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「爆発の原因は怠慢」 レバノン、デモ暴徒化

高まる政府への不信感

 大規模爆発で多数の死傷者が出たベイルートでは連日、市民数千人が爆発の原因は政府の怠慢にあるとして、大規模な反政府デモを続けている。8日にはデモ隊の一部が暴徒と化し治安部隊と衝突。数十人が外務省や政府施設の建物を占拠するなど激しさを増した。レバノンでは、3月にデフォルト(債務不履行)、通貨暴落に伴う物価急騰、コロナ禍による2度のロックダウンで経済が低迷、失業率は30%を超え、政府への不信感はさらに高まっている。(エルサレム・森田貴裕)

アウン大統領 国際調査の要求を拒否

 ディアブ首相は10日、大規模爆発、その後の反政府デモの責任を取るかたちで、内閣総辞職を発表した。1月に、腐敗の一掃、経済危機からの脱却を目指して就任したものの、成果を挙げられないままの退陣となった。

レバノン

 前日には、アブドゥルサムド情報相やカッタール環境相が辞任を表明していた。カッタール氏は声明で、「政府は数多くの改革への機会を逸した」と指摘、政府内部からも厳しい批判にさらされていた。

 ベイルート港湾地区の倉庫で4日に起きた大規模爆発の死者は158人となり、行方不明者が21人、負傷者は6000人を超えた。爆発による住宅の損壊で、約30万人が住む家を失った。レバノン政府は爆発による損失が数十億㌦に達すると推計した。

 レバノン当局は、倉庫にあった硝酸アンモニウムに引火したことが爆発につながったと説明した。地元メディアによると、爆発は倉庫での溶接作業が原因となった可能性が指摘されている。当局は6日、ベイルート港湾地区の税関当局および倉庫の保守管理の関係者ら約20人を聴取。爆発の原因とみられる硝酸アンモニウムの保管に不備があったとして、港湾地区の関係者ら16人の身柄を拘束し、調査を続けている。

 政府は、倉庫には2014年から、爆薬の原料にもなる硝酸アンモニウム2750㌧が保管されていたと明らかにした。

 報道によると、7年前にジョージアからモザンビークを目指していたロシア船が、財政難のため13年にレバノンのベイルートに寄港。その翌年、運航規則違反で地元港湾当局に差し押さえられた。安全のため積み荷は倉庫に保管されたという。

 税関や港湾当局者が国外への搬送などの処分を司法当局に何度か要請していたが、爆発の危険性を認識しながらも放置されていたという。

ベイルート

8日、ベイルートで、警察などとの衝突現場から負傷者を運び出すデモ参加者(AFP時事)

 イスラエルは当初、今回の爆発への関与が疑われていた。7月に敵対するイスラエル軍とレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラの戦闘員との間で衝突が相次ぎ、緊張が高まっていた時期に爆発が起きたからだ。イスラエル当局は4日、「イスラエルは爆発と無関係だ」と述べ、関与を否定した。

 硝酸アンモニウムは、ここ数十年で多くの爆発事故を引き起こしている。記憶に新しいのは15年8月に中国の天津で起きた爆発事故だ。危険物倉庫で火災が発生し、その後に2回の大爆発が起こり、165人が死亡、8人が行方不明、798人が負傷した。

 アウン大統領は7日、爆発の原因について、「過失か、あるいはミサイルや爆弾による攻撃の可能性がある」と述べた。また、レバノン市民や外国首脳らが求める国際調査を拒否する構えを示した。

 トランプ米大統領は9日、爆発について「完全かつ透明な調査」を実施するようレバノン政府に呼びかけた。米政府はレバノンのヒズボラをテロ組織に指定し、制裁対象として最大限の圧力をかける政策を取っている。

 ヒズボラの指導者ナスララ師は6日、武器や爆発物の保管について否定し、「これまで港には、われわれに属するミサイル、爆弾、ライフル、硝酸アンモニウムなど一切なかった」と主張した。

 ヒズボラは政府軍をも上回る軍事力を誇り、国会議員も輩出し政治にも影響力を持つ。武装組織が使用する即席爆弾にもなるような原料を偶然にも大量に入手したヒズボラがみすみす国外に手放すとは考えにくい。国際調査による早急な真相解明が待たれる。

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