«
»

ロシアの“悪夢の1カ月”

知事選で異例の無効判断
供与ミサイルが自軍機撃墜

 9月中旬から10月初めにかけて、ロシアではさまざまな事件がメディアを賑(にぎ)わせた。極東・沿海州地方知事選で異例の「選挙結果無効」の判断が下され、シリアではロシアが供与したロシア製対空ミサイルシステムが、こともあろうにロシアの偵察機を撃墜。このほか、軍高官の汚職をめぐる前代未聞のスキャンダルなどが続いた。
(モスクワ支局)

パムフィロワ委員長

ロシア中央選管のパムフィロワ委員長(EPA時事)

 プーチン大統領の支持率が下落する中、9月の統一地方選では圧倒的に強かった与党系候補が苦戦を強いられた。年金支給開始年齢を引き上げる改革を批判するロシア共産党などの候補が支持を集め、4地方で決選投票にもつれ込んだ。

 この中で最も大きなスキャンダルとなったのは、極東・沿海州知事選。開票率95・1%の時点の発表で、共産党のイシチェンコ候補が得票率51・56%で、与党「統一ロシア」のタラセンコ候補を5・8ポイントリードしていたのが、開票終了後の発表では、タラセンコ氏49・55%、イシチェンコ氏48・06%で逆転。「勝利を盗まれた」と、イシチェンコ陣営が激しく抗議する事態となった。

 ロシア中央選管は19日、不正を否定したものの、さまざまな選挙違反があったとして再選挙を勧告。これを受け沿海州の選挙管理委員会は選挙の無効を決定した。再選挙は3カ月後に行われるが、無効は極めて異例で近年例がない。

 一方、ロシアが支援するシリアのアサド政権軍が18日、ロシアが供与した地対空ミサイルシステム「S200」で誤ってロシアの偵察機を撃墜し、ロシア兵15人が死亡した。イスラエル軍機の空爆に反撃する中で起きた事件だ。ロシア軍幹部らは、イスラエル軍機がロシア偵察機を盾にしたために起きたとして、イスラエルを一斉に非難。しかし、プーチン大統領は「偶然に起きた悲劇だ」として、この見方を否定した。

 ロシア国内では「使い方をしっかり分かっていない軍隊に兵器を供与するから、こともあろうにロシアのミサイルでロシア機が撃ち落されることになったのだ」と不満が広がった。

 しかし、ロシアがアサド政権の後ろ盾になっている以上、ミサイルシステムを引き揚げる選択肢はない。結局、「シリアにいるロシア兵の安全を保障するための措置(ラブロフ外相)」として、「S200」の次世代型である「S300」の供与を開始した。皮肉なことに「使い方をしっかり分かっていない」軍隊に、より高度な兵器を供与することになったと批判が広がった。

 これらの事件よりも少し前になるが、テロリズムや組織犯罪への対策として、プーチン大統領が内務省軍をベースに2016年に発足させた国家親衛隊の総司令官をめぐるスキャンダルが発生した。

 反政権ブロガーとして知られる野党指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏が率いる「汚職との闘い基金」が8月、国家親衛隊のヴィクトル・ゾロトフ総司令官が国家調達をめぐり私腹を肥やしていると告発した。調達先の企業から、食料品などを倍の値段で購入し、差額を懐に入れているというものだ。

 ただ、それだけなら、これまでにも繰り返されてきた汚職の告発で終わったかもしれないが、当のゾロトフ総司令官が予想もしなかった行動に出たのだ。

 告発から約3週間後の9月11日、ゾロトフ総司令官は「関係ないことに首を突っ込むな」とナワリヌイ氏を非難した上で、「ろくでなし」と侮辱し、「リングの上でもタタミの上でもどこでもいい」と決闘を呼び掛けたのだ。「汚職との闘い基金」側は「公の場、もしくは裁判で対応する準備がある」と突き放した。ゾロトフ総司令官の言動には人々も呆(あき)れた。

 このような中で10月3日、赤の広場に隣接するワシリー坂に乗り入れたジープによる“テロ未遂事件”が発生した。運転していた沿海州出身の実業家という男が「プーチン大統領か、ゾロトフ親衛隊総司令官に会わせろ、さもなくば車を爆破する」と、爆弾テロ実行を警告したのだ。

 テレビカメラが見守る中、ゾロトフ氏がジーブに乗り込み男を説得。男はこれを受け入れジープを降り、あっさり逮捕された。これが本当ならばゾロトフ氏の手柄であり、人気も回復しただろうが、ネットでは「やらせだ」との意見があふれ、火に油を注ぐ結果となった。

 メディアは「ロシアに恥をかかせた悪夢の1カ月」と嘆いている。

 このほか、10月2日には年金改革法案が下院で最終採択された。国民の反発は収まっていない。

2

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。