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トランプ大統領の逆襲―ヒラリー逮捕はあるか?

 FOXが4月18日に配信した“Media-Democrat complex whines over AG Barr’s press conference on Mueller report release”によれば、バー司法長官は同日に記者会見を開き、ロシア疑惑に関するムラー特別検察官報告書の、ほぼ全文を公開した。この記者会見の要点は、

1、2016年の米国大統領選挙を巡ってロシアとトランプ陣営との共謀はなかった。

2、コミー前FBI長官の解任等のトランプ大統領の行為は司法妨害には当たらない。

の二点である。これは3月25日に発表された内容だったが、特に2がバー司法長官の判断だったこともあり、全文の公開等が要求されていた。但し、大陪審関係、国家機密関係、進行中捜査関係の部分は編集され伏せられていた。日本で言う“ノリ弁”である。

 そのためか同記者会見後、米国ではトランプ弾劾の声が民主党を中心に高まった。

 だが、それに対して保守系WSJが4月30日に配信した“Impeachment Could Be a Trap―for Democrats”は非常に興味深いことを指摘している。それはトランプ氏本人が民主党が自分を弾劾裁判に掛けることを望んでいるのではないか?―というものである。つまり自分を“罠にはめられた被害者”に仕立てることで、2020年の大統領選挙を乗り切るのが彼の作戦ではないかというのである。

 確かに今の米国議会では下院で民主党が過半数を握っており、そのため弾劾裁判を始めようと思えば可能ではある。しかし最終的には上院で3分の2の多数でなければ大統領は弾劾されない。今は上院では共和党は54議席を持っているので20人以上が裏切らなければ弾劾はない。そして弾劾裁判を始めれば国政が停滞し国民生活にも悪影響が出る。例えば4月末時点でトランプ氏と民主党との間で2兆ドルものインフラ整備予算に関する協力が出来かかっているが、そういうものも吹き飛んでしまう。

 そのため1998年のビル・クリントン弾劾裁判を行ったために、かえって共和党は国民の不信を買い、ほぼ同時期に行われた中間選挙で下院で議席を減らした。(補足:戦時中等の特殊事情もなく中間選挙で大統領与党が議席を増やしたのは、アメリカの歴史で唯一と言っても良い)。そして今の民主党の指導者達は、この時は既に政治家だった。あの時の共和党の失敗を繰り返すことを彼らは望まないだろう。

 というのがWSJ前掲記事の内容であり、面白いことにリベラル系ワシントン・ポスト紙も4月25日に配信した“Democrats, there’s a better strategy than impeachment”の中で、ほぼ同じことを述べており、しかも民主党内で弾劾に積極的な議員は2020年大統領選に立候補予定の人が多いので、つまり弾劾問題は民主党の政治家にとっても2020年大統領選挙のための手段と化しているのである。

 ところで保守系ワシントン・タイムスが4月13日に配信した“Clinton loyalists exploited Obama’s FBI to spread Russia conspiracy stories about Trump”によれば、そもそもトランプ氏とロシアとの選挙共謀とは、2016年夏頃ヒラリーの関係者達が言い出し、その当時の司法省やFBIを動かして、トランプ選対を盗聴したところから始まっている。(補足:これに関しては拙著『救世主トランプー“世界の終末”は起こるか?』に詳しい)。このプロセスが不正でなかったかどうかを調査すると、バー司法長官は議会で証言している。

 またWashington Examinerが4月23日に配信した“Mueller report contains claim Russia taped Bill Clinton having phone sex with Monica Lewinsky”によれば、ロシア人サイムズ氏とクシュナー氏が2016年8月に面談した際、サイムズ氏はビル・クリントンが女性と不適切な会話をしている電話をロシア政府が盗聴した録音があると言ったそうである。それは当時のスター独立検察官の報告の中でも言及されている。そのためかクシュナー氏は新しい話ではないとして相手にしなかったそうであるが、このようなクルントン家に不利な重大な話も、ムラー報告書の中には出て来るのだが、やはり“ノリ弁”にされているという。“ノリ弁”の大部分は大陪審関係、国家機密関係、進行中捜査関係が理由である。

