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サンダース失速の原因―世界的少子化問題と民主主義の限界

  今年の大統領選挙で民主党の候補者が勝つのは難しそうだった。アイオワやネバダの党員集会の投票参加者は、4年前と同じくらいでしかなかった。ニューハンプシャーは増えたものの、それは州全体の人口増加プラスαくらいだった。

 そのプラスαには仕掛けがある。ニューハンプシャーの予備選では、共和党支持者が民主党の予備選で投票しても構わない規則になっている。そこで自分が勝ち易そうな相手に民主党予備選で投票して欲しいと、トランプ氏が共和党支持者に呼び掛けていたのである。同じ作戦がサウスカロライナでも行われたという。

 つまり今年の民主党には勢いがないのである。これでは本戦で勝つのは、何れにしても難しいのではないか?

 ところがサウスカロライナから投票参加者が明らかに4年前より絶対的に増えている。スーパーチューズデーが行われた14州では、平均して1.5倍くらいになっている。

 バイデンの「奇跡の復活」の原因は、そこにある。単なる黒人の支持だけではない。

 なぜ投票参加者が増えたのか?色々なことが考えられるだろう。

 極左のサンダースではトランプ氏に勝てない。やはり穏健派のバイデンでないとトランプ氏を倒せない。そう考えた人が多かったという説が有力である。

 もちろんサウスカロライナの予備選挙の前後に、民主党の有力者が次々とバイデン支持を打ち出したこともあるだろう。ブティギッグやクロブッチャーが思ったより票が取れず、撤退してバイデン支持を表明したのも小さくないだろう。

 バイデンは負けると思われていたためか政治献金が不足していて、サウスカロライナで勝った後も、スーパーチューズデーが行われた州の殆どでテレビ広告をしていなかったし、事務所さえない州もあった。5億ドルを使ったと言われるブルームバーグとは大きな違いだが、それでも大勝している。

 それには次のような背景もあった。スーパーチューズデーで投票した人々は、中高年の人(45歳以上)が大部分であり、サンダースを支持するような若者は平均して2割未満だった。これではサンダースに不利に決まっている。

 バイデンの選挙集会では短時間でも最初に国家への忠義や宗教に関する話をする。サンダースの集会では、アメリカの歴史や経済や社会の問題点を指摘し、アメリカを悪く評価するようなことが多いという。いわば反米米国人の集まりである。他に多様性重視のため同性愛者やナチス的反ユダヤ思想を持ったイスラム系移民も多いという。ここまで来ると多様性ではなく異常性である。

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 実はサンダースが2月末に発表した税制等の改革案は、アメリカ中心の格差社会を解消できる可能性を秘めた優れたものだが、8年くらいの時間を掛けて少しづつ進めないと、ショックで米国中心に世界の金融と経済が破滅する可能性も高い。既に心臓発作で死にかけたことがある80歳近い高齢者が、8年がかりの計画でものを考えるだろうか?2、3年で進められたら前述のように世界が破滅する。

以上のようなことを考えると、やはり大統領に適切な人とは思えない。

 だからと言ってバイデンが大統領になったとしたら、アメリカ中心の格差社会を肯定して来た、既存のワシントン既成勢力の政治に戻るだけである。

 そのため若者がサンダースを支持して来た訳であるが、どうもサンダース支持者は、若者の中でも少数派だったようだ。それはスーパーチューズデーの投票結果を見れば分かるだろう。

 逆にアイオワやネバダは大きな州ではなく、党員集会というのは学級会のような形式で行われるので、少数の若者でも動員できれば、彼らの熱気に他の参加者が影響されるので有利にはなる。

 なぜサンダース支持者の若者が少数なのか?それが世界的少子化問題に繋がっている。

 経済が成熟しグローバル化や人工知能が発達し高学歴の人しか生き残れない世の中になれば、自然に人は子供を産まなくなり社会は少子化する。日本だけではない。欧米諸国も日本より先に白人は少子化していた。

 そこで移民を増やした訳であるが、それが社会的混乱を招いた。移民は、その地とは違った価値観を持つ。前述したナチス的反ユダヤ主義のイスラム系移民のようなものである。

 また米国では(黒人を含む)移民系の方が、宗教熱心で同性愛等には否定的である。それが多様性を重視するサンダースのネックになっている。移民のお陰で若者人口が多いように見えても、サンダース支持者になる人は多いとは言えない。

 サンダースの支持者は高学歴の白人エリートが多い。それと白人と同じような生活ができるようになったヒスパニックの一部と。

 サンダースの政策は学費無償化等、既にエリートである人や一家が、その地位から滑り落ちないようにする側面が強い。真に貧しく勉強がしたくともできなかった職人のような人々からは反感を買っている。それが彼が黒人の支持を得られない理由の一つではないかと思う。

