■連載一覧
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  • 香港憤激 一国二制度の危機
  • 香港・中国返還20年 「一国二制度」の前途
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  • ルポ・政権交代の攻防 台湾総統選
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  • EUと難民 UNHCRウィーン事務所報道官に聞く
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  • 大阪G20サミット焦点
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  • 新閣僚に聞く
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  • 憲法改正 私はこう考える
  • 衆院選大勝 安倍政権への提言
  • 2017衆院選 国難と選択
  • 新閣僚に聞く
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  • 新閣僚に聞く
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  • 憲法改正 ここが焦点
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  • 衆院選 自公圧勝 ~課題と展望~
  • ’14衆院選 注目区を行く
  • 第2次安倍改造内閣スタート
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  • 歪められた沖縄戦史 慶良間諸島「集団自決」の真実
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  • 国防最前線・南西諸島はいま 第1部 与那国島・陸自駐屯地
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  • 普天間基地移設 経緯の検証と提言
  • 「援護法」に隠された沖縄戦の真実
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  • 米中新冷戦 第1部「幻想」から覚めた米国
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  • 米国の分断 第1部 断罪される偉人たち
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    安東 幹
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    古川 光輝
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    細川 珠生
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    井上 政典
    井上 政典
    歴史ナビゲーター
    伊勢 雅臣
    伊勢 雅臣
    「国際派日本人養成講座」編集長
    宮本 惇夫
    宮本 惇夫
    企業・経営
    中村 仁
    中村 仁
    元全国紙経済記者
    石平
    石平
    評論家

    米イラン紛争は「初めに言があった」

     米無人機によるイラン革命防衛隊「コッズ部隊」のカセム・ソレイマニ司令官殺害後、米国とイラン両国の報復発言が飛び交っている。米国側は今回のソレイマニ司令官殺害を、国際法に基づく自衛権の行使という立場だ。それに対し、イラン側は同国の英雄ソレイマニ司令官殺害に対し、激怒し、報復を宣言し、「米軍を支援する同盟国も報復攻撃の対象となる」と警告を発している。

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    「米軍を我々の地域から完全に追い出せ」と檄を飛ばすイラン最高指導者ハメネイ師(2020年1月8日、テヘラン、IRNA通信公式サイトから)

     そして8日未明(現地時間)、イランが数10発の弾道ミサイルをイラク内の2カ所の米軍駐留基地に打ち込んだ。イラン国営メディアは8日、「我々は15発のミサイルを発射し、少なくとも80人の米国テロリストを殺害した。米軍が報復攻撃をすれば、さらなる攻撃も辞さない」と指摘し、戦闘の激化も恐れない強硬姿勢を取っている(米国側はイランのミサイル攻撃では「大きな被害はなかった」と主張)。

     イラン側は8日、報復宣言を実行に移したわけだ。奇襲攻撃ではなく、最初は「報復表明」、そして次はその実行という順序だ。もう少し厳密にいえば、「報復」を宣誓したゆえに、「実行」を強いられた、という面を否定できない。

     トランプ米大統領側も同じだろう。トランプ米大統領がソレイマニ司令官殺害を指令したのは、イラク北部の米軍基地が昨年12月末、ロケット攻撃を受け、民間人の米国人1人が死亡したことを受けた報復攻撃だ。同大統領は、「これまでなかった規模の報復をする」と表明してきた。その直後、米無人機によるソレイマニ司令官殺害となった。トランプ側も「報復宣言」、その実行というプロセスを経たわけだ(トランプ米大統領は8日、イランのミサイル攻撃への対応を協議中だ。米国の出方次第では状況は一層エスカレートする)。

     このように見ていくと、米国もイランも報復発言後、それを行動に移したわけだ。両陣営ともある意味でフェアだ。「戦うぞ」と言って「攻撃」したのだ。攻撃した後、戦いの意思を表明したわけではない。

     ところで、米国とイランの国内事情を振り返ると、両国とも全面戦争をする考えがないのは明らかだ。しかし、「報復」するぞと威嚇した以上、何もしなかった場合、「言葉」の威信を失うだけではなく、国民、そしてメディアから「なあーんだ。報復といっても何もしないのなら、空言葉に過ぎない」という風に受け取られる。だから、米国もイランも一旦「報復」という「言葉」を発した以上、その実行を強いられることになったわけだ。

     世界はインターネット時代に入り、全てはITに連結されてきた。情報は迅速に発信され、世界の隅々までその言動が伝達される。皮肉にも、情報時代に入った途端、その情報の信頼性を崩すフェイク情報が溢れ出してきた。すなわち、情報の核ともいうべき「言葉」の信頼性が恣意的に攻撃されてきたのだ。もちろん、「言葉」のせいではない。それを発する側の責任だ。

     米イラン紛争を見ていると、いよいよ「言葉による報復」が始まったのを感じる。トランプ大統領は「報復」を宣言した。それ故にそれを実行しなければならない。イランも同じだ。ソレイマニ司令官殺害を受け、報復を宣言したため、弾道ミサイルのボタンを押す羽目になった。自身が発した「言葉」にこれまで以上に拘束されてきたのだ。すなわち、「言葉」が今、報復に出てきたのだ。言葉を発した人間の責任を追及し出したのだ。

     大統領や首相など政治指導者は威信を重視し、権威を大切にするから、何らかの理由で発した「発言」、「言葉」を簡単には引込められない。一旦発した「言葉」は必ず実行しなければならなくなるわけだ。これを当方は「言葉の報復」と呼ぶことにした。

     新約聖書「ヨハネによる福音書」第1章の「初めに言(ことば)があった。言は神と共にあった。言は神だった」という聖句はよく知られている。モーセが神からもらった石板には神の十戒が記述されていた。「言葉」が書かれていたのだ。全ては言葉から始まったことが分かる(現代風に表現すると、人間を含む全ての森羅万象は、言葉が質量を得て物質化した世界だ)。

     米イランの紛争では、単なる威嚇のつもりが、実行を迫られる羽目に陥る。極端にえば、誰も戦争をしたくないのに、戦争を始めてしまう。「言葉」がわれわれに「あなたはこう言ったではないか」と追及し、威信とメンツに拘る関係者(米国とイラン)に言葉の実行(戦争)を強いる。このようにして、言葉を疎かにしてきた人類は遅かれ早かれ「言葉の報復」を受けることになるわけだ。米イラン紛争はそのことを我々に教えているように感じる。

    (ウィーン在住)

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