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イラン核関連施設にドローン攻撃、背後にイスラエル関与か

 イランの首都テヘラン郊外カラジにあるイラン原子力庁の核関連施設が6月23日、小型のドローン(無人機)による攻撃を受けた。イランは、攻撃を未然に防ぎ、死傷者や被害はなかったと主張したが、イスラエルのメディアは、ウラン濃縮に必要な遠心分離機の製造施設に大きな被害が生じたと報じた。ここ1年間のイラン核施設などに対する一連の攻撃の多くはイスラエルの破壊工作の可能性が指摘されている。(エルサレム・森田貴裕)

核合意復帰は次回協議以降

 イラン南部のブシェール原子力発電所も6月20日、「技術的な故障」のためとして稼働を一時停止している。イラン原子力庁は、問題解決には数日かかるとしただけで、それ以上の詳しい説明を行わなかった。

21日、テヘランで、イラン大統領選に当選後、初めて記者会見するライシ次期大統領(AFP時事)

21日、テヘランで、イラン大統領選に当選後、初めて記者会見するライシ次期大統領(AFP時事)

 イラン当局は核関連施設への攻撃については当初、被害は軽微であり、日常的な事故だと主張した。

 イラン中部ナタンツにある地下核施設内では、4月に大規模な爆発が発生し、遠心分離機へ電力を供給する内部システムが完全に破壊された。イスラエルの対外情報機関モサドによるサイバー攻撃ともいわれている。

 昨年7月には、ナタンツの遠心分離機製造施設に仕掛けられた爆発物により火災が発生し、甚大な被害を受けた。イランは、イスラエルなど敵対国による破壊工作の可能性を指摘。11月に核開発計画で中心的な役割を担ってきたとされる核科学者のモフセン・ファクリザデ氏が車で移動中に襲撃を受け殺害されたことについても、イスラエルの関与が強く疑われると主張している。

 イスラエルは攻撃への関与を否定も肯定もしていないが、コーヘン元モサド長官は6月初め、イランの核関連施設への最近の攻撃の背後にイスラエルが関与していることを示唆し、「われわれは明確だ。イランの核兵器保有を阻止する」と述べた。

 イランは核合意への復帰に向けて、4月上旬からオーストリアの首都ウィーンで、欧州連合(EU)などを仲介にして、米国と間接協議を進めている。イラン核合意当事国の英国、フランス、ドイツ、ロシア、中国とイランは20日、6回目の協議となる次官級の合同委員会を再開した。米国も、合同委員会外で各国と協議した。議長を務めたEU欧州対外活動庁(EEAS)のモラ事務局次長は、「合意に近づいているが、到達はしていない」と述べ、最終的な合意は次回の協議以降に持ち越された。

 2015年に締結されたイラン核合意は、高濃縮ウランの核兵器転用を防ぐため、イランのウラン濃縮を3・67%までに制限している。しかし、イランは、18年のトランプ政権の核合意離脱後、ウラン濃縮度を高め、今年4月には濃縮度を60%以上にまで進展させた。

 6月18日のイラン大統領選で当選した反米保守強硬派のライシ司法府代表(60)は21日の記者会見で、「米国とEUが合意に違反した」と批判。「バイデン米政権は対イラン制裁を全面解除し、核合意の義務を果たさなければならない」と述べた。また、イランの弾道ミサイル計画は交渉対象にならないと強調した。ライシ師は「米国が制裁を解除したとしても、バイデン氏と会談する考えはない」とも述べた。

 8月にイランの新大統領に就任するライシ師は、1988年に政治犯約5000人の死刑執行を監督した委員会の4人のうちの1人であり、米国から経済制裁を受けている。イスラエル国家の排除を繰り返し求めているイランの最高指導者ハメネイ師の後継者とも目されている。

 イランと敵対関係にあるイスラエルのベネット首相は20日、米国や同盟国に対して、イランが核兵器の開発を進めていると主張し、イランの脅威に目を覚ますよう求めた。ベネット氏は、「死刑執行人の政権に、数百万人を殺傷することのできる大量破壊兵器の保有を決して許してはならない。それがイスラエルの明確で一貫した立場だ」と述べた。

 イランは核開発の目的はあくまで平和利用だとしている。バイデン政権はイラン核合意への復帰に向けて取り組んでいるが、イスラエルはこれに反対しており、緊張が続いている。

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