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若者の歪んだ歴史観、政治の方向性誤らせる恐れ

米国の分断 第2部 反米・容共の風潮 (7)

 「ばかげている、ばかげている」。共産主義の残虐な歴史を後世に伝える活動を行う米非営利組織「共産主義犠牲者追悼財団」のマリオン・スミス事務局長は、本紙のインタビューの最中、険しい表情でこの言葉を何度も繰り返した。

マリオン・スミス氏

米ワシントンでインタビューに応える「共産主義犠牲者追悼財団」のマリオン・スミス事務局長

 米独立宣言の起草者で第3代大統領のトーマス・ジェファソンらが奴隷所有者だったことを理由に人種差別主義者と断罪され、像などの撤去を求める運動の標的にされている。その一方で、若い世代では、アルゼンチン出身でキューバ革命の指導者チェ・ゲバラのTシャツを着るのが一種のファッションになっている。

 「キューバで黒人や同性愛者を殺したゲバラが、一体どうして米国の将来の世代のために独立宣言ですべての人間は生まれながらにして平等と書いたジェファソンより好ましい人物になるのか。ばかげている」

 スミス氏は、自らと同じ2000年以降に社会人になったミレニアル世代の間で、米国を人種差別国家などと否定的に捉える一方、社会主義や共産主義に好感を抱く傾向が強まっていることに危機感を募らせる。

 スミス氏の財団が昨年実施した世論調査によると、ミレニアル世代の44%が社会主義国家に住みたいと回答し、資本主義国家の42%を上回った。共産主義国家の7%を合わせると、繁栄を謳歌(おうか)する米国の若者の51%が社会主義か共産主義の国に住むことを望んでいるという驚くべき結果が出た。

 2016年の世論調査では、ミレニアル世代の32%が、旧ソ連スターリン体制下よりもブッシュ(子)元米政権下でより多くの人が殺害されたという誤った認識を持っており、共産主義の残虐な歴史に対する基本的な知識が欠如していることも浮き彫りになった。

 「このような歪(ゆが)んだ歴史認識を持つ世代が政治について正しい判断を下せるのか。危険だ」。ミレニアル世代は来年にも米人口で最大の世代層となる見通しだが、スミス氏は若い世代が政治を誤った方向に導く可能性があると危惧する。

 実際、次期大統領選出馬が噂(うわさ)される民主党の有力者たちは若者を意識し、競い合うようにリベラル色の濃い政策を打ち出すなど左傾化が顕著になっている。米国では反共が党派を超えたコンセンサスになっていたが、スミス氏は「気を付けなれば、社会主義、共産主義が米政治の争点になる恐れがある」と指摘した。

 この状況は、人権や民主主義を擁護する自由世界のリーダーとして米国が果たしてきた役割にも影響を及ぼす可能性がある。「もし米国民の25%でも共産主義を悪いと思わなくなったら、世界における米国の立場は全く違うものになるだろう。米国民が共産主義、全体主義勢力に対抗することを望まなくなれば、世界に極めて否定的な影響をもたらす」(スミス氏)

 スミス氏は、問題の根源は「歴史に対する無知」にあるとし、財団では若者や高校教師らに共産主義の暗黒の歴史を教えるプログラムを実施している。容共の風潮は極めて憂慮すべきトレンドだが、スミス氏は希望を捨てていない。

 「ミレニアル世代は正義や人権、平等を重視する。社会主義、共産主義体制がこれらにとって最悪であることが分かれば、米国を社会主義に変えるのではなく民主主義や法の支配、自由な経済活動といった米国のシステムを守るべきだという方向に向かうはずだ」

(編集委員・早川俊行)

=第2部終わり=

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