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トランプ大統領の米国史に残る税制改革を実現したのは誰なのか?

 トランプ大統領が法人税を35%から21%に引き下げる“歴史に残る大減税”を実現する税制改革法案に署名した。トランプ大統領、ペンス副大統領、そして共和党議会指導らが指導力を発揮し、トランプ政権は初年度にも関わらず大偉業を成し遂げたと言える。

 このような歴史的偉業の背景には表に立って目立つ政治家以外にも長年の努力を積み重ねてきた本物の実力者が得てして存在しているものだ。今回の税制改革に関しては、全米税制改革協議会(American’s for Tax Reform)のグローバー・ノーキスト議長の存在は日本でももっと認知される然るべきだろう。

 グローバー・ノーキスト議長が率いる全米税制改革協議会は米国政界では知らない者がいない超有名団体である。同協議会は共和党のほぼ全ての連邦議員から全増税に反対することに同意する「納税者保護誓約書」を提出させる活動を実施している。この納税者保護誓約書は、共和党の選挙において実質的な運動の足腰となる保守派の草の根団体(グラスルーツ)から支援を得られるかどうかのメルクマークとして機能している。したがって、ノーキスト議長の意向に逆らって同誓約書に署名しない連邦議員候補者は、共和党の選挙運動の主力である保守派草の根団体から支持を受けられないどころか、場合によっては増税に賛成する候補者としてネガティブキャンペーンにさらされる危険すら冒すことになる。

 ノーキスト議長はレーガン大統領から委嘱される形で同運動を開始し、既に何十年にも渡って筋金入りの活動を実施してきた保守派のドンである。全米税制改革協議会で毎週水曜日に開催される保守派の定例会は「水曜会」と名付けられており、ワシントンDCだけでなく全米から保守派のリーダーが集まって、保守派内での様々な政局に対する意思決定が行われる。水曜会は「完全招待制、マスコミ非公開、内容は他言無用」という厳しいルールで運営されている。筆者は日本人で数少ない同会議にほぼ自由に参加することを許されている日本人であるために、触れられる範囲で解説すると、原則として同会はノーキスト議長から参加者に発言の時間を数分与えられる形でスピーチを行い、それについてテンポよく質疑が行われる形で進んでいく。グラスルーツ指導者、シンクタンク、政府関係者、議会関係者などが諸々の討議に参加し、保守派の新参者は同会で発言の機会を得ることによって初めて“一人前”と言った扱いを受けることになる。要は、ノーキスト議長と全米税制改革協議会のお墨付き無しで活動する保守派の人間はモグリかペーペーみたいなものなのだ。

 トランプ大統領は大統領選挙当選後にノーキスト議長からの祝辞を自らのHPのトップに掲げたことで、トランプ政権に対するノーキスト氏の影響力が大きいことが分かる一幕だった。そして、その影響力は税制改革だけに及ばず、国防次官補に自らの兄弟が就任するなど、トランプ政権の政治任用にも深く食い込む形となっている。同氏の存在なしではトランプ大統領や共和党は政権を運営することが実質的に困難であると言えるだろう。

 ノーキスト議長は今回の歴史的な税制改革を民間の立場から主導し、議会における上院・下院の調整にも奔走した影の実力者である。米国には民間で小さな政府を実現しようと動く力強い政治勢力が存在しており、それらの長年の活動の成果として価値ある政策が実行されている。日本では小さな政府を求める草の根団体の活動は非常に脆弱であるため、米国とは正反対に大増税のオンパレードの状況となっている。しかし、世界的な新たな減税競争を目の前にして競争に勝ち抜いていくためには、全米税制改革協議会やノーキスト議長らのような筋金入りの活動を実施する縁の下の力持ちの存在が日本でも必要不可欠なものだと言えるだろう。

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