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手洗いは「ハッピーバースデーの歌」を

 石油輸出国機構(OPEC)の総会は5日、ウィーンの事務局で開催され、世界的な需要減少、原油価格の急落を防ぐため、日量150万バレルの追加減産を決定した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界経済の低迷への対応だ。

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「ハッピーバースデーの歌」を歌いながら、手を洗う(2020年3月6日、ウィーンにて撮影)

 OPEC(加盟国14カ国)の追加減産(今年末まで)は予想されたことだが、問題は総会に参加したイランのザンギャネ石油相と使節団が新型コロナウイルスの感染検査を十分受けずに入国し、ウィーン市内の5星ホテルに投宿したと報じられると、ホスト国ウィーンで批判が出ていることだ。新型コロナウイルス検査を外交官という名目でフリーパスで入国したのではないか、というわけだ(オーストリア日刊紙エステライヒ5日付)。

 ウイルスはその人が一国の閣僚か、名もなき一国民に過ぎないのかは問わない。チャンスがあれば等しく侵入し、その威力を発揮し、最悪の場合、死に至らせる。新型コロナウイルスは中国武漢発だが、既に世界的大流行の様相を深めている。OPEC加盟国のサウジアラビアなどの湾岸諸国、中東諸国でも感染は報告されている。

 ホスト国のオーストリアでは6日午前(現地時間)、47人が感染している、幸い、死者は出ていないが、感染者は日々増加し、国民は不安を高め、マスクや消毒剤の買い出しに走り出している。

 欧州最大の感染国イタリアからの帰国者や旅行者は厳しい検査を受けている。OPEC総会が開催され、同総会に参加するため多数の閣僚、付添人が入国したが、新型肺炎感染国のイラン使節団が十分なウイルス検査を受けずに入国したわけだ。エステライヒ紙によれば、「彼らは簡単に体温測定を受けただけで入国した」という。

 イランはOPEC加盟国だが、現在、中国、韓国、イタリアに次いで感染者数が多い国家。イランではイラジ・ハリルチ保健省次官ばかりか、エブテカール副大統領(女性・家族問題担当)ら政府関係者も新型肺炎にやられている。テヘランの閣僚会議では彼らは他の省の閣僚たちと接触しているだろうから、OPEC総会に参加したイラン石油相ら関係者の健康チェックは本来、必要不可欠だ(「イラン発新型肺炎の予想外の波紋」2020年2月29日参考)。

 外交関係に関するウィーン条約で外交官にはさまざまな特権と安全が保証されているが、世界的に拡がっている新型コロナウイルスの感染に対し、たとえ外交官の立場であったとしても、訪問地では健康チェックを率先して受けることが義務だろう。ホスト国への配慮は忘れてはならないからだ。

 地球温暖化が叫ばれている。CO2放出量が多い化石燃料の将来性は暗い。OPEC加盟国がホスト国への礼儀、国民への尊敬心を払わないのならば、ウィーンから出て行ってもらってもいい、といった声が出てくるかもしれない。サウジアラビアなど石油富豪たちが落とす外貨は魅力だが、国民の健康を無視するような国や機関を厚遇する必要はない、というわけだ(「OPEC移転を引き留めたオーストリア」2008年6月20日参考)。

 怒りでコラムを閉じることは書き手にも読者にも後味が良くない。そこで既にご存知かもしれないが、少し楽しい話を紹介する。

 新型コロナウイルス対策で最も重要なことは手洗いだといわれる。それではどれぐらい洗えばいいのか。オーストリア保健省は「石鹸をつけて30秒を数えながら手を洗えばいい」とアドバイスする。一方、英国のボリス・ジョンソン首相は、「ハッピバースデーの歌を2回口ずさみながら石鹸で手を洗えばいいよ」と国民に話している。なぜ「2回」かは明らかだ。「ハッピーバースデーの歌」を2回歌うには、ほぼ30秒かかるからだ(英紙ガ―ディアン電子版3月3日)。

 「手を30秒間洗う」といった事務的、官僚的な提言より、「『ハッピーバースデー』の歌を2回口ずさみながら手を洗えばいいよ」と助言したボリス・ジョンソン首相の表現力には脱帽する。大衆迎合政治家の面目躍如だ。

 OPEC閣僚たちもボリスのアドバイスに従って、ウィーンの宿泊ホテルで、「ハッピーバースデーの歌」を2回歌いながら手を洗って頂きたい。

(ウィーン在住)

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