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2018年・中国と本格的な闘争に乗り出すトランプ政権

ワシントンで開かれた保守派の集会で演説するトランプ米大統領

ワシントンで開かれた保守派の集会で演説するトランプ米大統領

 米国の外交安全保障上の主要な関心は中東とロシアにあり、東アジアについての関心は相対的に低い傾向がある。これは共和党政権であっても民主党政権であっても大差ないことであり、日本から米国の対東アジア政策を推測する場合、日本側の自意識過剰によってピントが外れたものになることが多い。その代表的な事例としては、2017年中の北朝鮮への米軍の軍事行使“やるやる詐欺”を喧伝した有識者らが日本国内に溢れたことが挙げられる。無惨なまでに的外れであったそれらの予測は、米国側の関心事を理解できていないガラパゴス化した日本の知的空間の現状を反映したものだったと言えるだろう。

 ただし、2017年中に米国側の雰囲気が若干変わってきたことは事実だろう。夏過ぎから筆者が米国の共和党保守派の会合に出席した際、日本から来た人間だと分かるとまず北朝鮮情勢について質問された後に、北朝鮮の背後にいる中国に対する認識を問われることが増えた。

 中国に対する共和党保守派が日常的に問題視してきた話題は、「知的財産の侵害」と「サイバー攻撃」などに関する個別の問題が言及対象となることが多く、“中国という国家全体”を脅威とみなす向きは必ずしも強くなかった。昨年はその風向きが明らかに変わったことを感じた上、外交安全保障関係の人間に限ったことではなく、米国側でメディアのコントリビューターなどの仕事をしている人々も同様に、米国保守政界全体の中で東アジアに関する関心が例年になく高まっていたことが肌感覚で分かった。

 トランプ政権は昨年末に国家安全保障戦略でロシアと並んで中国を脅威として名指しし、年明け早々にUSTR(米国通商代表部)が文書でロシアと中国のWTO(世界貿易機関)加盟を認めた過去の判断に疑義を呈した。そして、太陽光パネルや洗濯機などに対する制裁措置を実行し、中国に対して貿易摩擦を起こしていくことを厭わない姿勢を示している。

 また、シンクタンクにおける対中国シンポジウムも増加しており、政策的なマーケティングも盛んになっている。北朝鮮問題に関する意趣返しのように、特にタカ派のシンクタンクなどでは台湾への積極的な支援強化などに関する意見交換がなされている。トランプ大統領がメディアにTPP(環太平洋連携協定)への復帰を示唆したことも対中国に向けた外交的圧力強化の一環であろう。

 以上のように、米国側の対中国認識が悪化しており、中国を脅威とみなす傾向が強まっていることは確かだ。しかし、その背後にある要素として、この問題を外交安全保障上の問題として単純に理解することは間違っている。米国側の対中国姿勢の圧力強化は一過性の現象で終わる可能性も高い。

 2018年は米国は中間選挙の年である。現在のトランプ政権の最優先課題は、この中間選挙で民主党に勝利し、自らに反抗する共和党内の反乱分子を抑え込むことにある。そのため、共和党が現在多数を占めている連邦上院・下院における勢力を保つことは当然のこととして、2017年中に議会交渉が難航した上院における議席数を増加させることは不可欠だ。

 上院の改選州は大統領選挙の勝敗を左右した「ラストベルト」と呼ばれる接戦州が含まれており、トランプ大統領は同州に存在する製造業向けの政治的なパフォーマンスを必要としている。中国はそのパフォーマンスの相手として相応しく、中間選挙に勝ち抜くための政治的なスケープゴートとしての利用価値が高い。したがって、2018年中は中国に対してトランプ大統領が非常に厳しい姿勢を取ることは当初から予測された通りのことであって大きな驚きはない。

 しかし、日本にとっての問題は、中間選挙後にトランプ大統領が東アジア政策についてどのような政策を実行するのか、ということが依然として不明瞭なことだ。トランプ大統領の娘婿であるクシュナー上級顧問は親中派で知られるとともに、テリー・ブランスタッド駐中国大使は習近平国家主席の30年間の知己であり、ミッチー・マッコーネル上院院内総務も家族ぐるみの親中派とみなされている。
 また、当然であるが、米国内には中国との互恵的な経済関係の発展を望む勢力も多数存在しており、米中のいたずらな対立の激化を回避するようにロビーイングしているケースも少なくない。つまり、トランプ政権は中間選挙の喉元過ぎれば対中政策が大きく転換する可能性も十分にあるということだ。

 北朝鮮問題を抱える東アジア情勢と中間選挙を抱えた米国内の国内事情が2018年のトランプ政権の対中国圧力強化路線に繋がっているだけのことであり、トランプ政権の外交安全保障上の性格全体が親日・反中とみなすことは軽率だろう。一部の有識者の間では毎年実施している春先の米韓軍事演習で米軍が北朝鮮を攻撃する可能性も取りざたされているが、例年通りの軍事演習で終わる可能性も十分にある。日本側が同演習について毎度のように過剰に反応するのはいかがなものだろうか。

 今後、米国の一挙手一投足に一喜一憂するのではなく、その背景事情までも含めた考察がますます重要になっていく。今回は米国の東アジアに関する認識の変化に触れたが、米国の関心事が中東やロシアに注がれ続けていることも明らかだ。東アジア政策全体は他の重点地域の変数として決定されており、日本人は米国人と同じように地球というチェス盤全体の状況を見据えてモノを考える癖をつけるべきだろう。

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