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米中戦争の布石 一帯一路の要イランを叩け

■予想されなかった動き

 イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)は8月13日、国交を正常化したことを発表。しかもアメリカの仲介で正常化が行われたことが明らかになる。米中対立が悪化している時に、中東では新たな動きが出ていた。

 イランは中国共産党の同盟国と見なされており、イスラエルとアラブ首長国連邦の国交正常化は対イラン戦の布石と推測される。なぜならイランとの対立では共通しているので、イランとの戦争は可能性が高い。それにイランを失うことは中国共産党には打撃になる。

戦争学研究家 上岡龍次氏

戦争学研究家 上岡龍次氏

■イランは要

 中国共産党は一帯一路構想を進め、中国からヨーロッパまで陸路と海路で経済圏を作ろうとしている。陸路と海路が合流するのがイランであり中継地点。次に陸路と海路が合流するのは目的地であるヨーロッパ。だからイランは一帯一路構想の要であり、イランを潰せば一帯一路全体が機能停止になる。

 仮にアメリカが米中戦争を覚悟しているならば、少ない手数で敵に打撃を与える策を使う。さらにイランは反米国家であり、海上交通路を遮断できる位置に存在する。石油はペルシャ湾を通る。だからアメリカは常にペルシャ湾の安全を求め、敵対するイランを警戒する。

 さらにイランが中国共産党と接近しているので、想定される米中戦争でイランが後方撹乱の騒ぎを起こすことは明らか。アジアで米中戦争が発生した時に、中東でイランが戦闘を開始すればどうなるか。

 アメリカ軍は戦力をアジアと中東に分割しなければならない。戦力分散は戦争で不利だから、中国共産党とイランには都合がいい。イランとしては痛手になるが、イランにも旨味はある。だからイランが中国共産党と連携する理由になる。

■国交正常化の衝撃

 イスラエルとアラブ首長国連邦は犬猿の仲だった。それが国交正常化したから、中東情勢が劇的に変化した。ここ数年でイスラエルとサウジアラビアが接近していたから、これで中東全体が反イランで一致したことになる。

 仮にイスラエル・アラブ諸国連合軍がイランと戦争になれば、アメリカ軍は火力支援に回れる。そしてアメリカ軍は防御を行い、機動可能な戦力を米中戦争用にアジアに移動できる。イランはアメリカ軍を中東に拘束することができないので、中国共産党はアメリカ軍主力と交戦することになる。これでは中国共産党とイランの計画は破砕される。

■アメリカのイラン虐め

 アメリカは8月14日、国連安全保障理事会に対イラン武器制裁措置延長を求めた。だが中国・ロシアは反対。他の国は棄権により拒否された。だがトランプ大統領は翌15日、対イラン安保理制裁措置を復活させる手続きを取る方針を明らかにした。

 アメリカによるイランへの制裁延長は拒否されたが、イランを怒らせるには十分。怒ったイランがペルシャ湾で軍事行動を行えば、アメリカ軍は反撃可能。だからアメリカは困らない。

 国連で対イラン制裁を公にするだけでも良い。公の場で対イラン安保理制裁措置を復活させる手続きを行えば、イラン政府は発言しなければならない。これでイランは外交の場でアメリカと対立。そうなればイラン国内の暴走を止めることは難しい。何故なら、対岸ではイスラエル・アラブ連合軍が生まれようとしている。放置すればイランの未来はない。ならば敵の戦力が未整備の間に攻勢に出たい者が出るはずだ。

■今後のアメリカの予想

 今後のアメリカ軍の動向を予測すると、ヨーロッパ・中東を防御とするだろう。そして打撃部隊をアジアに集中させると思われる。中東の部隊は防空部隊を中心とし、爆撃機などはイスラエル・アラブ連合軍への火力支援として使う。

 アジアには島単位で海兵隊を配置。海兵隊は島の防御を担当。アメリカ海軍は海兵隊が提供する防御の傘の中で機動防御を行うと思われる。なぜなら、第2次世界大戦時にアメリカ海兵隊とアメリカ海軍が日本軍に対して使っている。

 島を防御に使ったアメリカ海軍の機動防御は効率が良く、ミッドウェイ海戦のように勝利を得ている。古典的な策だが、アメリカ海軍は伝統的に基本に忠実。ならば米中戦争でも基本を用いると思われる。この手法なら、台湾・沖縄・グアム・オーストラリアまで広範囲の縦深防御が可能。

 アメリカ空軍の運用は、攻撃に使うか防御に使うか不明。おそらく防御に使い、アメリカ海軍に制空権の傘を提供すると思われる。これなら中国大陸の海岸部が作戦の限界になるので、アメリカ空軍の損害が低くなる。アメリカ空軍が損害回避を求めるなら防御を選ぶだろう。

■イランは米中戦争の前哨戦

 アメリカが米中戦争を決意しているなら、イランを米中戦争の前哨戦と見ているはずだ。なぜなら初期段階で海上交通路の安全を確保し、後顧の憂いをなくしてから米中戦争に挑む方がいい。

 ペルシャ湾からの石油供給が安定するなら、世界経済に与える影響は低下する。これでアメリカを支持する国を増やし、米中戦争に挑むことが可能。ならばアメリカは、イランへの制裁強化を露骨に進めるはずだ。

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