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米・外国軍アフガン撤退、心配な四つの運命

yamada

 

 米・外国軍のアフガニスタン戦争からの撤収作業が加速している。

 だが残される現地は大変だ。20年前の開戦直後に政権を追われたタリバンは今や最も強くなったといい、IS(イスラム国)勢力も浸透し、テロ連発で脅しのシグナルを発している。そんな中、特に懸念されるのが次の四つの運命だ。

 その一番目は女性、二番目はハザラ少数民族である。今月8日、首都カブール西部のハザラ人居住地区の女子校への爆弾テロで85人以上が死んだ。昨年11月のカブール大学襲撃と同様ISの犯行で、女子教育とハザラの両方を標的にしたと見られている。

 タリバン政権時代の禁止のくびきから脱した女子教育は、国際NGOの支援で前進した。日本のおばあさん――タリバン時代に「隠れ学校」の女性教師たちの給料を支払い、その後も4年前まで国立大学女子寮建設などの支援を続けた宝塚市の西垣敬子さん(85)の奮闘もあった。

 だが女子校や女生徒へのテロ、学校攻撃が年間数十~数百件も起きる状態が続き、女子の中等教育修了率はなお14%に留(とど)まっている(男子は60%)。

 女性の社会進出も徐々に増えてきたが、最近それを脅す殺人テロが相次いだ。昨年12月~今年3月、カブールや東部州で、テレビ局の記者や局員、女性運動家、判事、医師ら8人の女性(多くは20代)が殺された。社会で目立って活動中の女性を狙い撃ちし、もうそんな活動は許さないぞと警告している様だ。

 殺された21歳のテレビ局員の父親は、AP通信に「危険なので辞めるよう説得したがだめだった。ジャーナリストは娘の夢だったのです」と語った。だがもう何人もの女性ジャーナリストが脅(おび)えて離職し、出国もしているという。

 ハザラ人は国民の十数%。イスラム教シーア派で教育に熱心だ。スンニ派過激集団の目の仇(かたき)でテロにさらされてきたが、米軍撤退が確定的になった昨年からは特に酷(ひど)くなった。同じハザラ人地区の産院や教育文化センターも襲われた。8日の事件は「今後は本当に容赦しないぞ」との最後通告かもしれない。

 ハザラ側も武装して抵抗しようと準備を始めたというが、百戦錬磨の過激派に敵(かな)いっこない。

 三番目は、現アフガン政府の役人、米・外国軍現地職員などの運命だ。アフガン国内と連絡をとっている西垣さんによれば、タリバン政権になったら殺されると、欧米への脱出を目指す現政権関係者らからすでに約2万ものビザ申請が出ているという。

 実際、ベトナム戦争やカンボジア内戦、ソ連のアフガン戦争などを見ても、外国軍の介入終了後、政府と反政府勢力が合意をまとめ、仲良く暮らした例などない。タリバンは、元外国軍通訳などの売国奴は厳罰に処すと脅しているらしい。

 現政権は汚職の酷さで悪評が高い。だが元役人・軍人の大量処刑など絶対起きてほしくない。

 四番目は、この国の歴史的文化遺産である。タリバン政権時代、彼らは平然とバーミヤンの石仏を爆破し、カブール美術館の美術品も多数打ち砕いた。美術館長らが必死で相当数の美術品を隠し、護(まも)った話は感動的だった。

 彼らはテレビ局も閉鎖していた。最近、女性テレビ関係者のほか放送記者やテレビ番組司会者の男性らも殺されている。過激派の偶像排撃姿勢は変わらない。カブール美術館が心配だ。

 先月下旬トルコで予定された現政権とタリバンの和平協議は、タリバン側の出席拒否で延期された。タリバンは現政権との交渉を急ぎ、妥協をする必要など感じていないのだろう。ISも今後どう絡んで来るのか。四つの運命の前途を覆う雲は黒く厚い。

(元嘉悦大学教授)

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