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老練なロシア外交から日本が学ぶべきポイント

 国際社会においてロシアの存在感が高まっている。アメリカ同様、国際社会に多大な影響を与えるロシアの動向には各国とも敏感に反応している。ロシアはかつてのソ連時代には共産主義陣営の盟主として、西側諸国に対しての圧力を掛け続けてきた。ソ連崩壊後もロシアは対アメリカ・EUとの対立を繰り返してきたことにより、その原動力を外交や国内政策にも反映して国力を維持してきた側面がある。

 常に国際社会と対立することによって「ロシアは一筋縄ではいかない交渉相手」とのイメージが植えつけられ、その結果外交交渉において有利に運ぶことができることもある。通常、国家と国家の交渉には、高官級の協議を重ねて関係機関に根回し行い、首脳会談を円滑に実施するために様々な努力がなされる。しかしロシアは度々高官級の協議がなされているときにも、わざとメディアに合意が期待されている事柄について異なった意見を平然と発言することがある。実際に日本とロシアは平和条約交渉と北方領土交渉について高官級協議が続けられているが、ロシア高官がロシアメディアに対して「簡単に北方領土は渡さない」と発言してみたり、と日本の政治家や官僚では考えられないことが実際に行われているのだ。

 それらのことが国際社会に受け入れられるとは言えないが、見方によっては老練な外交だと表現される。ロシアが国際社会で大きな影響力を保持している背景には国力や軍事力、資源の豊富さだけでなく、こうした外交能力と情報収集に長けているからではないだろうか。「何をやってくるのかわからない」相手ほど怖い交渉相手はいない。その最たる例がシリア内戦であ。ご存知の通り、シリアではアサド政府軍と反体制派の内戦が続いている。アサド政府軍にはロシアやイランが介入して、反体制派はアメリカが中心とした有志連合軍が介入している。内戦終結の和平のために停戦が模索されたが、ロシア側は過激派組織への空爆と称して攻撃を繰り返している。それらは「言っていることやっていることが違う」と交渉相手を困惑させることになる。

 と、思いきや停戦が危うくなったタイミングで、関係国による外相会合を今週末に英国とスイスで開催すると日露共同で発表したりする。自らが停戦を破棄しておきながら、再び停戦を模索する。なにやら奇妙な構図だが、それが国際ニュースのトップとして当たり前のように報道されるのだから不思議なものである。さらに米露で停戦協議に入ったのは良いものの、国連安保理でアサド政権による空爆の停止を求める決議案を採決に付したが、アサド政権を支援している常任理事国のロシアが拒否権を発動したため廃案になった。ロシアがアサドを支援していることは公であるから、拒否権の発動は理論的に説明できる、国際社会にとっては受け入れがたいものである。

 ロシア外交当局者が何を考えているのか。問題はシリア内戦だけでなく、様々な分野で同じことが繰り返されている。例えば核弾頭搭載可能な弾道ミサイル「イスカンデル」を、NATO加盟国のポーランドとリトアニアに隣接するカリーニングラードに再び配備しつつあることが明らかになっていることや、対IS作戦を名目にロシア海軍のコルベット艦「ミラージュ」をトルコのイスタンブールのボスポラス海峡を通過し、地中海に向かわせたりと、軍事的な挑発行為を行ったと思いきや、OPEC加盟国による減産合意にロシアも参加する用意があるとプーチン大統領が発言したり、一転して国際社会とともに協調した姿勢を見せることもある。

 さて、日本である。ロシアとの交渉における最重要な課題である、北方領土と平和条約についてだが、山口県で首脳会談を開き、その後東京に戻って関係機関とのセッションも行われる。日露関係の展望については過去記事を参考にしてもらいたい。(「日露首脳は次のステージへ上がれるのか?」http://japan-in-the-world.blog.jp/archives/1060720993.html

 日本はこれまでバカ正直にアメリカの言うことを聞きすぎてきたのではないだろうか。アメリカにとっての日本は、「極東のアメリカの盾」だったはずであり、常にアメリカに忠誠を誓ってきた信頼できるパートナーだったはずだ。日本にしても米軍と言う抑止力のおかげで平和を享受してきたのだが、米大統領選を見ていてもアメリカが国際社会のトッププレーヤーだとの認識と自覚が薄れてきているように思える。トランプ氏の発言にあるように在日米軍の存在価値が問われているなかで、本当に日米同盟というものを信じきっていいのだろうか。本当にこれまでの外交方針で国民を守ることができるのだろうか。

 幸い安倍首相はオバマ大統領及び、米政府中枢に「モノが言える」首相なので、アメリカに及び腰だったこれまでの政権とは違う。また、必要以上に関係を悪化させた民主党時代の愚かな指導者ではない。安倍首相はロシアという「問題児」を大きな懐で迎えつつ、日本の国益を最大限確保しようとする姿勢がうかがわれる。ロシアが実践しているように「相手国のペースに乗せられない外交」を外務省と政府高官は学ぶべきではないだろうか。日本が国際社会に影響力を行使しようと考えるなら、もっと大国の外交能力と情報収集能力を学ぶべきである。しかし忘れてはならないのは、日本は東アジアにおいて独自の立ち位置で、なおかつ日本らしい民主主義の形を世界に広めること。そしてアメリカに頼った外交をいいかげんやめることが肝心なことであると思う。

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