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    古川 光輝
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    細川 珠生
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    井上 政典
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    伊勢 雅臣
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    河添 恵子
    河添 恵子
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    宮本 惇夫
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    中村 仁
    中村 仁
    元全国紙経済記者
    石平
    石平
    評論家

    トランプ氏が“天野氏叩き”を始めた

     ウィーンに本部を置く国際原子力機関(IAEA)のナンバー2で査察局トップ、テロ・バルヨランタ事務次長が辞任したことはこのコラムでも報道したが、査察局長の突然の辞任理由はセクハラ問題があった、というニュースが流れてきた。ニューヨーク発のInner city pressが流した。情報は信頼できるという。

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    トランプ大統領に憎まれるIAEAの天野之弥事務局長(IAEAの公式サイトから)

     IAEAはバルヨランタ査察局長の突然の辞任について、「個人に関することは公表しない」という原則に基づいて理由を明らかにしていないが、トランプ米大統領が今月8日、2015年7月に合意したイランとの核合意から離脱し、解除した対イラン制裁を再実施していく旨の大統領令に署名した直後だっただけに、さまざまな憶測が流れた。

     当方は突然辞任の背景について、3つのシナリオを挙げ、①健康・家庭問題、②「引責」、③リクルートを指摘し、その中で最も考えられる理由は②ではないかと書いた(「IAEA高官の辞任報道から学ぶ」2018年5月14日参考)。

     ニューヨーク発の情報によると、事務次長は職務後、ウィーン郊外のクレムスのバーで頻繁に酒を飲み、そこで女性にセクハラ的な行動をしたという。目撃者もいた。

     国連のグテレス事務総長は今月14日、ウィーンを訪問し、ウィーン拠点の国連機関トップたちを集めて会談したが、そこでIAEA事務次長のセクハラ問題に言及し、セクハラ問題の対応について警告を発したというのだ。

     ニューヨークの記事で興味深い点は、天野之弥事務局長への責任が追及されていることだ。曰く「天野氏は事務次長のセクハラを知っていたが、何もしなかった」、「高官職員のセクハラへの対応に関心を示さなかった」といった天野氏の指導力の欠如がテーマとなっているのだ。

     整理してみる。①ニューヨーク在住記者がウィーンのIAEA事務次長のセクハラを知ったのは米国側からのリーク以外に考えられない、②トランプ政権は政権発足からイラン核合意からの離脱を主張し、今月8日、トランプ大統領は離脱を表明、③米国側の意向に反し、IAEAの天野氏は、「イランは核合意の包括的共同行動計画(JCPOA)をこれまで遵守してきた」(3月理事会)と表明し、イラン側を擁護する一方、トランプ政権のイラン核合意離脱が専門的な検証事実とは一致していない点を繰り返し指摘してきた。その結果、トランプ大統領やボルトン大統領補佐官などイラン核合意離脱派が激怒し、天野叩き、IAEAバッシングが始まった、というのが真相ではないだろうか。査察局長のセクハラ問題は天野氏バッシングを正当化するための材料に過ぎなかったのだ。

     国際外交に精通する天野事務局長は事務次長セクハラ情報が米国発だと知っていたはずだ。だから、事務次長に、「米国がメディアを動員してセクハラ攻撃を開始する前に辞任した方がいい」と助言し、事務次長には退職年金の完全支給を保証したはずだ。その結果、事務次長は突然辞任したわけだ。

     ニューヨーク発の記事はIAEAナンバー2のセクハラ情報がワシントン発であることを滲まさないように注意深く書かれている。記者はもちろん米国側の狙いを知っていた。イラン核合意を支持する天野氏とIAEAを叩くことだ。

     ちなみに、IAEA内には米国の情報機関から派遣された職員が多数勤務している。事務次長が仕事後、どこのバーで酒を飲むか、誰と話すかを彼らは良く知っている。天野氏自身も米国情報機関出身の職員の監視下にあるとみて間違いないだろう。彼らは定期的に駐ウイーンの米大使館を通じてワシントンに情報を送信している。

     国連取材をしていると分かることは、いい悪いは別として、最大の分担金拠出国の米国を敵に回して国連は何もできないという事実だ。天野氏がIAEA事務局長に初めて選出された時、米国に対し「私は米国の意向に沿っていく」と、当時の駐IAEA担当米大使に忠誠を表明したという情報が流れ、一時話題になった。その天野氏が、米国側のイラン核合意離脱発言が出る度に「イランは核合意を守っている」と発言してきたわけだ。トランプ政権の堪忍袋の緒が切れてしまったわけだ。
     天野氏は昨年12月、3期目の任期をスタートさせた。4期目の任期は通常あり得ないから天野氏は米国の意向に、もはや神経質になる必要はない。ただし、トランプ大統領から睨まれた天野氏の残された任期はこれまで以上に茨の道となることはほぼ間違いないだろう。

    (ウィーン在住)

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