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    渥美 堅持
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    坂東 忠信
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    遠藤 哲也
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    蒲生健二
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    服部 則夫
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    石井 貫太郎
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    河添 恵子
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    宮塚 利雄
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    中澤 孝之
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    丹羽 文生
    拓殖大学海外事情研究所准教授
    太田 正利
    太田 正利
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    佐藤 唯行
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    新宿会計士
    新宿会計士
    政治経済評論家
    山田 寛
    山田 寛
    元読売新聞アメリカ総局長

    米中協議、知的財産権をめぐる2つの視点

     米中関係は急速に対立の度合を深めており、両国による報復合戦の火花が散っている。しかし、現在の米中関係がトランプ政権発足時から予定されていたものと単純に想定することは早計であろう。このような急激な変化は徐々に米国内の認識が修正されてきた帰結として起きたと捉えることが妥当だ。

     米中協議の焦点は知的財産権をめぐる諸問題にある。しかし、米中協議における知的財産権に関する取扱いは「経済」と「安全保障」の2つの側面を持っており、局面に応じて強調されてきたものが異なっている。米中協議という表面上の文脈が同じであっても、その内容の質的変化を知ることは今後を予測するために極めて重要である。

     まず「経済」の側面であるが、米国にとって知的財産権に関するライセンスフィーは急速に貿易黒字が増加している輸出品目である。したがって、中国との間の貿易不均衡を是正していくためには避けて通ることができない話題だ。

     米国が知的財産権を輸出戦略の柱として位置づけた時期はブッシュ政権当時のPRO-IP法(包括的模倣品対策強化法)の制定時に遡る。この法律によって、“知財皇帝”の別称を持つ知財戦略全体を扱うIPEC(知的財産執行調整官)のポストが創設されることになり、オバマ政権時代にも知財輸出は重要な経済政策として捉えられてきた。トランプ政権もそれらと同様に同ポストに政権発足早々に経験豊富な専門家を任命したことからも、知財をその経済戦略の中核として重視していることを伺い知ることができる。

     中国に対する知財の強制移転や知財侵害の模造品の是正などは、これらの経済的観点からの要求と言えるだろう。知財は米国の「経済」における中長期的な稼ぎ頭なのだ。(これに加えて、米中協議当初に強調されていた、航空機、金融、農業などの貿易促進は、トランプ大統領にとって魅力的な果実であったと思う)。したがって、初期の米中貿易交渉の文脈は「経済」の側面が明らかに重視されていた。

     一方、トランプ政権にとって「安全保障」を知財と結びつける認識は政権発足当初はそれほど強くなかったように見える。もちろん筆者が交流している保守派の一部の人々や安全保障の専門家らは中国のサイバー攻撃を含めた知財の窃盗行為に警鐘を鳴らし続けていたことは事実である。しかし、それらの声が特定のコミュニティの枠を超えて、米中関係のメインストリームの文脈まで拡大したのはごく最近のことだ。

     具体的には、中国が明確な脅威だという問題意識はトランプ政権発足1年目の夏過ぎから徐々に共和党保守派内部で専門家以外の人々にも認知されていったように思う。特に中国の北朝鮮問題に対する非協力的な態度、そして同時期に制定された国家情報法に見られた野心が米国を刺激したように思う。それらは防衛産業のサプライチェーンの見直しを含めた安全保障戦略全体に影響を与えたと言えるだろう。

     そして、「経済」と「安全保障」のバランスが明確に反転するきっかけは昨年9月に起きた北京におけるキリスト教会弾圧、その際に行われた聖書に対する焚書であったように思う。聖書が燃やされる映像がSNSで大量拡散されたことで、連邦議会は中国におけるキリスト教弾圧などに関する公聴会を開くことになり、その翌月にはペンス副大統領がハドソン研究所で対中強硬演説が行われた。

     この段階で中国は共和党保守派から完全に「敵」として認知されるようになり、今年の春にもキリスト教者を中心にワシントンD.Cで米中協議に人権侵害(宗教弾圧)を盛り込むようシンポジウムが開催されている。これらの共和党内における重要な政治勢力であるキリスト教右派の政治的援護を後ろ盾として、ネオコン系や安全保障関係者は米中協議直前まで中国のサイバー攻撃(スパイ行為)と知的財産の窃盗を結び付けた論稿公表などの政策キャンペーンを展開してきている。

     5月初の米中協議の文脈で折り合わなかった背景として、米国が掲げる知的財産に関する問題提起が「経済」ではなく「安全保障」に移行してきたことが影響したであろうことが推測される。経済の文脈だけであれば既に経済大国となった中国は飲み込むことができたであろうが、安全保障の文脈の法改正などは絶対に受け入れることができなかったのだろう。

     協議決裂後に実施されたファーウェイに対する制裁だけでなく、さらなる制裁候補企業としてドローンや監視カメラなどの情報取得・人権侵害に使用されている産業に属しているものばかりであることからも、それらのことは伺い知ることができる。

     では、「安全保障」の側面が強くなった米中協議が「経済」の側面が強くなる形に戻ることは絶対あり得ないのだろうか。その答えは極めて難しいが、可能性はゼロではないと思う。トランプ政権は異なる動機を持った関係者が政権内部に存在しており、それらの勢力関係の変化が政策の変化として表出するように見受けられる。来年になれば大統領選挙が近づくために安易な妥協は益々困難となるため、米中ともに「経済」に関する側面について年内に片付けたい誘因を有している。そのため、それらに一定のケジメを付けた上で、解決不能な「安全保障」に関する睨み合いを改めて継続するシナリオを完全に棄却することはできない。

     いずれにせよ、米国も一枚岩ではなく同国内での勢力構造の変化について仔細に観察し続けていくことは極めて重要だ。

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