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筋金入りの共産主義者、党員の過去を偽ったジン氏

米国の分断 第3部 「自虐主義」の源流 (3)

 故ハワード・ジン・ボストン大学名誉教授の「民衆のアメリカ史」は、マルクスの「階級闘争史観」から米国の歴史を書き直した著作だが、ジン氏は実際、米国共産党に所属していた筋金入りのマルクス主義者だった。ジン氏は生前、共産党員だったことを否定していたが、同氏が亡くなった2010年に連邦捜査局(FBI)が公開した資料で、ジン氏は党員としてさまざまなフロント組織の活動に従事していたことが明らかになっている。

 FBIがジン氏を捜査対象に指定したのは1949年で、捜査は74年まで続いた。25年にわたりFBIが集めたジン氏の情報は423ページに及び、すべてFBIのホームページ上で閲覧できる。

 48年に共産党のフロント組織がホワイトハウス前で行った抗議活動にジン氏と共に参加した情報提供者によると、「ジン氏は共産党員であり、(党本部があるニューヨークの)ブルックリンでの党の会合に週5日参加していることを明かした」といい、党の活動に深く関与していたことが分かる。

 また、「T―1」というコードネームの元共産党員の情報提供者は、49年にブルックリンの共産党ウィリアムズバーグ支部に配属された時、「ジン氏は既にこの支部にいた。新しい党員ではなく、かなりの期間、共産党にいる印象」を受けたと証言している。

 また、T―1は、51年にジン氏が共産党本部で「マルクス主義の基礎」について講義している様子を撮影した写真をFBIに提供。ジン氏は「マルクス、レーニンの基本的な教えは正当であり、忠実に従うべきだ」と論じていたという。

 米国の代表的な左翼知識人で、ジン氏と長年親交があったノーム・チョムスキー氏は、情報提供者の証言に基づくFBI資料は「大半が誤り」と批判した。だが、元左翼活動家で自らのFBI資料を読んだことのある歴史家のロナルド・ラドシュ氏は「情報提供者が共産党組織に潜入して目撃したことをストレートに報告したものは、大抵正確だ」と反論している。

 FBI捜査官が53年にジン氏に直接接触した際、ジン氏は「米国労働者党」「米退役軍人委員会」など一部の共産党フロント組織の活動に参加したことは認めたが、自らをただの「リベラル派」「左派」と称し、共産党員だったことは一度もないと主張した。

 左翼思想に傾倒する者が、共産党のフロント組織であることを知らずにその活動に関与することはあり得る。だが、「ジン氏が所属していなかったフロント組織はほぼない」(ラドシュ氏)。ジン氏がただのリベラル派だったとは考えられず、共産党員だった過去を偽ってきたのだ。

 ジン氏は50年代に共産党を離党し、FBIは55年にジン氏を国家の非常事態の際には身柄を拘束できる「セキュリティー・インデックス」から外している。

 だが、ジン氏は大学教員になった後も、ベトナムやキューバの共産主義政権を支持し、68年には反戦運動の一環で北ベトナムを訪問。国内でもさまざまな過激左翼組織を支援した。

 ジン氏が「民衆のアメリカ史」の初版を出したのは80年だが、それまでに中立的な歴史家に転向した形跡はない。つまり、多くの米国人が筋金入りの共産主義者が書いた歴史書で教育されていたのである。

(編集委員・早川俊行)

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