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安倍首相はトランプ大統領との無条件の蜜月関係を見直すべきだ

安倍総理とトランプ大統領 鉄鋼・アルミに関する関税引き上げの適用除外が検討されてきたEUに米国が6月1日から関税を課すことを決定した。既に日本には3月23日から関税引き上げが適用されている。日本から米国向けの輸出は輸出割合における規模が小さく、その上代替がきかない製品が大半であるために米国向け輸出で大きな影響が出ているわけではなさそうだ。しかし、日本が欧州とは異なり貿易交渉の対象国として関税引き上げの一時免除にならなかったことを日本は忘れるべきではない。

 そして、日本からの直接の対米輸出に影響は軽微であったとしても、今回の措置の影響を受けて中韓欧などでダブつく鉄鋼・アルミの半製品は他市場での価格下落要因となり、結果として日本企業を苦しめることに繋がる可能性も想定するべきだろう。

 米国は自動車に関しても安全保障上の理由から米通商法232条の対象となるかどうかの検討を開始している。同措置は主に欧州との貿易戦争を念頭に置いたものと想定されるが、自動車に関しては日本も影響が軽微というわけにはいかないだろう。米国は中国や欧州との貿易戦争の真っ只中にあり、日本はその煽りを受けて荒波の中で漂流する小舟のような状態となっている。

 現在の米国の通商交渉の中心メンバーはかつての日米貿易摩擦の闘士ばかりであり、日本がその波を避けられるように配慮してくれるような甘い人々ではない。むしろ、日本側が同盟国だと思って油断しているそぶりを見せていれば、中国や欧州を叩くついでの得点稼ぎとして格好のカモのように見えるはずだ。

 安倍政権は就任以来世界各国の国々に対して極めて甘い顔をしてきた。インドをはじめとした世界中の国々に巨額の海外援助をバラマキつつ、ロシアや韓国などにも甘い汁を吸わせて北方領土問題や慰安婦問題などについて譲歩を引き出そうと腐心してきた。これらの安倍政権の外交は自由で開かれたインド太平洋戦略を前提として、中国の影響力を限定的に抑え込むための行動であったように思う。

 しかし、実際には、インドは中国の国家戦略である一路一帯構想の主力となるAIIBの第二の出資国であり、ロシアもトランプ政権誕生直後の手のひら返し以来日本から経済協力を引き出すだけで領土問題はほぼ進展せず、韓国も当然のように約束を事実上骨抜きとして慰安婦問題を常に蒸し返す機会を伺い続けている。

 また、4月に米英仏のシリア空爆を支持しながら、5月中東歴訪時にはイスラエルよりも先にパレスチナを訪問して中東和平を仲介すると述べ、イスラエルでの晩餐では靴の容器に入ったデザートを食べさせられるという非礼な対応を受けた。(イスラエルは非礼の意図はないと述べたが、そのようなことがあるわけがない。)そのような一連の失敗した外交の結果のクライマックスが米国による日本を対象にした通商交渉の現状ということになる。

 一部には安倍首相の在任期間の長さが外交運営上有利に働くという見解も存在する。それは事実の面もあるが、逆に在任期間の長期化は場当たり的な外交政策の整合性が取れない場合、諸外国からの信用失墜の回復機会を失うことも意味する。トランプ大統領が金正恩に対して米朝会談キャンセルを伝える書簡を送った際に、脊髄反射的にトランプ大統領の会談キャンセルを支持した国家は唯一日本1か国であった。

 そして、その後日本はトランプ大統領が米朝会談キャンセルを一転して立場を翻した結果、今度はコバンザメのように米朝会談を再び支持するという失態を犯した。筆者は同書簡を分析した結果、その日のうちにトランプ大統領の書簡はブラフであってトランプ大統領の真意とは言い難いという分析を公表したが、日本政府の一連の言動は潤沢な外交予算をかけながらその程度の分析すらできなかったことを示唆している。

 私見では、安倍政権の外交政策の前提はトランプ大統領ではなくヒラリー大統領を前提としていたように見受けられる。TPPを主軸とした対中抑止、米国の尾を踏まない慎重な日ロ関係、アジア諸国との緩やかな安全保障の深化など、米国民主党政権が誕生していた場合首尾よく運んだ可能性もゼロではない。

 しかし、2016年の大統領選挙の結果として、トランプ大統領が登場したことで全ての青写真が覆ったのではないか。安倍首相は大統領選挙の直後トランプ大統領を訪問して以来、両首脳同士の蜜月関係を演出している。これはストラテジーではなく個人的関係によって状況を挽回しようとした結果だと推量されるが、トランプ側にとっては極めて都合が良いカードが一枚手に入ったにしかすぎないだろう。

 両国首脳の蜜月関係を演出するという取引によって、日本側にNOと言わせない環境を作ることができるからだ。直近ではトランプ大統領は習近平をゲームプレーヤとして認めた発言をしているが、それはトランプ大統領にとっては相手を褒め称える最大の賛辞とも言えるものだろう。

 既にトランプ政権が発足してから1年以上の月日が流れており、トランプ大統領は予測不能ではなく、その行動の振れ幅を予測するファクトが揃ってきたものと思う。外交環境は常に変化しており、その中で難しいかじ取りが求められることは十分に理解している。だからこそ、安倍政権は一度立ち止まった戦略環境の変化について今一度考察するべきだ。トランプ大統領にしっかりとしたアジアの手ごわいプレーヤーとして認めさせるため、安倍首相はトランプ大統領との無条件の蜜月関係を見直すべきだろう。

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