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非核化遠のく政治ショー

首脳会談に臨むドナルド・トランプ米大統領と金正恩北朝鮮労働党委員長=米国務省ツイッターより

首脳会談に臨むドナルド・トランプ米大統領と金正恩北朝鮮労働党委員長=米国務省ツイッターより

 全世界の注目を集めた史上初の米朝首脳会談は、北朝鮮の完全非核化について真剣に討議する「決戦の場」ではなく、台本に沿って友好ムードを演出する壮大な「政治ショー」に終わった。トランプ氏は記者会見で会談の成果を自賛したが、共同声明には北朝鮮の非核化をどう進めていくかの具体的な記述は一切なく、核問題解決の展望は見えてこない。

 首脳会談は延長されることなく午前中であっさり終了。この短い時間では、信頼関係を醸成し、実務者協議で決まった内容を確認するのがせいぜいで、どこまで踏み込んだやり取りがあったか疑わしい。その一方で、両首脳の親密さをアピールする「フォト・オプ(写真撮影の機会)」は、会談冒頭やワーキングランチ後、共同声明の署名など少なくとも6回はあった。

 共同声明には、米国が求めてきた「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」の文言はない。もともと合意文書は包括的内容にとどまると見られていた通り、総論だけで各論がほとんどない内容だ。詳細を詰めることを怠った合意が、数々の約束を破り続けてきた北朝鮮にとって何の意味も持たないことは、歴史が示す通りだ。

 過剰な「融和演出」により、国際的な制裁網で北朝鮮を追い詰める勢いは完全にしぼんだ。既に中国は制裁を緩和しているとの情報があり、韓国も南北協力に動き出している。再び「最大限の圧力」を掛けようとしても、もはや難しい状況だ。

 「歴史的」と称される米朝会談は、北朝鮮の非核化へ前進するどころか、その目標が逆に遠のいた印象さえ与える。

(シンガポール・早川俊行)

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