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北朝鮮に眠る「豊富な鉱物資源」に吸い寄せられる人々

 “North Korea abounds with rich natural resources. North Korea has a diligent workforce. If North Korea is willing to take steps toward the right direction, North Korea can see a bright future ahead for itself.”

 これは6月頭に行われた日米首脳会談での安倍首相のスピーチのホワイトハウス掲載文の一部である。もちろん、安倍首相のスピーチは日本語で行われたが、ホワイトハウスに掲載されている英語文の意味合いが分かりやすいので、今回はそちらを参照しようと思う。

 北朝鮮には豊富な鉱物資源があることで知られている。その中にはウランも含まれるものの、多くは産業用の鉱物として貴重なものであり、大日本帝国時代においても重要な鉱物供給源であった。

 安倍首相が米朝首脳会談に先立つ日米首脳会談で、同国の鉱物資源に言及したことの意味は深いものと思われる。それに加えて、同言及の後には、

 “Japan, based on the Japan-North Korea Pyongyang Declaration, is prepared to settle the unfortunate past, to normalize our diplomatic relations, and to provide economic cooperation. Japan wishes to play the role as much as possible.”

 もはや空文化したと思われた日朝平壌宣言を取り上げて、過去の清算、国交正常化、そして経済協力について米国大統領の前で宣言している。要は、日本はある程度の条件さえ整えば経済協力は行う用意があるし、それは事実上北朝鮮の鉱物資源等に関わるものであることを示唆していることになる。

 そのような中で、「日本が北に“5兆円拠出” ! 非核化費用で米朝首脳が約束」という情報が飛び出したことは不思議ではなく、むしろ既定路線であるように感じられる。むしろ、日本だけでなく米中ロ韓などの周辺国の全てが既に北朝鮮の鉱物資源の奪い合いに突入していると見るほうが妥当だろう。

 筆者が仕事柄様々な金融機関や投資家と話すことが多いが、そのような中でも「拉致者救出一人〇兆円」などという政府関係者からの未確認情報が飛び交っているわけで、それだけの資金を出すなら当然にそれなりの経済的見返りも必要ということになるのは当然である。

 筆者は、北朝鮮は非核化についてもプロセスは不十分なまま、拉致問題解決についても一旦合意したとしても安倍首相の退任時期を見据えて引き延ばし&反故にしてくる可能性が十分にあると推測しているため、日本政府がこのような鉱物資源の奪い合い競争に安易に参加していくことは良いとは思わない。(トランプ大統領が常に拉致問題は日本政府ではなく『安倍首相の関心事』であることを強調している点も気になる。)

 また、北朝鮮の鉱物資源は、従来は外国向けとしては中国に開発権付与、そして輸出されてきたわけだが、対中国貿易会社を自らの傘下に置いて対中石炭貿易を支配していた金正恩の叔父である張成沢が粛清されたことで、鉱物開発資源の開発・輸出も金正恩と軍の支配下に置かれたという見方もある。一国の重鎮が突然に処刑されて利権の切り替わりが起きる国が北朝鮮だと言える。

 北朝鮮という「法の支配」が及ばない地域で「土地」に起因するビジネスに関わることはあまりにカントリーリスクが高い。最悪の場合は、北朝鮮に掘削のための設備などを整えた段階で強制接収などの措置を食らう可能性もゼロではない。そのようなリスクある事業を日本政府が国民の血税を対価として行うことは避けるべきであることは言うまでもない。万が一、強制接収された場合にISD条項(投資家対国家の紛争解決条項)すら適用されない北朝鮮に対して、日本は拉致被害者と同様に米国に頼んで取り戻してもらうように懇願するのだろうか。

 北朝鮮は鉱物資源の甘い匂いをバラまいているが、それに釣られて集まるハエは金正恩という食虫植物によってバクっと食べられてしまうことになるだろう。独裁国家の奥深くに眠る秘宝は常に欲深き人々の業をその糧として輝きが増すものだ。

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