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トランプ政権、中東和平案「経済分野」公表

イスラエルの安全保障にリスク

 中東和平実現に向けイスラエルとパレスチナを仲介するトランプ米大統領の中東和平案「世紀のディール(取引)」の経済に関する部分が22日に公表された。トランプ政権は、パレスチナへの経済支援でパレスチナ自治政府との対話再開を目指す。一方、トランプ政権が中東和平の公平な仲介役になれないと反発しているパレスチナ側は、政治的な解決が示されない限り和平案を受け入れることはできないとして拒否する構えだ。(エルサレム・森田貴裕)

パレスチナは支援拒否

 パレスチナとイスラエル双方に譲歩を求める中東和平案を担当するトランプ氏の娘婿クシュナー大統領上級顧問は声明で「パレスチナ人はあまりにも長期にわたって(和平に向けた)過去の非効率的な枠組みにとらわれてきた」と指摘。「支援計画は輝かしく繁栄する将来のための枠組みになる」と強調した。

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 今回提案された「繁栄に向けた平和」と題するパレスチナへの経済支援計画は、今後10年間で500億㌦(約5兆3000億円)以上の投資を促し、域内総生産(GDP)を2倍に増やす目標だ。資金は主に湾岸アラブ諸国から調達するという。パレスチナ自治区のヨルダン川西岸地区とガザ地区のパレスチナ人100万人分の雇用を創出することで失業率を改善し、貧困率を半減させる。西岸地区とガザ地区間を結ぶ交通網建設をはじめとする、電力、水道、通信といったインフラ整備に加え、観光振興、農業、製造業、教育の質向上なども支援する。パレスチナと周辺国の貿易を促進する方針なども盛り込まれた。

 ただ、イスラエルの指導者らには、トランプ政権の支援計画が示唆するように、西岸地区とガザ地区のパレスチナ人をイスラエルの領土を超えて輸送する交通機関の建設は、安全保障上のリスクをもたらすとの見方もある。

 1990年代後半にも同様の提案が出されていたが、イスラエル政府はこれまで、西岸地区とガザ地区間を道路、トンネル、橋、電車などで結ぶことを拒み、パレスチナ人の移動を規制してきた。

 両地区が結ばれるとなれば、ガザ地区を実効支配するイスラム根本主義組織ハマスやイスラム聖戦などのテロリストの移動を可能にし、西岸地区でテロ活動の拡大につながる恐れが出てくる。

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24日、ヨルダン川西岸ラマラで行われたパレスチナ和平経済会議への抗議デモ(UPI)

 トランプ政権はエルサレムをイスラエルの首都と認定し、2018年5月にパレスチナ側の反対を押し切りテルアビブの在イスラエル米大使館をエルサレムへ移転し、加えてパレスチナ自治政府に向けた経済支援の撤回、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への拠出金を停止し、さらに今年3月にはシリアとイスラエルが領有を争うゴラン高原に関し、その主権はイスラエルにあると正式に認めるなど、イスラエル寄りの政策を取ってきた。

 東エルサレムを将来樹立する独立国家の首都と位置付けるパレスチナ側はトランプ政権に対し不信感を強めており、クシュナー氏率いる和平仲介の取り組みを拒否している。

 パレスチナ自治政府のアッバス議長は22日、「政治的な解決が示されない限り、われわれはいかなる経済的支援策にも応じるつもりはない」と述べ、米政権が公表した経済支援計画を批判した。

 パレスチナ解放機構(PLO)の執行委員でパレスチナの交渉担当を担うハナン・アシュラウィ女史は、「まずは、ガザ地区の封鎖を解除し、イスラエルが行っている土地、資源、資金の収奪をやめさせ、われわれに国境、領空、領海などの管理と行動の自由を与えることが先」とツイッターの投稿で述べた。

 ハマスの高官イスマイル・ルドワン氏は、「われわれは世紀のディールの経済面、政治面、安全保障面など全てを拒否する」とクシュナー氏の提案をはねつけ、「パレスチナの問題は民族の問題であり、占領下から自由になろうとしている人々の問題である。パレスチナは売り物ではなく取引する問題でもない。パレスチナは神聖な土地であり、占領下からの解放以外に選択肢はない」と語った。

 トランプ政権の中東和平案は 、経済部分と政治部分の2部で構成され、政治部門の公表は、9月のイスラエル総選挙を経て新政権発足後の11月になるとみられている。

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