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イスラエルとハマスの泥沼

■泥沼

 イスラエル軍とハマスの戦闘が続いている。イスラエル軍はハマスの拠点を空爆で潰し、ハマスはロケット弾で報復する。報復の連鎖が何年も続き、終わりの見えない戦闘が続いている。

Israel Defense Forces

Israel Defense Forces on Twitter
“Hamas and Islamic Jihad continue to fire rockets from Gaza toward Israeli civilians. We will continue defending Israel. https://t.co/SjUpmauay1”
twitter.com

 イスラエル軍は7年ぶりと言われる大規模戦闘を開始しており、実際に7年前と同規模か、それとも超えるのかも不明。

 イスラエル軍はハマスの拠点が存在するビルを空爆。これでビルは崩壊し、多くの死傷者が出たとされる。ハマスはロケット弾の雨を報復に使う。イスラエル軍はミサイル防衛システムに自信が有るようで、アイアンドームを使いロケット弾を迎撃する映像を世界に公開。

 イスラエル軍とハマスの宣伝合戦も開始されており、双方が世界を巻き込んで有利になろうとしている。しかし現段階では、世界経済は無視を続けている。つまりイスラエル軍とハマスの戦闘は風物詩であり、世界経済に影響しない世界にされている。

■国際社会の現実

 イスラエル軍が民間区を空爆。しかも外国企業も入居するビルを空爆したが、世界の多くはイスラエルに対して距離を保っている。賛同も批判もしない黙認の世界。イスラエル軍は事前に避難勧告を出しているので、無差別攻撃ではないことは明らか。

 イスラエル軍は事前に避難勧告を出すことで、世界に対して敵味方の識別を提供している。指定された場所にいる民間人は、外国人であっても逃げる機会が与えられた。だから逃げない者は敵と見なされる。

 ハマスは意図的に民間人に紛れて活動しており、さらにハマス戦闘員の家族も民間人に紛れて生活。これは民間人を巻き込むことが前提の作戦なので、民間人を盾にする行為。だから世界は、イスラエル軍の攻撃を批判しない。

 民間人が死んだと報道されても、ハマス戦闘員の家族の可能性が有る。真に民間人だとしても確認が難しい。そうなると、国際社会は民間人を盾にするハマスが悪いと判断する。更に国際社会は、国家以外の交戦団体を認めない方針を採用している。

1:国家に所属していない交戦団体の行動についての責任も国家が負う。
2:国家以外の交戦団体(軍隊)の主権は認めない。

 ハマスは国家に所属する軍隊ではなく、宗教組織の一部。だからハマスの存在を認めないし、主権など認めない。ハマスをテロ組織と見なしているから、イスラエル軍による戦闘は結果的に認められる。

 仮にハマスの存在を認めれば、テロリストを肯定する。そうなれば、各国はテロリストと対等な関係になり、自国の政策の否定や妨害に成り得る。だからイスラエル軍がハマスに対して行う戦闘は、民間人が死んでも「民間人を盾にするハマスが悪い」ことに行き着く。

■地上侵攻の必要性

 イスラエル軍とハマスの戦闘は、イスラエル陸軍が侵攻してハマスを撃破するまで続く。これは空爆では不可能で、陸軍による排除が必要。何故なら3000年の戦争史を見ると、弓矢・砲爆撃などの火力攻撃で敵軍を撃破した戦例は無い。

 弓矢・砲爆撃などの火力攻撃は、敵軍の拘束と撹乱に使われる。敵軍が火力攻撃で動けない様にして、自軍の機動部隊が敵軍の側面か背後から打撃する。さらに第二次世界大戦でも、ドイツと日本は爆撃を受けたが降伏しなかった。

 爆撃機で都市を攻撃しても、敵政権を破壊できない。爆撃されても統治能力は維持されるので、一定の妨害はできるが、政権は維持できる。実際にイラクのフセイン大統領も、米国から経済制裁や空爆を受けても政権を維持できた。

