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リビア内戦が本格化

元軍将校が首都進軍
国連仲介の国民合意政府と対立

 北アフリカのリビアで内戦が本格化しようとしている。同国軍の元将校で、東部トブロクを拠点とする「政府」を支持してきたハリファ・ハフタル氏が、自ら率いる軍事組織「リビア国民軍(LNA)」に対し4月4日、「首都への進軍」を命じ、国連の支持を受け首都圏内外を拠点とする国民合意政府(GNA)との間で、首都争奪戦を展開しているからだ。(カイロ・鈴木眞吉)

エジプトは支持

 LNAは5日、首都トリポリの南方約50㌔の地点でGNA勢力と衝突した。リビア訪問中のグテレス国連事務総長が、衝突の直前、東部ベンガジでハフタル氏と会談、戦闘の停止を求めたが、不調に終わった。国連安全保障理事会も先進7カ国も同日、おのおの、進軍の停止と軍事行動の即時停止を求めたが効果はなかった。

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14日、ハフタル・リビア元国軍将校(左)とエジプトのシシ大統領(中央)(エジプト政府提供)

 LNAは8日、首都トリポリで唯一機能していたミティガ空港を爆撃し、同空港は閉鎖された。8日の時点で、戦闘開始以来、双方で少なくとも46人が死亡、80人が負傷した。首都南部から、約3400人が避難した。

 国連のサラメ事務総長特使は8日、GNAのシラージュ暫定首相と局面の打開策を探ったが、翌9日には、14~16日に実施予定だったリビアでの「国民会議」を延期すると表明した。

 LNAとGNAは、その後も地上戦のみならず空爆も行い、双方で「民間人を標的にしている」と非難し合った。

 国連の人道問題調整事務所(OCHA)は13日、住居を追われた人は1万3500人を超え、900人余りが難民キャンプ生活を強いられていると発表した。世界保健機関(WHO)は14日、双方間の戦闘発生以来、121人が死亡、561人が負傷したと発表した。15日には、死者数は147人に増加した。

 戦闘が激化し犠牲者が増大するさなか、ハフタル氏は14日、エジプトの首都カイロを訪問し、シシ・エジプト大統領と会談。シシ大統領は、ハフタル氏がテロやイスラム過激派勢力との戦いに注力することにより、リビア全土に治安を再確立することを支持した。

 エジプトやアラブ首長国連邦(UAE)などアラブ諸国の一部は、カダフィ政権崩壊後の混乱の中でも一貫してハフタル氏を支持してきており、国連主導の動きとは一線を画していた。

 リビアでは、2011年8月のカダフィ政権崩壊後に政権を担った、暫定政府や移行政権による民主化が、武装解除を拒否する民兵や武装勢力の統制に失敗、イスラム勢力が中心となった制憲議会が、国際社会が正統とみなした世俗的な暫定政権を東部トブロクに追放し、14年以降は東西に分裂した状態が続いていた。

その間に過激派組織「イスラム国」(IS)も台頭するなど混乱を極めたが、その中で一貫して、東部の暫定議会側を支持したのがハフタル氏だった。

 その後、国連の仲介で、西部の首都トリポリを拠点とするGNAが誕生したものの、ハフタル氏は同政権を拒否し続けていた。

 ハフタル氏へのエジプトの支持表明を機に、事態収拾に向け、国際社会の動きが活発化する可能性がある。

 リビアは1912年からイタリアが植民地として支配。第2次大戦中に英仏が占領した。戦後は主にイタリアとフランスが主導権争いを演じ、現在フランスはハフタル氏に肩入れし、イタリアはGNAとの関係が深い。主導権争いの背景に石油資源をめぐる争いもあるとされることから、両国が今後リビア情勢に与える影響も見逃せない。ロシアも虎視眈々(たんたん)と影響力行使を狙っている。

 アラブの春では、長期独裁政権が打倒されたことは評価されながらも、統治の緩みの間隙を突いて、全世界イスラム化を目指す「ムスリム同胞団」やISなどが勢力を伸ばし、内戦や混乱を引き起こした。過激なイスラム思想が流行し、民主主義教育が未熟な中東・アラブ世界に対して、民主化を求めるのか、治安を優先させるのか、国際社会は厳しい選択を迫られている。

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