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米国中間選挙・接戦選挙区に大量投入されるリベラル系政治広告の影響力拡大

 米国中間選挙情勢に関して「The Sixteen Thirty Fund」というファンドが注目を浴びるようになってきている。ファンドの代表を務めるEric Kesslerは、ヒラリー・クリントンの環境政策に関するスタッフを務めた人物であり、New Venture Fundという100以上のリベラル系組織に資金提供している団体のボードメンバーでもある。

 このThe Sixteen Thirty Fundが注目される理由は、11月に予定されている中間選挙の接戦州でリベラル勢力の組織に対して大量の資金提供を行っていることによる。Politicoによると、アリゾナ、コロラド、ネバダ、フロリダ、アイオワ、ミシガン、ノースカロライナ、オハイオ、ニューヨーク、カリフォルニアなどで同ファンドから資金提供を受けたリベラル系の組織が活動しており、共和党の現職が行ったオバマケア見直し及び減税政策について批判的なTV広告を行っている、という。同ファンドは年初から現在まで6885件のTVCMの組成に関与しており、それらは今年前半に中間選挙を対象とした非営利活動の広告主としてトップ5に入る全米商工会議所やAmericans for Prosperity並みの数字となっている。

 上記2つの政策への批判は民主党が下院奪還に向けて焦点としたい選挙争点と重なっており、選挙区を絞ればそれなり影響はあるだろう。これらのマネーの出所は公開までのタイムラグがあるため、2019年末までは詳細が公開されることはない。

 このような巨額の資金を操るファンドによる政治活動支援は共和党側、特にコーク財団の専売特許のようなものとして、米国では金権政治の批判の的となってきた。コーク財団はリバタリアン的な指向が強いファンドであるが、オバマ時代に苦渋を舐めた共和党議員の多くがコーク財団の支援を受けて苦境を耐え凌いだことが知られている。
 コーク財団のオーナーであるコーク兄弟はトランプ大統領と2016年大統領選挙を通じて激しく対立し、政策の一部では妥協しつつある傾向もあるものの、現在でも関税政策と移民政策に関しては鋭く対立したままとなっている。
 コーク側は中間選挙に4億ドルの資金を投下することを予定しているが、その資金が持つ影響力はコーク財団の支持先である共和党議員らにとってはトランプ大統領と支持団体の間で板挟みとなる状況を生み出している。

 今回の中間選挙では、民主党側・リベラル側が上記の資金調達・提供手法を採用・展開していることで、特定のファンドによる資金提供が米国の政治潮流にインパクトを与える可能性が増加している状況となっている。共和党・民主党ともに政治家同士の単純な選挙戦だけではなく、大金持ち同士の場外乱闘が激しくなってきているといえるだろう。良い面もあれば悪い面もあるが、極めて米国らしい状況だと思う。

 筆者は透明性さえ確保すれば政治活動に資金が流れることは社会にとって健全なものと考える。実際、巨額の資金を投入が行われても必ずしも選挙の勝利が保証されるわけではない。しかし、政治・社会の在り方をめぐる論争に資金が流入して議論が活性化することは、社会の質の向上に役立つことに繋がることになるだろう。日本でも米国を参考として資金の透明性の形を高めることを条件とし、政治資金の寄付に関する規制や利用使途に対する制限を緩和し、積極的な政治資金の利活用が行われる環境を作ることが重要である。

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