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米民主党予備選挙結果を左右する選対本部長の手腕

 2020年も年明けとなり、米大統領選挙に向けた民主党の予備選挙が来月早々に開始される予定となっている。選挙戦を左右する要素として候補者自身の資質は当然に重要であるが、選挙全体を取り仕切る選対本部長の手腕も注目に値する。そこで、今回は各陣営の選対本部長のキャリアを概観してみよう。

 バイデン副大統領の選対本部長はグレッグ・シュルツ氏である。主にオハイオ州におけるオバマの選挙キャンペーンで実績を挙げてきた人物であり、2012年のオバマ再選後はバイデンの上級顧問としてホワイトハウス入りしている。バイデンの資金管理団体である American Possibilities PAC のエグゼクティブ・ディレクターを務め、バイデンとは10年以上の信頼関係によって結ばれていると言えるだろう。その他のスタッフも大手メディア、IT、フィールワークのキャリアを持つ人物が揃っており、本命としての戦いができる人材が揃っている。

 サンダース上院議員の選対本部長のファイズ・シャキール氏は、言論の自由を強固に主張する市民団体のアメリカ自由人権協会(ACLU)の全国政治局長を務めていた人物だ。ペロシ下院議長やハリー・リード上院議員の下で働いた経験を持つ、2016年にはサンダースの選挙活動に関与。左派系のアメリカ進歩センター副代表の経歴もあり、左派系メディア Think Progress を立ち上げた。16年大統領予備選挙時のメンバーも多いが、主要メンバーにミシガン・ウィスコンシンなどのラストベルトで活躍した面子を組み込んでいる。やはり左派系本命候補として強力な布陣が整っていると言えよう。

 ウォーレン上院議員の選対本部長のロジャー・ラウ氏はマサチューセッツ州の選挙キャンペーンでキャリアを積んできた人物だ。同州出身のジョン・ケリー上院議員のインターンとしてキャリアをスタートし、同議員の広報官を務め、その後2004年大統領両選挙にスタッフとして関与。その後もウォーレンを含めた同州民主党候補者の選挙活動に従事してきた。初期予備州のニューハンプシャー州に力を注ぐスタッフ陣容になっているものの、他の有力陣営からすると主要スタッフの格に若干問題を抱えており、最近の低迷は選対の地力の相対的な弱さが現れているように思われる。

 クロブチャー上院議員の選対本部長のジャスティン・ブオエン氏は04年のケリー陣営の現場組織責任者としてキャリアを開始し、クロブチャーとは06年の上院議員選挙からの付き合いとなる。08年のエドワーズ選対を務めた。エドワーズはアイオワ州では一定の強さを示したため、クロブチャーもそこまで粘りきって細い逆転の道を探す戦略だろう。ブッカー上院議員の選対本部長のアディス・デミッシーはケリー選対を皮切りに、ブッカー上院議員選挙、カリフォルニア州知事選挙などで辣腕を振るい、Google の政策顧問を務めた人物だ。彼のキャリアは同氏の資金集めに一定の寄与をしているものと想定される。ブルームバーグは巨額の資金を投じ急ピッチで全米規模の選対を構築中であり、まだ論評するに値しない。彼らの本選は3月のスーパーチューズデーであり、2月に入るころには全体像が見えてくるはずだ。

 最も異色を放っている人物はブティジェッジ・サウスベント市長の選対本部長であるマイク・シュミュール氏だろう。ブティジェッジの学友であった彼には、市長選挙・下院議員選挙での全米レベルの選挙経験はない。しかし、彼は一時期オバマ選対のフィールド戦略を構築していた270ストラテジーというコンサル会社の副代表であったこともあり、ブティジェッジ選対の豊富な資金力を生かし、オバマ陣営などに所属していた選対メンバーを揃えることに成功している。特に予備選挙初期州とラストベルトに関する選対の陣容には厚みがある。

 以上のように、民主党有力陣営は各陣営ともに特色ある人材を揃えているが、総じて言えることは、選対本部長には長年の信頼関係がある人物を選んでいるということだ。そのような人材を確保できなければ大統領選挙に立候補する資格はないということだろう。また、各陣営ともに本選を見据えたラストベルトでの選挙経験を持つスタッフを主要メンバーに登用していることも非常に面白いポイントだ。

 迎え撃つトランプ大統領の選対本部長はブラッド・パスケール氏、トランプ・オーガニゼーションからSNS専門家として活躍してきた人物がその取りまとめ役を担っている。もちろん現職大統領として従来側の組織選挙のための人材も取り揃えているが、非常に特徴的な人事だと言えるだろう。2020年大統領選挙本選は両陣営の選対本部長がどのような選挙プランを展開するのかも見所となってくる。

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