 そして白人エリート系の熱心なサンダース支持者も、今まで述べて来たような理由から、自分達が少数派であり、いくら頑張っても自分達の意見を、政治に反映させて行くことは難しいと、しらけざるを得なかったようだ。自分達よりも年配者の投票の方が多いのだから。これは日本でも同じことが起こっている。詳しい人の話を聞くと欧州諸国も余り変わりはないらしい。何れにしてもスーパーチューズデー以降サンダース票は低減傾向を挽回できなかった。

 そこで4月8日とうとうサンダースは予備選からの撤退を表明した。だが、それは積極的な選挙運動を停止したに過ぎない。予備選の残された州で使われるマークシート式の投票用紙には彼の名前も残っている。彼の撤退で奮起した残された熱心な支持者が勝手連的に頑張れば、かなりの代議員を今後とる可能性もある。特に予備選の残された州は、サンダース支持者がバイデン支持者より多そうな州が幾つもある。初期に予備選から撤退した人々の取った代議員は、彼らがバイデンを支持してもバイデンの代議員にはならない。約150人ほどいる。つまりサンダースもバイデンも過半数が取れず党大会で話し合いが行われる可能性がゼロになったわけではない。それは無理でも多くの代議員が取れれば、党の政策綱領等に影響を持てる。

 特に2020年はコロナ問題の影響で3月下旬以降の予備選が延期になったりしている。これをコロナ問題の影響を無くすため11月の本選も含めて郵送投票形式にしようという意見が民主党中心に根強い。しかし共和党が非常に強く反対している。

 そこで4月7日に行われたウイスコンシンの予備選挙は大混乱状態になった。自分のためにコロナが蔓延しては申し訳ないというのが、サンダース撤退の表面上の理由だった。

 だが穿った見方をすれば今後の予備選ないし本選を郵送投票中心のものにする契機になればという計算もあったのではないか?

 実はスーパーチューズデーの1週間後に締め切られた郵送投票中心の海外在住者向け予備選挙で、サンダースは何とバイデンの倍の代議員を獲得しているのである!

 選挙に足を運ぶ気持ちにはなれないが郵送投票なら投票しても良いーサンダース支持者の多数の人の意識は、その程度の強さしか無くなっていたのである。

 これは民主党全体が同じなのだ。最初に述べたようにスーパーチューズデーまでは予備選に投票に来る人自体が少なかった。

 そこで民主党としてはコロナ問題を契機に今年だけでも本選も郵送投票中心にしたいのである。但し郵送投票というのは実は米国のことだから州による制度の違いも大きいものの投票所に足を運ぶよりも遥かに複雑な手続きが必要な場合が多いのだ。サンダース支持者のような高学歴エリート以外には却って難しい州も多いのではないか?

 サンダースは、そこに賭けているのかも知れない。予備選で出来るだけ多くの代議員を取るために…。

 民主党本体としては投票への熱意のない人や貧しくて学校に行けなかった移民系の人が支持者に多い。手続きが複雑な郵送投票は、むしろ不利な筈だ。そこで郵送投票用投票用紙が自動的に有権者に送られる仕組みの全国的な導入や、郵送投票サポート・ボランティアのような活動の立ち上げを民主党はしようとしている。

 しかし、そんなことをされると、どんな欺瞞を行われるか分からない。特に戸籍等がない米国では、長く住民票を置いていれば選挙権のない筈の不法移民のような人まで、地区選管の有権者名簿に載っているようなことがある。そういう人々の郵送投票を取り纏められたりしたら、共和党にとって脅威である。いや、アメリカ民主主義にとって脅威である。

 この郵送投票中心の制度―特に郵送投票サポート・ボランティアのような活動は、やらせない方が良いだろう。その方向で共和党は法廷闘争をしたりしている。

 ここまで書いてきて私自身が、しらけて来た。そこまでして「投票による民主制」とは、守らねばならないものだろうか?

 何度も述べたように世界中で少子化のために「投票による民主制」が中高年の人の意見が尊重されやすく、しらけた若者達が政治から退出している。表面上、若者が多いように見せかけるために移民を入れれば、混乱が悪化するのみである。

 こうして政治が未来志向でなくなる一方である。

 移民労働に頼らず人工知能中心の産業構造を一刻も早く実現し、そのようなハイテクを駆使できる高学歴エリートが年齢に関わらず、そうでない人々よりも多くの影響を持てるような政治。例えば一般人は今まで通り一人一票だが、エリートとして認められた人は一人10票というようなことを、まじめに考えても良いのではないか?

 移民その他の間違った多様性を排除し、アメリカで言うなら民主、共和両党の支持を超えたエリート中心の、まとまった優れた未来志向の政治を実現する。コロナ問題のお陰で、ロボット労働が増えたりしそうなので、このようなことは意外に早く視野に入って来るかも知れない。

 サンダースの失速は、そこまでのことを考えさせてくれる。そういう意味では非常に意義あるものだったように思う。


「GII REPORT」より転載
https://ameblo.jp/gii-report

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