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対中強硬の安保戦略、実体伴った行動示せるか

トランプのアメリカ 就任から1年(6)

 米調査会社ユーラシア・グループは2日、今年の「世界10大リスク」を発表し、海洋進出を活発化させる中国を1位に選んだ。同グループのイアン・ブレマー社長は「中国は空白を好む」とし、アジアで「力の空白」が生じれば、中国がそこに付け込み、国際秩序を脅かす可能性があるとの見方を示した。

 「今年は中国の行動がますます独裁的になり、海洋で軍事力を誇示するようになる」(米メディア)と予想される。

 過激派組織「イスラム国」の台頭や中国による南シナ海の軍事基地化は、いずれもオバマ前大統領の弱腰姿勢が「力の空白」を生み、引き起こされたものだ。こうした「空白」を作らないためにアジア諸国だけで対処するのは限界があり、ブレマー氏が示した今年最大のリスクを避けるためには、世界最強の軍事力を誇る米国が、アジアでのプレゼンスを拡大させる必要がある。

 トランプ大統領の対中政策は戦略がないとしばしば批判される。政権発足当初は対中強硬姿勢を示したが、核・ミサイル実験を続ける北朝鮮に対する影響力行使を期待して態度を軟化。その後も「中国にはとても失望した」とツイッターに書き込んだと思えば、数日後には持ち上げることもあった。

 だが、そうした一貫性のなさも昨年末から変化の兆しが出ている。先月18日にトランプ政権が発表した国家安全保障戦略(NSS)と今月19日に米国防総省が発表した国家防衛戦略は、これまでにないほど対中強硬姿勢を鮮明にしたからだ。

 ワシントン・タイムズ紙は、NSSが中国について米国の安全と繁栄を脅かし、国際秩序の現状変更を目指す「修正主義勢力」と位置付けたことに、「トランプ政権はテロリストや過激派組織との戦いが中心だったブッシュ(子)、オバマ両政権の戦略を変え、中露による軍事的脅威の拡大に重点を置いている」と指摘。今後、トランプ氏が中国に対して厳しい姿勢を続ける可能性が高いとの見方を示した。

 オバマ政権はアジア・太平洋に外交・安保の重心を移す「リバランス(再均衡)」政策を掲げたが、具体的な行動はなく掛け声倒れに終わった。同政権が2015年に発表したNSSも、中国の南シナ海進出に対して名指しによる批判を避けるなど、過剰な配慮が目立った。これに対し、トランプ政権のNSSは、中国に必要以上の配慮はしないと宣言したに等しい内容だ。

 保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ政策研究所(AEI)アジア部長のダン・ブルメンソール氏は「トランプ政権のNSSは軍事、経済、外交、情報など国家権力のあらゆる領域で、より激しく中国と争うロードマップを示した」と主張。この戦略を実体の伴った行動に移せるかが、次の焦点だとした。

 覇権主義的傾向を強める中国に、トランプ政権が「力の空白」を生じさせないよう具体的な対抗措置を取るのか。アジア各国の視線が注がれている。

(ワシントン・岩城喜之)

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