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    安東 幹
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    坂東 忠信
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    古川 光輝
    古川 光輝
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    細川 珠生
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    井上 政典
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    伊勢 雅臣
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    河添 恵子
    河添 恵子
    ノンフィクション作家
    宮本 惇夫
    宮本 惇夫
    企業・経営
    中村 仁
    中村 仁
    元全国紙経済記者
    石平
    石平
    評論家

    「骨」がその人の歴史を語り出す時

     米TV犯罪捜査ドラマ「ボーンズ、骨は語る」をご存知だろうか。12シーズン続いた番組で米国では昨年3月、放映が終了した。法人類学者のテンペランス・ブレナン女史が米連邦捜査局(FBI)のシーリー・ブース特別捜査官を助け、「人骨」となった人間の身元を解明し、犯人を捜すというストーリーだ。ブレナン博士の「人は他者を騙すが、骨は騙さない」というセリフはこのシーズンの主要テーマを端的に物語っている。ブレナン博士の仕事は身元不明の死体の死因を調査していくことだが、殺人か事故死か、殺人とすれば、犯行に何が使用されたかなど、コンピューターによる3次元映像技術などを駆使してを解明していくプロセスは面白い。

    400

    現代のシャーロック・ホームズ、ヴァルター・パーソン教授(インスブルック医科大学法医学研究所の公式サイトから)

     少女の死体が発見された。ブレナン博士は白骨となった人骨を調査していく中で、彼女が性的虐待を受けたことがあったことを見つけ出す。骨にその人の一生が刻印されているという。現代の最新法医学技術を駆使すれば、これまで未解決だった事件が解明されるわけだ。

     ブレナン博士は米TV番組の主人公だが、実際、ブレナン博士のような人間がいる。オーストリアのインスブルック医科大学の法医学分子生物学者のヴァルター・パーソン教授(Walther Parson、52歳)だ。新しいDNA鑑定方法を見つけ、FBIのDNA鑑定システムの問題点を指摘したことから、FBIから一時期、危険人物扱いされ、監視対象となったが、最終的には同教授はFBIの強い要請を受けて捜査活動を支援することになった、というキャリアの持ち主だ。

     パーソン教授の法医学関連実験所は世界に5つしかない実験所の一つといわれ、関係者以外は絶対入れない。パーソン教授はミトコンドリアDNA制御領域及びチトクロムb遺伝子の法医学分析を研究し、インスブルック医科大学法医学研究所で高スループットDNAデータベース化ユニットと法医学分子生物学研究を担当している。

     パーソン教授のアカデミック・キャリアは専門家でなくては理解しにくいが、その実績は非常に興味深い。パーソン教授の研究成果はこれまでメディアでもさまざまな反響を呼んできた。2000年以来、「行方不明者のための国際委員会」のメンバーとして、DNA分析を通じて、旧ユーゴ戦争やスリランカの津波(2004年)の犠牲者、チリのアウグスト・ピチェット軍事政権(1974~90年)下の犠牲者の身元確認作業で大きな貢献をし、ロシア帝国のロマノフ家の家系調査でも有名だ。

     パーソン教授は2008年、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテと共にドイツ国民が誇る詩人フリードリヒ・フォン・シラー(1759~1805年)のものと伝来があった2つの頭蓋骨のDNA検査をし、2つの頭蓋骨のどちらもシラーのものではないと指摘し、ドイツのシラー・ファンから「シラー・キラー」とまで言われた。また、1991年にアルプスのイタリア・オーストリア国境のエッツ渓谷(海抜3210メートル)の氷河で、約5300年前の男性のミイラ(Otzi)が見つかったが、そのアイスマンの遺骨を分析したパーソン教授は「チロル州に19人のアイスマンの血縁関係者が生存している事実を突き止めた」と発表、世界を驚かせたものだ。

     パーソン教授は「FBIのDNA解析システムには問題点がある」と指摘。そのニュースが世界に流れると、FBIは教授バッシングを開始し、教授の業績を批判し、その名誉を落とす画策をしたが、FBIは最終的には教授を説得。教授は年に2回、米国のFBI所管の法執行機関研修施設本部クワンティコ本部でDNA法医学解析を支援している。

     パーソン教授は骨の法医学的解析とDNA分析を通じて、その人間の身元と共に歴史を解明する現代で最も優れた法医学者といわれている。まさに、「ボーンズ」の主人公ブレナン博士であり、現代版・名探偵シャーロック・ホームズだ。

     完全犯罪は昔は可能だったかもしれないが、パーソン教授のような人物が登場し、犯罪、謎を一つ一つ解明していける時代になった。完全犯罪ばかりか、歴史の装飾もできなくなってきたわけだ。なぜならば、「骨」がその歴史を語り出すからだ。「正しい歴史認識」論争を展開させたどこかの国のような歴史の恣意的な操作や隠蔽はできなくなる。「歴史」はそのような時代の到来を待っていたのだろう。

    (ウィーン在住)

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