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2020年大統領選挙に向けてマイノリティー票を狙うトランプ陣営

トランプ米大統領による国境の壁をめぐる非常事態宣言の動向をめぐって、昨年末から今年2月半ばまで米国政治に関する話題が独占された状況であった。メディアは政府閉鎖によってトランプ大統領の支持率が低下したことに着目し、彼が壁に関する幾つかの妥協をしたことで民主党下院に対して壁をめぐる戦いで事実上敗北したと強調した。

 ただし、大統領選挙の約2年前の現段階における大統領の支持率低下は元々それほど気にする必要はない。実際、トランプ大統領の一般教書演説後、同演説が視聴者に高く評価されたことを受けて大統領支持率は政府閉鎖前の水準にまで回復している。

 一方、2020年大統領選挙を見据えてトランプ政権は約2カ月の間に重要な布石を幾つか打ち始めている。そこで、今回注目したい点は、マイノリティーグループを民主党から引き離し、自らの支持母体として再編するための試みである。選挙戦という観点から見た場合、中長期的な変化を及ぼす要因はマイノリティーグループ内の支持先の変更である。トランプ政権は明確な狙いを定めて3つのマイノリティーグループに強烈なアピールを実施している。

 1つ目のグループはユダヤ教徒である。ユダヤ教徒は伝統的に民主党支持を標榜してきた経緯がある。しかし、昨年の中間選挙で民主党から初のムスリムの連邦議員が誕生し、同議員は反ユダヤ主義的な言動を謝罪する事態に追い込まれている。また、新時代の民主党の象徴として持て囃されているオカシオ・コルテス下院議員も反ユダヤ主義活動との関係が指摘される事態となっており、民主党とユダヤ教徒の間に隙間風が吹く可能性が出てきている。トランプ大統領はこの政治的環境変化を巧みに利用し、一般教書演説のハイライトで米国とユダヤ社会の繋がりを強調する大演説を実施して見せた。そして、上院共和党はシリア・アフガンから撤退に反対する決議に、イスラエルに対するボイコットなどに反対する決議を盛り込み、民主党上院の大統領候補者らに同決議に反対させることでユダヤ教徒の間に亀裂を生じさせることに成功している。

 2つ目のグループはヒスパニックである。トランプ大統領は良好な経済・雇用状態を強調するが、マイノリティーの雇用改善について特に熱心にアピールしている。そのため、同大統領は働き盛りの男性ヒスパニックからは一定の支持を得る傾向がある。また、ヒスパニック系住民自体も人口動態が既に変化しつつあり、その約3分の2は米国生まれとなっている。そのため、トランプ政権の不法移民に対する姿勢はヒスパニックからの支持低下にあまり繋がっておらず、むしろ政府閉鎖中にトランプ大統領は南部のヒスパニック牧師を訪問して保守的なヒスパニック層の支持固めなどが行われていた。更に、ベネズエラのマドゥロ政権に対する強硬姿勢及び社会主義への対抗姿勢は、フロリダ州に多いキューバ系ヒスパニックから強い共感を得るものとなっている。

 3つ目のグループはアフリカ系アメリカ人である。トランプ大統領は昨年末に大統領令でインナーシティなどのスラム化した地域の都市再建に関する会議を創設し、同地域へのインフラ整備などに力を入れる姿勢を示している。また、一般教書演説においても強調された刑務所改革は、昨年夏にインナーシティで活躍する黒人牧師などからの支持を獲得した内容であり、娘婿のクシュナーに取り組ませた重要プロジェクトでもある。もちろん良好な経済環境における雇用改善はヒスパニックと同様である。

 以上のように、トランプ政権は、ユダヤ教徒、ヒスパニック、アフリカ系アメリカ人、の3つのグループに焦点を絞った政策及びメッセージ展開に力を入れている。これらのアプローチは一時的な全体支持率の浮き沈みよりも信頼できる票の動きとして選挙戦本番に決定的な役割を果たす可能性が高い。トランプ政権は2020年を見据えた大統領選挙に向けて手堅い布石を打ち始めていると言えるだろう。

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