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ピート・ブティジェッジという社会実験は成功するのか

 米国大統領選挙に向けて、保守派が支えるトランプ大統領とリベラル左派が支える民主党候補者らの亀裂が深まり、米国人は自らの国がアイデンティティー政治によって徹底的に分断されていくプロセスを受け入れざるを得ない状況に陥っている。

 トランプ大統領が保守派にアピールする言動を繰り返す中、民主党側はエリザベス・ウォーレンやオカシオ・コルテスがリベラル派にアピールする言動で無為に応酬する不毛な状況が継続している。両者の対立は徐々にエスカレートしていき、最近ではトランプ大統領の弾劾調査にまで発展した。弾劾調査の直接的要因はウクライナをめぐる問題であるが、弾劾をめぐる背景にはそれ以上の根深い対立関係があることは誰が見ても明白だろう。

 一方、中道派のバイデン元副大統領がウクライナ疑惑で信用を失い、政治活動資金にも問題を抱え始めている中、米国の左右どちらにも偏り過ぎていない有権者が新たに別の候補者を模索する動きをしてもおかしくない状況となっている。その際、白羽の矢が立つ可能性が高い人物がインディアナ州サウスベントのピート・ブティジェッジ市長である。

 37歳の若さ、アフガン従軍経験あり、多言語を操り、マッキンゼー出身、LGBT、移民の子、キリスト教徒、ハーバード大卒、そして市長経験を持つという異色のプロフィールは実に興味深いものがある。ブティジェッジは多くのアイデンティティーを持つことで、様々な特性を持つ有権者に対してメッセージを発信することができる点に強みを持つ。ブティジェッジは有色人種ではないものの、オバマ大統領に極めて近いブランドイメージを持っていると言えよう。

 2019年10月段階で、ブティジェッジは豊富な資金力を背景とし、予備選挙初戦にあたるアイオワ州では堅固な地盤を形成しつつある。同州におけるブティジェッジの支持率は着実に伸びてきており、世論調査上は2位または3位として首位に挑戦できる立場を築いている。ブティジェッジが同州で勝利した場合、彼は一気に民主党側予備選挙のスターに駆け上がっていく可能性がある。

 また、現段階で全米で支持率を向上させた場合、早い段階で激しいネガティブキャンペーンの対象となるため、予備選挙が始まるまでの間は地味に地盤形成に努めるやり方は選挙戦略上も冷静な判断を行っていると推察される。

 ブティジェッジの政策はやや中道左派寄りとされているが、保守的な有権者が多いアイオワ州で勝利した場合、彼が米国のやや保守的な中道に属する有権者にも訴求する可能性が高い候補者であることが確認されることになる。そして、ブティジェッジは左右に分断された米国を新しい形で統合するモデルになり得る存在になる候補者であり、米国政治に新しい息吹をもたらす人物の一人と言えるだろう。

 オバマ元大統領は「米国の統合」を主張したが、むしろ米国をバラバラな状態に追い込む左傾化に拍車をかけてしまった。今回の大統領選挙において、この状況を収拾できる可能性がある民主党候補者はブティジェッジのみであり、彼がオバマと同じ轍を踏むかどうかをしっかりと選挙戦で見極めていきたいと思う。

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