よりウオール街を管轄するニューヨーク南部地区連邦検事になったのはコロナ封鎖で5月に原油価格がマイナスになったりしたためリーマン以上の不良債権をウオール街が抱えていて、それを強制的に消化させるためではないか?本来プラスの中で上下動する筈の先物が、マイナスになったのだから、その時に発生した追加保証金は計り知れないのではないか?

  6月22日に米国最高裁は証券取引委員会が金融詐欺を犯した者から利益を取り戻す能力を支持したが、SECの回収の試みは不正行為者の純利益を超えることはできず、被害者である投資家に利益をもたらす目的で行われるべきだと述べた。

 バーマン解任とは時間的に少し前後するが、このような判決が出ることは予想されていたのではないか?この最高裁の論理からすると、投資家に被害をもたらしていない科目の付け替え等は、SECの権限の対象外になる。

  だが連邦検事であれば不正経理等で問題に出来る。今のままでは隠されたままのリーマン以上の不良債権が、また今年の9月に爆発し、金融的な「世界の終末」になるかも知れない。

 それはトランプ氏の再選を絶望的にするのみならず、アメリカによる金融封鎖に苦しむ中国にも甚大な影響を与えかねない。そうなれば米中戦争という本物の「世界の終末」が起こりかねない。

 一刻も早くクレイトン氏をニューヨーク南部地区連邦検事にするべきだろう。彼であればウオール街の金融機関の隠蔽を暴き、不良資産の早期消化を促すことが出来るかも知れない。


「GII REPORT」より転載
https://ameblo.jp/gii-report

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