 イラクのフセイン大統領が政権から去ったのは、イラク戦争でアメリカ軍の地上部隊が首都に侵攻した時だった。つまり、イスラエル軍も地上部隊でハマスを掃討しなければ終わらない。

戦闘部隊が攻撃または防御を中止した理由
(第二次世界大戦からの師団から大隊規模の戦例50)

敵の戦術的な機動攻撃を受けた→60%
 包囲・突破・退路遮断→33%
 緊要地形の喪失   →6%
 敵からの奇襲    →8%
 隣接する部隊の退却 →13%

相対的戦闘力の格差が増大→18%
 敵に増援が来着   →4%
 自軍の予備戦力の枯渇→12%
 兵站補給の枯渇   →2%

戦闘を継続できない損害→12%
 接近戦が原因    →10%
 砲爆撃が原因    →2%

戦闘の外部条件→10%
 天候・気象の変化→2%
 退却命令    →2%
 戦争の停止   →6%

International TNDM Newsletter, Dec. 1997

 戦闘統計から見れば、敵軍が侵攻して包囲などを行うから撤退する。これで60%の理由で戦闘を停止する。これはイスラエル軍が地上部隊を侵攻させ、ハマスの支配地域を一つ一つ奪うことで成功することを意味している。

 次に多いのが物資の枯渇。イスラエル軍とハマスが砲爆撃に終止するなら、双方の物資が枯渇するまで続く。お互いにミサイル・砲弾・ロケット弾が尽きれば攻撃できないから、尽きた時に自然発生的に戦闘は下火になる。

■経験が導いた経験則

 3000年の戦争史から見れば、古代から現代までの兵科は歩兵・騎兵・砲兵(弓兵)の概念で共通している。騎兵は戦車に変わり、弓兵は砲兵に変わった。だが本質的な概念は3000年前から変わっていない。

兵科の機能
歩兵:正面攻撃・占領機能
騎兵:側面攻撃
砲兵:正面防御

 歩兵は正面攻撃と占領機能を持っているが、騎兵と砲兵は占領機能を持っていない。騎兵は側面攻撃に使い、砲兵は正面防御に使う。砲爆撃は火力攻撃だが、敵軍を拘束・撹乱する正面防御の機能しか持てないのだ。

 現代でもアメリカ軍やイスラエル軍が精密誘導弾を用いても、攻撃用ではなく、敵軍の拘束・撹乱の域を超えていない。連日の空爆を行ったとしても、敵軍は撃破されず生存している。さらに敵政権・敵軍の指揮命令系統は生きている。

 空爆だけで戦争が終わるなら、第二次世界大戦のドイツ・日本は、爆撃された段階で降伏している。ドイツは連合軍が首都に到達したことで降伏。日本は、アメリカ軍の本土上陸が予測された段階で降伏。

 敵軍が首都に侵攻するか、実行を予測できる時に降伏する。これが現実で、イラクのフセイン大統領もリビアのカダフィ大佐も、地上部隊の侵攻で政権を失った。これが3000年の戦争史の現実だから、歩兵が敵首都まで侵攻しなければ戦争は終わらない。

 ガザ地区の場合は、イスラエル軍がガザ地区を歩兵で占領するまで戦闘は終わらない。これはハマス戦闘員がいる限り、ハマスがガザ地区の支配権を持っている。この支配権を、イスラエル陸軍の歩兵が奪うまで続く。

■終わりの見えない世界

 仮にイスラエル軍がガザ地区を歩兵で占領しても、反イスラエル国がハマスを支援するなら終わりは無い。ハマスは何年も掛けて損害を回復し、今度はガザ地区を奪うために浸透する。

 民間人に紛れてテロを行い、ガザ地区の支配域を拡大する。そして終わりの見えない戦闘が続くことになる。終わらせることは難しく、歩兵で支配域を維持するか拡大しなければならない。さらに敵武装勢力を支援する国を無くさなければ終わらない。

 これは現実的に不可能で、できることは一定期間の平和だけ。これはガザ地区をイスラエル軍歩兵で占領した時に得られる世界。平和は数年しか得られないが、それでも戦場の中で生活するユダヤ人には価値が有る。

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