ワシントン・タイムズ・ジャパン

サウジは公開「むち打ち刑」を止めよ!

  ルプスの小国オーストリアでフィッシャー大統領とファイマン首相が珍しく意見を異にしている。同じ社会民主党出身だが、ファイマン首相は「脱退も辞さない」と主張すれば、大統領は「まあまあ、対話の促進は重要だから」と宥める、といった有様だ。

 何のことかというと、ウィーンに事務局を置く国際機関「宗教・文化対話促進の国際センター」(KAICIID)についてだ。同センターは2013年11月26日、サウジアラビアのアブドラ国王の提唱に基づき設立された機関で、キリスト教、イスラム教、仏教、ユダヤ教、ヒンズー教の世界5大宗教の代表を中心に、他の宗教、非政府機関代表たちが集まり、相互の理解促進や紛争解決のために話し合う世界的なフォーラムだ。設立祝賀会には日本から立正佼成会の庭野光祥・次代会長が出席した。

 ただし、同センターは発足当初から欧米の人権グループからブーイングが飛び出した。発起人のサウジが少数宗派への弾圧、女性の権利の蹂躙、公開死刑などを実施する国だからだ。サウジのイスラム教は戒律の厳しいワッハーブ派だ。実際、米国内多発テロ事件の19人のイスラム過激派テロリストのうち15人がサウジ出身者だった。だから「国際センターの創設はサウジのプロパガンダに過ぎない」という声が聞かれた。スペインと共に創設国の名前を連ねるオーストリアでも同センターへの抵抗は強い。

 そのような時、サウジの著名なジャーナリストでブロガーのライフ・バダウィ(Raif Badawi)氏が先日、公開むち打ちの刑を受けたのだ。同氏が数年前、「宗教の自由」を擁護し、サウジ当局の宗教政策、道徳警察の強権を指摘する記事を掲載したことに対し、サウジ当局は昨年、毎週50回、20週間以上の公開むち打ち刑の判決を言い渡した。バダウィ氏がその刑後も生きていた場合、更に10年間の刑務所生活を強いられるという。そのむち打ちの刑が実施されたわけだ。

 欧米諸国から公開むち打ち刑の中止を要求する声が出てきた。オーストリア側はサウジ主導の同センターに母国の人権蹂躙について非難声明を出すべきだと求めたが、同センターはこれまで沈黙。そこでホスト国のファイマン首相が「センターの創設精神に反する行為だ。外務省は今夏までに同センターから脱退する方向で報告書をまとめるように」と強硬姿勢を示したのだ。

 それに対し、フィッシャー大統領は「宗派間の対話の橋を慌てて閉ざすべきではない」と発言し、ファイマン首相を宥めている。ちなみに、同国のローマ・カトリック教会最高指導者シェーンボルン枢機卿もフィッシャー大統領と同様、即脱退には反対を表明している。

 同センター発足はオーストリア外務省が推し進めてきたプロジェクトだけに、クルツ外相は同センターからの脱退、同センターの閉鎖といった事態を何とか避けたいのが本音だ。だから、「ブロガーの公開むち打ち刑を中止すべきだ」と重ねて要求し、サウジ側に譲歩を求めてきた。

 なお、国際アムネスティ(IA)によると、サウジ当局は16日、今週予定していたバダウィ氏への公開むち打ちを「(同氏の)健康上の理由」から実施しなかったという。国際社会から強い反対を受け、サウジ当局がバダウィ氏への公開むち打ち刑を断念したかは目下、明らかではない。

(ウィーン在住)

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