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米政治の今後占う共和党保守派とトランプ大統領の減税政策めぐる攻防

11月6日の中間選挙で共和党は上院議席増、下院過半数割れという結果になった。今後、上院では主流派のミッチー・マッコーネル院内総務の力が増大し、下院では民主党主導の議会運営が行われることになる。共和党保守派は主に下院勢力を梃子にして影響力を行使してきたが、今後は戦略の変更が迫られていくことになるだろう。

 トランプ政権はインフラ投資、薬価の引き下げなどの様々な点で民主党側と妥協をしていく必要が出てくるであろうが、差し当たりの議会調整は減税政策をめぐる交渉も深刻化していくことになる。

 トランプ大統領は中間選挙直前に10%程度の中間層減税を発表し、ケビン・ブレイディ下院歳入委員長も共和党が上下両院を制した場合に同減税案を推進する旨を表明していた。現実には下院を民主党が制したが、民主党側も中間層向けの減税政策にはポジティブな状態である。

 しかし、その財源に関しては共和党と民主党では大きな隔たりがある。民主党側は2017年末に決定した法人税の大規模減税の引き上げによって、中間層減税の財源に充てようと画策している。トランプ大統領は民主党に配慮して一部増税を容認する構えを示唆しているが、そのためには共和党保守派からの頑強な抵抗をクリアしなくてはならない。そのため、年内に諸勢力が大規模な減税政策で折り合うことはなく、小幅な税制改革で調整が終了しそうである。

 筆者は2018年12月16日(日)にJapan-US Innovation Summit2018という日米カンファレンスを日本で開催することを予定している。このイベントの米国側開催パートナーはAmericans for Tax Reform (全米税制改革協議会)という米国の税制改革で絶大な影響力を持つ保守派団体である。来日予定のグローバー・ノーキスト同議長は共和党連邦議員の大半から「全ての増税に反対する」という署名を集める活動を行っており、同署名にサインを拒否する連邦議員は保守派からの積極的な選挙支援を得ることはできない、という仕組みになっている。そのため、日本の国会議員と違って、米国の共和党議員にとっては「増税に賛成する」ということは容易ではなく、自らの政治的な生き死にを左右する問題となっている。今後の共和党保守派の戦略は上記イベントの中でノーキスト議長からも触れられることになるだろう。

 筆者の見立てでは、上院の多数派を占める共和党議員を梃子にした増税反対キャンペーンによって、どこまで増税を財源にした議論を封じ込めることができるかということになり、少数派に転落した下院共和党保守派は財政支出削減を通じた減税財源の確保を志向することになっていくものと推測される。

 来年以降の共和党保守派にとっての最大の課題は、インフラ投資や薬価の引き下げを含めた総合的な政治的取引の中で、トランプ大統領が民主党が要望する様々な増税措置を容認することをどこまで食い止めることができるかである。

 トランプ大統領は中間選挙までは保守派の強力な同盟相手として機能してきたが、その行動は強固な信念というよりも、政治的機会主義的な傾向がある。トランプ大統領は共和党保守派の影響力が相対的に低下する中で、政治的フリーハンドを手中におさめることになり、その行動の予測可能性は低下していくことになる。共和党保守派がトランプ大統領という暴れ馬の手綱をグリップし続けるか否かは世界の政治・経済に大きな変化を及ぼす注目ポイントである。

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