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ロシアゲート問題の6つの敗者は誰か

 いわゆるトランプ米大統領の“ロシアゲート”を捜査していたモラー特別捜査官の報告概要が提出されたことで、ロシアゲート問題自体は一旦収束することになりそうだ。筆者はこの捜査は政治的意図を持った捜査だと思っていたので、もう少し疑惑が残る形での決着となるかと思ったが、米国の民主主義や司法の健全性が証明される形となって良かったと思う。

モラー特別捜査官の報告によって生まれた政治的敗者は5つ。

 第1の敗者は米民主党である。民主党はトランプ大統領に関する司法妨害などの嫌疑についてしつこく調査するだろうが、トランプ大統領を追い詰めるはずのジョーカーを手放したダメージは計り知れないことになるだろう。従来までの疑惑を追及してきたことは一体何であったのか、全幅の信頼を置いてきたモラー特別捜査官の報告書の正当性を疑う行為は言論の履歴を大事にする米国においては後々まで残る大失態となるはずだ。(もちろん、トランプ大統領のモラー捜査官を貶める発言も問題として残るが、トランプ大統領の矛盾した発言に対する防御力は極めて高い)。

 第2の敗者は大手リベラルメディアである。リベラルな大手メディアは様々なリーク情報としてロシアゲート問題を紙面上で盛り上げてきた。トランプ大統領は事あるごとに「フェイクニュース」として批判してきたが、それらの情報源が明確ではない報道の全ての信憑性が失われることになった。元々保守派の人々は大手メディアの報道は信じていないが、今回の結末はリベラルまたは中立的な視聴者・読者からの信頼を失うには十分であろう。

 第3の敗者は米国内の反ロシア派の識者たちである。といっても、これは米国の外交安全保障関係者全般に言えることであり、ロシアとの関係を改善しようとする人達たちはほとんどいない。ロシアゲート問題は米国内のロシアに対する広範な不信を背景としており、疑惑に関する根深い偏見を生み出し続けてきたと言える。今回の件を経て、米国内の反ロシア派の影響力は低下し、従来までの外交安全保障政策の転機となる可能性がある。

 第4の敗者はロシアと中国などの米国に敵対的な国である。ロシアについては米大統領選における現職大統領陣営との共謀という壮大なフィクションが偽物であったことが露呈し、その陰謀論的な脅威が“張り子の虎”であることがバレてしまった。また、中国に関しては米国の対ロ脅威認識が低下することによって、トランプ政権が対中国に政治的リソースを集中できる環境が生まれてしまう可能性がある。したがって、ロシアと中国の双方にとっては不都合な結果と言える。

 第5の敗者は(米連邦捜査局)FBIを始めとした行政機関である。FBIはロシアゲート問題に多大なリソースを注いで税金の無駄遣いを積み重ねてきたことになる。また、コミー前FBI長官らの政治的発言も含めて、共和党支持者からの信頼を失うものとなってしまった。元々米国では行政機関に対する信頼性は日本と比べて相対的に低いが、それが更に深刻な状況になっていくだろう。

 そして、第6の敗者はオバマ前大統領であろう。ロシアゲート問題はオバマ前大統領在任期間中の問題であり、ロシアの選挙干渉を未然に防止することができなかったことは不名誉なことである。オバマ前大統領はロシアによる選挙干渉自体は把握していたとされており、それを放置した理由が逆に問われることになるだろう。オバマ前大統領の米国史における評価は厳しいものになる。

 トランプ大統領と共和党は本件に対して従来までの守勢を巻き返す動きを始めることになる。今後の米国政治の展開に注目していきたい。

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