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移民の政治利用、民主党支持層増やす手段に

米国の分断 第3部 「自虐主義」の源流 (7)

 米国で長年、国論を二分する政治・社会論争となっている移民問題。メキシコ国境からの不法移民流入を防ぐ壁建設やイスラム教国からの入国制限を主張するトランプ氏が大統領に就任して以来、その論争は一段と先鋭化している。

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今年6月、米ワシントン市内で行われた移民の帰化宣誓式(UPI)

 左翼勢力や野党民主党は、推定1100万人いる不法移民への市民権付与や低所得の移民の大量受け入れ、シリア難民の受け入れ拡大を主張する。彼らがこれらに積極的なのは、人道的理由だけでない。むしろ、真の狙いは、移民を大量に受け入れて民主党を支持する有権者を増やし、ホワイトハウスと議会を長期的に支配することにある。

 2016年大統領選で黒人の88%、中南米系とアジア系の65%が民主党のクリントン候補に投票したように、マイノリティー(少数派)は民主党を支持する傾向が強い。つまり、マイノリティー人口を増やすことで、政治ではマジョリティー(多数派)の座を占めるという「マイノリティー・マジョリティー戦略」こそ、民主党・左翼勢力の長期政治戦略の中核なのだ。

 特に中南米出身の低所得の移民は、米国の福祉目当てでやって来る人も多いため、必然的に欧州型の福祉国家を目指す民主党の政策に共鳴する。民主党にとって、移民の大量受け入れはリベラルな政策課題を遂行する推進力でもある。

 さらに、左翼勢力は新たにやって来た移民に対し、「多文化主義」を強調し、米建国の理念の受け入れなど同化を求めるのではなく、出身国の言語や伝統を守ることを奨励する。ジョン・フォンテ米ハドソン研究所上級研究員は、こうした「同化なき移民の大量流入」が米国をバルカン半島のような分裂社会に変えつつあると指摘する。

 「多文化主義の考えの下では、人々は米国民であることを第一に考えるよりも、アフリカ系、中南米系、アジア系、女性、LGBT(性的少数者)など、それぞれが属するグループを第一に考えることが強調される。グループを強調することで、米国民は分断され、互いに対立し合う。これは米国のバルカン化、敵対的多文化主義だ」

 つまり、左翼勢力は、米国民を人種や民族、宗教、性別、性的指向などのアイデンティティーでグループ分けし、白人対マイノリティー、男性対女性、キリスト教徒対イスラム教徒、保守的なキリスト教徒対LGBTなどの対立構図をつくり出すことで、それを政治運動のエネルギーに変えてきたわけだ。

 こうした左翼の政治戦略を半世紀前から察知し、警戒していた政治家がいる。アイゼンハワー、レーガン両元大統領だ。

 アイゼンハワー氏は1966年、当時、カリフォルニア州知事選に出馬していたレーガン氏に書簡を送り、「マイノリティーというグループは存在しない。われわれは皆、米国民だ」と訴えるよう助言した。これに返信したレーガン氏は「われわれをマイノリティーのグループに分断する」試みを拒否した上で、相手陣営は「政治的な利己主義で票田をつくり出そうとしている」と非難した。

 両氏は、米国民が異なる背景を乗り越え、結束することが何より重要だとの認識を共有していた。だが、残念ながら、2人が懸念を抱いた当時より、「移民の政治利用」は米社会の分断を深めている。

(編集委員・早川俊行)

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