 そのためかThe Hillが5月14日に配信した“Prosecutor appointed by Barr poised to enter Washington firestorm”によれば、バー司法長官は上記のような諸問題の調査を、民主、共和両党から信任厚く政治的に中立なコネティカット州担当連邦検事ダラム氏に支持した。実は既にユタ州担当連邦検事ヒューバー氏が、それを部分的に担当して“捜査進行中”なのだが、ヒューバー氏が重要証人を取り調べない等、共和党から不信の声が上がっていたための新人事だった。今後ダラム氏によってクリントン家の疑惑が徐々に解明されて行くのかも知れない。

 逆に前述のような理由で民主党の中にも“ノリ弁”を剥がしたい議員はおり、バー氏は5月中旬に議会での証言を求められている。ところがThe Hillが5月18日に配信した“Democrats are running out of stunts to pull from impeachment playbook”によれば、バー氏は共和党多数の上院では証言したものの、民主党多数の下院での証言は拒否した。しかし、それは民主党が、民主党が議員ではなく専門スタッフによる質問を行おうとしたためであり、これは今までの慣例からして拒否するのが当然だった。そこで民主党は、バー氏に対して召喚状を送り、それを拒否したら議会侮辱罪に問うと恫喝した。しかし大陪審関係の情報の公開させる権限は米国議会にもなく、この民主党の一連の言動自体が、法的に間違っていたのである。この記事の中でもペロシ下院議長は弾劾に反対し続けていると述べられている。

 そしてWSJが5月22日に配信した“Trump Walks Out on Pelosi, Schumer”によれば、このペロシ氏(および上院民主党のシューマー氏)とトランプ氏との間で同日に行われた、前述の2兆ドルのインフラ整備に関する会談が決裂した。それは、バー氏の召喚状問題以外にも多くのトランプ氏関係者に下院民主党は召喚状を出していて、トランプ政権は拒否し続けて来た(これに関しては連邦地裁レベルでは召喚に応じるべきという判断が出ているものもあるにはある)。このような不毛な対立を止めなければ、インフラ整備の協議には応じられないというのがトランプ氏の主張であった。

 ところがThe Hillが同日に配信した“Trump ‘crying out’ for impeachment”によれば、ペロシ氏はトランプ氏の行動を“民主党に弾劾手続きを行わせようとするトランプ大統領の罠”であるとして、やはりトランプ氏弾劾には慎重な姿勢を示した。

 まさにWSJ4月30日配信記事を思わせるではないか?トランプ氏が多くの自身の関係者への召喚に反対しているのも同じ理由なのかも知れない。

 そしてWSJが5月23日に配信した“Trump Gives Barr Authority to Declassify Information About Russia Probe’s Origins”によれば、トランプ氏は訪日の2日前の同日バー司法長官に対し、ロシア疑惑関係の資料の国家機密扱いを解除する権限を与えた。同時にCIA,FBIにも協力を支持した。つまり“ノリ弁”の中身を明らかにし、また今までトランプ政権にも隠されて来たオバマ時代の情報等を明らかにすることで、クリントン家の不正の追求に、ついに本腰を入れ始めたのである。

 このままなら何れヒラリー逮捕が見られるかも知れない。そして何れにしてもトランプ氏が弾劾される可能性は、非常に低く、その手続きを民主党が行うことは、トランプ再選を確実にするだけであろう。

資料:FOX” Five takeaways on the Russia investigation post-Mueller report”5月16日

 有権者の32%がバー司法長官のムラー報告書の取扱を認めないが46%が認めている。(特に共和党支持者の間では23%から41%に劇的に改善した。民主党支持者の間では82%から55%に激減。)

 

 

 バー司法長官はトランプ大統領のために隠し事をしていると思う人45%、思わない人33%。

 

 

 FBIがトランプ選対の盗聴を始めた時、法を破ったと思う人は総計で58%。

 

 

 トランプ弾劾に賛成の人42%。反対50%。(民主党支持者では70%、共和党支持者では10%)

 

 

 民主党が不当にトランプを攻撃していると思う人41%。思わない人49%。

 

 

 医療保険と国境警備を重視する人は約4割同士なのに対し、選挙へのロシア干渉排除を重視する人は約2割。


「GII REPORT」より転載
https://ameblo.jp/gii-report

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