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親中派勢力の失望、「応援団」やめた経済界

米中新冷戦 第1部「幻想」から覚めた米国 (2)

 昨年11月、米経済界の重鎮がシンガポールで行った演説が様変わりした米中関係を象徴していた。

胡錦濤中国国家主席(当時、右)とヘンリー・ポールソン米財務長官

2008年12月、北京の人民大会堂で胡錦濤中国国家主席(当時、右)と会談するヘンリー・ポールソン米財務長官(当時)(UPI)

 「中国の経済開放が遅いため、米経済界は(中国の)擁護者から懐疑派に変わり、これまでの対中政策に反対さえするようになった」

 こう語ったのは、米金融大手ゴールドマン・サックスの会長兼最高経営責任者(CEO)を経て、ブッシュ(子)政権で財務長官を務めたヘンリー・ポールソン氏。ゴールドマン・サックス会長時代、中国を70回以上訪問し、対中投資に力を注いだ米経済界屈指の中国通で、財務長官としては米中の経済閣僚らが一堂に会する「米中戦略経済対話」を立ち上げた人物だ。

 冷戦時代、米国が中国に接近したのは、主にソ連の脅威に対抗するという安全保障上の理由からだった。そのソ連が消滅した時、対中関与政策の意義が問われたが、その継続を熱烈に支持したのが中国市場への進出を狙う経済界だった。中国の経済発展は政治の自由化ももたらすという「幻想」は、共産党一党独裁国家とのビジネスを正当化する上で好都合だった。

 だが、ポールソン氏が指摘したように、経済界では今、一向に改められない中国の不公正貿易慣行や知的財産侵害などに失望が広がっている。経済界が今までのように中国を積極的に擁護しなくなったことは、米政府を強硬路線に傾かせる大きな背景になっている。

 経済界とともに、関与政策の強力な支持者となってきたのが、対中コンサルタント業務でお金を稼ぐヘンリー・キッシンジャー元国務長官ら元政府高官と、中国ビジネスを展開する大手企業から資金提供を受けるシンクタンクだ。過去半世紀近くにわたり、関与政策が維持されてきたのは、中国マネーが直接または間接的に米国の政策コミュニティーに流れ込んでいたことも大きい。

 だが、この状況にも変化が出ている。米国の対中政策を長年ウオッチしてきたジェームズ・マン元ロサンゼルス・タイムズ紙北京支局長によると、関与政策を支持する構造が「崩れ始めている」という。

 その一例が、フーバー研究所とアジア・ソサエティーが昨年11月に発表した報告書だ。米国内での中国の影響力拡大に警鐘を鳴らす内容だが、注目すべきは、1971年のキッシンジャー氏の極秘訪中に同行したウィンストン・ロード元駐中国大使や、オバマ政権で対中融和路線を主導したエバン・メデイロス元国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長ら、これまで関与政策を支持してきた有力者が報告書をまとめたワーキング・グループに名を連ねていることだ。

 対中関与派の“転向”について、ワーキング・グループの一員で中国の産業スパイ活動に詳しいジェームズ・マルベノン氏は、ワシントン・ポスト紙に「中国が国際舞台で台頭するのを手助けする試みは、大失敗に終わったという全世代の中国専門家たちの幻滅を示すものだ」と語った。

 「経済的な鉄のカーテン」が下りつつある――。ポールソン氏は米中関係の先行きをこう悲観したが、米国内に中国を擁護する「応援団」がいなくなりつつあることは、米中の対立が一時的なものではなく長期に及ぶことを予感させる。

(編集委員・早川俊行)

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